家庭や関係機関と連携しながら進める「性に関する指導」【子供の個性と能力を最大限に引き出す 学級経営の極意Ⅲ⑫】

子供の個性と能力を最大限に引き出すためには、教師はどのような指導をしていけばよいのでしょうか。学級経営を長年、研究・実践してきた稲垣孝章先生が、全15回のテーマ別に、学級の中で個々の子供の力を伸ばしていく方法について解説します。第12回は、性に関する指導について解説します。
執筆/埼玉県東松山市教育委員会教育長職務代理者
城西国際大学兼任講師
日本女子体育大学非常勤講師・稲垣孝章
「性に関する指導」は、様々な価値観の相違があり、考え方も多様です。指導に当たっては、保健体育科のみならず、道徳教育や特別活動など学校での教育活動全体を通じて取り組む必要があります。特に、学校の全体計画に基づいて、どの教科等で何を指導するのかを明確にしておくことが求められます。また、協働的な指導によって効果的な授業を展開することも重要な視点です。そこで、「性に関する指導」を展開するにあたって、次の3つのキーワード「性に関する指導の意義」「性に関する指導のポイント」「指導上の配慮点」でチェックしてみましょう。
目次
CHECK① 性に関する指導の意義
「性に関する指導」では、子供たちが性について正しく理解し、自らの生命と人格を尊重し、適切な意思決定と行動選択ができる能力を身に付けることを目指しています。また、その基盤となる健康で豊かな人間関係を築くことが求められます。現代の多様な課題に主体的に対応し、性暴力や性被害から自分を守り、心身の健康を維持し、向上させることを重視していきましょう。
背景にある現代的な課題を踏まえて指導します
現代社会では、性に関する多様な課題が山積しています。例えば、インターネット上の氾濫した性情報やSNSでのトラブルなど、小学生をねらった犯罪も多発しています。特に、性被害の当事者にならないための「生命(いのち)の安全教育」に関する重要性も高まっています。
また、性同一性障害なども含めた性に関する課題の多様化、複雑化した現状を踏まえておくことが求められます。特に、SNSでのトラブルについては、小学生においても現状を踏まえ、保健体育科や特別活動だけでなく、情報教育等、他教科との関連を図った指導も重視していきましょう。
CHECK② 性に関する指導のポイント
「性に関する指導」は、教師が一方的に知識を伝達するのではなく、必要な情報を子供自身が収集し、適切な意思決定や行動選択を行うことができるようにすることが大切です。全教育活動を通じて指導に当たりますが、教育課程上は保健体育科と特別活動を中心に行い、次のような視点で指導に当たることが一般的です。
- 子供自身が心身の成長と発達、性に関する生理的・心理的・社会的な側面について「正しい理解と知識の習得」を目指す。
- 自分自身や他者を大切にし、「自己肯定感と人間尊重の精神の育成」を目指す。
- 適切に情報を得て自ら判断し、「適切な意思決定と行動選択能力の育成」を目指す。
- 性被害などのリスクを理解し、それを回避するための知識や態度を身に付け、自らの「健康と安全を確保する態度」の育成を目指す。
- 性が人間関係の基礎となることを理解し、他者の人権や尊厳を尊重し、「豊かな人間関係の構築」を目指す。
具体的な指導場面について教科等との関連を図ります
具体的な指導場面については、次のような教科等の特質を生かし、関連を図ったカリキュラム・マネジメントを構想し、実践することが求められます。
〔体育科:4年生〕「体の発育・発達」
・ 思春期の体の変化や異性への関心が芽生えること、またそれらには個人差があることを理解できるようにする。
・ 発育・発達に関する身近な課題を見付け、選択できるようにする。
〔学級活動:4年生〕「心身の発育・発達」
・自分の発育・発達の状態に関心をもち、発育・発達の健康上の問題を見付け、判断し、処理する能力や心身の健康を保持増進する態度を養う。
〔家庭との連携:高学年〕
・学級通信や学校だよりなどにより、学校での学習状況を家庭に周知し、家庭での話合いを促す。
〔個別指導:高学年〕
・自分の体の発育・発達に不安を感じている子供に対して個別指導を行う。
保健体育科の授業で、体の発育・発達についての知識を習得し、体をよりよく発育・発達させるための生活について考える学習を行います。そしてその学びを、学級活動で心身の発育・発達について適切に対処できる実践力の育成につなげます。特に、家庭と情報を共有することで指導の充実を図るようにしていきましょう。
