小1 国語科「くじらぐも」板書例&全時間の指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小1国語科「くじらぐも」(光村図書)の各時の板書例、発問、活動例、主体的・対話的で深い学びを促す手立て、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

 小一 国語科 教材名:くじらぐも(光村図書・こくご 一下)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/相模女子大学学芸学部 子ども教育学科専任講師・成家雅史
執筆/東京学芸大学附属竹早小学校・曽根朋之

1. 単元で身に付けたい資質・能力

「くじらぐも」は、小学校1年生が体育の時間という現実の世界から、幻想の世界で楽しみ、もとの現実の世界に戻るというファンタジー作品です。ファンタジー作品ではありますが、小学校1年生が登場人物であることや、雲を題材にしていることから、児童が身近に感じやすい教材と言えます。
登場する子供たちに同化し、「こんなふうに動く雲がいたらいいな。」「雲にあがるときはこんな感じかな。」「雲に乗ったらこんなことをしたいな。」と幻想の世界を楽しませたい教材です。

物語の世界に入り込むことの楽しさを感じるために、「場面の様子や登場人物の行動など、内容の大体を捉えること」「場面の様子に着目して、登場人物の行動を具体的に想像すること」を資質・能力として身に付けられるようにしていきます。

「場面の様子や登場人物の行動など、内容の大体を捉える」ためには、物語でどんな出来事が起こったのか、その中でどの登場人物がどんな行動や会話をしたのかを、叙述を基に、また、挿絵も活用しながら動作化をします。
「場面の様子に着目して、登場人物の行動を具体的に想像する」ためには、それぞれの出来事で”一ねん二くみの子どもたち”がどんな様子で行動や会話をしているのかを音読を通して表現します。
そして、教材にある会話文以外に、どんなことを話しているのか、どんな行動をしているのかを想像することもこの単元では行います。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

この単元では「“一ねん二くみの子どもたち”を演じる」という言語活動を設定します。
“一ねん二くみの子どもたち”に同化することで、物語の世界に入り込むことの楽しさを感じることがこの言語活動の目的です。“一ねん二くみの子どもたち”に同化するということは、登場人物がどんな出来事のときに何をしているのかを捉える必要があります。
また、教材で描かれている”子どもたち”の会話以外にも、本来は多くの会話やつぶやき、行動があるはずです。真っ白い雲のクジラがやってきたときには、きっと“子どもたち”は大興奮し、驚きの声をあげたでしょうし、雲へ飛ばされたときにはさまざまな感情の叫び声も上がったでしょう。
このような教材には書かれていないことも、挿絵や場面の様子から想像して演じる活動を行うことで、場面の様子に着目して、登場人物の行動を具体的に想像する資質・能力を身に付けられるようにします。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 演じる対象を絞る

「演じる」という言語活動の場合、児童は楽しみながら、自分たちで進めていくことも想定できます。しかし、主体的な学びになるためには、すべての登場人物を演じるのではなく、単元の前半では“一ねん二くみの子どもたち” に焦点をあてて演じるとよいでしょう。なぜなら、自分たちと同じ“1年生”を演じることで登場人物の行動を具体的に想像することにつながるからです。
具体的には、1時間目では、“一ねん二くみの子どもたち”の目線で雲を眺める活動を行ったり、2時間目では、“一ねん二くみの子どもたち”に対していいな(うらやましいな)と思ったことを出し合う活動を行ったりすることを通して、自然に“一ねん二くみの子どもたち”に目を向けられるような単元の展開が望ましいです。

〈対話的な学び〉 他者の想像を楽しむ

本単元では、教材で描かれている“子どもたち”の会話以外の、会話やつぶやき、行動を吹き出しに書き込んだり、動作化したりして考える活動を行います。
その際に、考える手掛かりがないと難しいと感じる児童も少なからずいるはずです。そうした場合には、すぐに思いついた児童のものを最初に全体で共有したり、友達の考えたものをお互いに見ることができる時間をとったりします。
こうした手立てによって、すぐに思いついた児童も、他者の考えとの対話を通して違う見方や発想を得ることができます。この単元に限らず、自分の考えを書く時間には、普段から書いたものを自由に見合える雰囲気を大切にしたいところです。

〈深い学び〉 同化するために演じる

本単元では、教材で描かれている“子どもたち”の会話以外の、会話やつぶやき、行動をよりたくさん想像することで深く学ぶことを意識していきます。
方法としては、挿絵に吹き出しを書き込みながら想像を広げる活動と、「演じる」活動を行います。
吹き出しを書くだけでなく、実際に「演じる」活動を行うことで、また違った見方ができることもあります。
例えば、空へ吹き飛ばされる場面では、挿絵で想像すると、描かれている人物の表情や様子から判断することになります。もちろん、このように根拠をもって考えることも大切です。しかし、「演じる」という活動を行うことで、“一ねん二くみの子どもたち”としてどんなことを言うかという主観的な想像をすることができます。高いところが苦手な児童は叫び声をあげたり、得意な児童は楽しそうな声をあげたりとその子らしい同化をすることで、より多くの想像ができるようにしていきます。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

最後の発表を動画で撮影し、共有します。

30人程度の学級で1グループ4人だとしても8グループできることになります。全てのグループに発表したい気持ちがあっても、聞く側の集中力が続かないこともあります。
そこで、発表を動画として撮影し、何回かに分けて視聴したり、家庭でも見られるよう共有したりするなどの工夫をしましょう。保護者と共有することで、学校での活動の様子や児童の成長を見てもらう機会を作ることができます。

6. 単元の展開(8時間扱い)

 単元名: ‟一ねん二くみの子どもたち”をえんじながらよもう

【主な学習活動】
・第一次(1時2時
①「くじらぐも」を読んで感想をもつ。
②「くじらぐも」を音読し、「一ねん二くみの子どもたち」がうらやましいなと思ったことを出し合う。

・第二次(3時4時5時
③ どのような出来事があったかを捉える。
④ “子どもたち”の会話を見つけて、動作化しながら音読する。
⑤ それぞれの出来事のときに想像できる会話文を考える。

・第三次(6時7時8時
⑥ ⑤で想像した会話文をグループで共有し、通して音読する。
⑦ グループで音読の練習をしたり、ペアグループで発表しあったりする。
⑧ 動画を見合い、感想を交流する。

各時の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例
「主体的な学び」のために

教材文を読む前に、どんな物語なのかを想像して、物語に引き込むようにします。
題名からお話を想像するということもできますが、1年生という実態を考えると、くじらの雲にのるお話ということを知ることで、どのようなことが起こるのかということを楽しみにして読む気持ちが生まれることを期待します。
教師が、「先生」や「一ねん二くみの子どもたち」、「くじら」を演じながら読むことで、児童も演じて読むことの楽しさに気付き、主体的な学びにつながります。
学級の実態にもよりますが、児童の音読に際して全文を読み通すことが難しそうであれば、運動場で体操をしている場面、くじらぐもに飛び乗ろうとかけ声をかけている場面、くじらぐもに乗っている場面、くじらぐもとお別れをしている場面というように場面を分けて読み、感想を聞いていってもいいでしょう。

今日は、雲に乗った子供たちのお話を読んでみるよ。ある生き物の形をした雲なんだけど、みんなだったらどんな雲に乗ってみたいかな?

雲だからね。鳥に乗って空を飛んでいるみたいな感じかもしれませんね。それでは、読んでみますよ。じつは、くじらに乗ったお話なんだよ。

えー、空なのに、くじらなの。

空を海みたいに泳いでいるのかな。

先生、早く読んでください。

はい、分かりました。それでは、みんなも教科書を開いて、目でお話を読みながら、先生の声を聞いてくださいね。・・・(範読)

「くじらぐも」を聞いて、どんなこと思ったかな。

くじらぐもがしゃべっていておもしろい。

しゃべるだけじゃなくて、一緒に遊んでいていいなあって思った。

雲が一緒に動いてくれるところがいいなと思った。

わたしも雲に乗ってみたいと思いました。

ぼくも、雲に乗って旅をしたいなあ。

いろいろな感想がありそうだね。みんなも一緒に読むと、もっとたくさんの感想が出てきそうだね。

読みたい、読みたい。

児童:・・・(音読)

新しく感想をもった人はいますか。

1年2組の子供たちがうらやましいなと思いました。

私も1年2組の子供たちがうらやましいなと思いました。


【2時間目の板書例 】

2時間目の板書例

イラスト/横井智美

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