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学級崩壊の原因と3つの対策

2019/11/7

11月は1年で最も学級崩壊しやすいといわれています。その原因は何なのでしょうか? 荒れてしまってから立て直す方法はあるのでしょうか? ベテラン教師である山田洋一先生から、11月に起こりがちな荒れの原因と方策について解説していただきました。

執筆/北海道公立小学校教諭・山田洋一

【1】どこが、なにが原因で荒れているのか

「学級の雰囲気がなんとなくおかしい」と気づき、「子供がこうなってしまったのは、全部私のせいだ。なんて私はダメなのだろう」と、過度に自分を責める教師がいます。

一方で、教室の様子は周囲の教師の誰もが気づくほどにすさんでいるのに、本人はどこ吹く風、まったく問題を感じていないというタイプの教師もいます。

この2つのタイプの教師は、問題の表れ方としては違っていますが、どちらのタイプも、「どこが、なにが原因で荒れているのか」に気づきにくいという点では同じです。

問題そのものにとらわれすぎて、その解決に目が向かないのも、問題を問題と思わないためにさらに悪化させてしまうのも、結果は同じだということです。当然ですが、学級の荒れに対応するには、どこが、なにが原因で荒れているのかを究明する必要がまずはあります。

そこで、次の原因究明チェックリストにしたがって、自分の学級の状況を振り返ってみましょう。

(1)学級の指向性
子供たちが授業で力をつけているか。
学級のルールがしっかりと守られているか。
子供たちが互いのよさを認め合い、口に出しているか。
(2)教師のリーダーシップ
子供への発言は短く的確か。
子供たちの役割や責任を見えるようにしているか。
分け隔てなく、すべての子供たちの話をよく聞いているか。
(3)コミュニケーション
子供たち同士が授業で互いにうまくいく方法を伝え合っているか。
問題が起きたら、話合いの機会をもっているか。
(4)評価
学級目標を根拠にした評価場面があるか。
子供たち同士の相互評価場面があるか。
(5)フィードバック
学級のルールを守っていない子供がいるときには教師は端的に指摘し、やり方を改善させているか。
間違ったやり方をしている場合、子供同士で注意し合っているか。
(6)相互支援
子供たちは助け合って学んでいるか。
課題や教室内の役割が、その子にとって過剰であれば、子供同士で調整したり、助け合ったりしているか。

学級の状況をチェック

さて、自分自身を点検してみていかがだったでしょうか。あなたの学級が、11月になって荒れてきた原因が見えてきたでしょうか。

これで、原因がわかったので半分は解決したようなものです、とはいきません。この点検は、あなた自身が学級の状況をどのように「アセスメント(評価)しがちか」というあなたの「思考の傾向」をとらえたものに過ぎません。

そこで、このチェック表を使って、もう一つの点検をしていただきたいのです。ただし、点検するのは担任であるあなたではありません。子供たちです。

子供用の文言にするために、このチェック表の「子供たちが」は「あなたは」・「あなたたちは」に、「(2)教師のリーダーシップ」の各項目は「担任の先生は」を主語にしましょう。このようにして子供たちにもアンケートをとります。こうすることで、さらに学級の課題が正確に見えてくるに違いありません。

また、あなたのアセスメントと子供のアセスメントの「ずれ」にも気づくことでしょう。この「ずれ」こそが、問題の本質である場合が多いのです。

荒れてきた学級の教師がもがけばもがくほど、状況を悪化させることが少なくないのは、こうしたアセスメントの「ずれ」が原因です。状況を悪くさせる教師は、そのままでよいところをいじり、改善しなければならない事柄を放置しているのです。

【2】回復のための3つの方策

ここまで順調に来ていたのに、11月になって「荒れ」が顕在化して来たとするならば、当然この時期独特の原因が考えられます。それは何でしょうか。まず、学級集団の成長過程を見直してみましょう。学級は次の4つの過程を経過すると考えられます。

学級集団は、形成期・活発期・統一期・機能期の4つの過程を経て成長する

①形成期:ここでは子供たちがバラバラであり、不安定。そこで教師の「教示的」関わりが主となる

② 活発期:規範が集団の中でできつつあり、子供たちがぶつかったり、ルールに適応できない子供たちが出てきたりする。そこで教師の「説得的」関わりが主となる

③ 統一期:規範に適応でき、子供たちが同じ目的や目標に向かって活動できるようになってくる。そこで教師の「参加的」関わりが主となる

④ 機能期:活動の目的や目標を意識した上で、それぞれのパーソナリティーに合致した役割を果たすことができるようになる。そこで教師の「委任的」関わりが主となる

11月の「荒れ」の原因は、「形成期」の「荒れ」とは違います。「形成期」の「荒れ」は多くの場合、学級に規律や規範を確立する際の不適応や抵抗に起因する「荒れ」です。しかし、11月の「荒れ」はそれ以降の「活発期」から「統一期」へ、あるいは「統一期」から「機能期」への移行過程でのミスが原因です。

例えば、「もうできるはず」と教師が思っていたところ、活動についてこられない子供が続出した場合などがこれにあたります。

また、「統一期」に移行すべきなのに、学級の目指す目標や活動の目的が明確ではないという場合もそうです。「大きな行事が終わって、目標を見失って荒れる」というような場合です。

では、こうした「移行ミス」の予防策はどのようなものでしょうか。

①活動の見通しをもたせる

学級集団の成長過程が移行するとき、まず不適応を起こしやすいのは、それまで学習に乗りづらかった子供たちでしょう。つまり、学級の中で「困っている子供たち」です。この子供たちが適応しづらいのは、教師が段々と「指示的行動」を控えて委任的になっていくからです。

学級集団の成長過程が移行するということは、教師が「いちいち指示しない」ということを意味します。これに、「困っている子供たち」はますます困るわけです。

そこで、教師はこれまで通り「困っている子供たち」が活動するのに困らない状況をつくらなければなりません。しかし、これを「いちいち指示する」ことで可能にしようとすると、学級集団はいつまでも成熟しないことになります。

成熟させようとすると、「困っている子供たち」が不適応になり、教師が適応させようとすると学級は成熟しない。このジレンマをどう乗り越えればよいのでしょう。

これを乗り越える手段は、どのようなものでしょうか。端的に言うと子供集団の支援的風土によって乗り越えることにつきます。

教師は、なにか活動を指示するときに、指示後に「もしも困ったことがあったら、隣の人、それでもダメならグループの人、さらに教室にいる誰にでも相談してもよいです」とつけ加えるようにします。そして、最後に「もちろん、先生に尋ねてもよいです」とつけ加えます。こうすることで、「困っている子供たち」をサポートすることができ、さらに学級の「トップ集団」を育てることもできます。

後者をしっかりと育てるためには、もちろん先のように指示するだけではいけません。指示後のフォローが重要です。

子供たちの動きをよく観察し、「困っている子供」をサポートしてくれた子供たちに最大の感謝を伝えるようにします。さらに、大切なことは要所で学習の振り返りをさせ、「サポートしてくれる人がいたから、学習が最後までスムーズに進められた。だからこれからもうまくいく」ということを実感させ、それを子供同士で伝え合うようにすることです。

「先生の指示を聞いていれば安心して活動に取り組むことができる。万一、わからなくなっても仲間が助けてくれる」という感覚こそ、学習活動の見通しとなって、安心して活動に取り組める環境となります。

「わからなくなっても安心」

②成功の見通しをもたせる

次に大切なのは、成功への見通しをもたせることです。前項で述べたとおり、教師が委任的になるとそれに適応できない子供が出てきます。その子供たちについ厳しく指導してしまったり、その子供の努力を認めることができなくなったりしてしまいがちです。

このことで、活動量に対して子供が成功する割合が下がるということになります。こうなると、子供たちは自尊感情を低くしますし、新しいことに挑戦する意欲もだんだんと下がっていきます。成功しないから意欲が下がる。意欲が下がるからチャレンジしない。チャレンジしないから成功もできないという負のサイクルに、子供たちは陥ってしまうわけです。

こうした状況への対策は、言ってしまえばごく簡単です。「成功できそうだ」と、成功することへの見通しをもたせることです。しかし、そのためには結局成功を積み重ねなければなりません。このことは、簡単ではありません。ポイントは適切なゴール設定にあります。

例えば、リコーダーである曲を練習して、全員で最後の参観日に保護者に聞かせようということを考えたとき、この際のゴールはどのような設定になるでしょうか。「ノーミスで演奏しきる」でしょうか。それとも「保護者を感動させる」でしょうか。

ゴールは、第一に「子供たちが納得しているもの」であることが大事です。人が決めたゴールに到達することを人はよしとしません。自分は富士山に登りたいのに、他人に高尾山に登ると決められたら納得がいかないでしょう。

第二に、自分たちの今の力から考えて、努力すれば達成できるというゴールであることです。これが、難しすぎたり、簡単すぎたりすると結果に納得がいかないということにもなってしまいます。もちろん、初めのうちは、それがなかなかうまくいかなくてもかまいません。適切なゴールを設定できるようになることにも、ある程度のトレーニングが必要だからです。

第三には、ゴールへの到達の仕方が具体的に共有されているということです。リコーダーの例で言えば、「いつ練習するのか」「どれくらいの時間練習するのか」「練習して、さらに時間が必要だと感じたときはどうするのか」「苦手な人にはどのようにフォローするか」というようなことが、しっかりと見通されていることが重要です。こうすることで、ゴールに子供たちが自力で到達し、結果として成功体験を積み重ねることになるのです。

③意味をもたせる

今取り組んでいることが、子供たちにとって意味の感じられることである必要があります。例えば、②で例にあげたリコーダー演奏で考えてみましょう。

このゴールが仮に成功したとしましょう。しかし、それは目標が達成されたというだけで、目的を達成したかどうかはわからないのです。

つまり、子供たちがゴールに到達した段階で「私たち、うまく演奏できたけれど、いったいそれに何の意味があるのだろうね」と思うようではいけないということです。

リコーダー演奏を通して、私たちはどんなクラスになりたいのか。あるいはどんな仲間になりたいと考えているのかをはじめに確認しておいたり、活動後の振り返りによって、共有したりしていなければならないということです。

リコーダーで助け合えるクラスに

そして、その目的は、学級目標と深く関わっています。学級目標は学級の指向すべき方向を端的に表したものです。

こうした場面で、その指向性に沿って活動をふり返らせることが、学級集団には必要であり、目標をただの飾りにしないためにもこうした方策は極めて重要なのです。

【3】見通しと意味への気づきによって荒れに立ち向かう

11月の荒れに立ち向かうことは、なにか新しいことや奇抜な手法を学級経営に取り入れることではありません。正確に学級をアセスメントして、子供たちに活動の見通しをもたせるように支援し、その意味を子供たち自身に気づかせるということにつきます。

イラスト/奥まほみ

『小五教育技術』2018年11月号より

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