【相談募集中】学級崩壊を招くきっかけとなった児童に迎合してしまいそうです

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学級崩壊・学級の荒れ:立て直しからリアルな緊急避難まで

愛知県公立小学校教諭

佐橋慶彦

6年担任の先生から「みん教相談室」に相談が寄せられました。昨年度、学級崩壊を起こすきっかけとなった子どもの反応を意識して、学級全体の指導が消極的になっているそうです。これに回答したのはみんなの教育技術で連載を持ち、子どもたちの「らしさ」を引き出す学級経営に定評のある愛知県公立小学校教諭・佐橋慶彦先生。そのアドバイスをこちらでシェアします。

写真AC

Q. かつてクラスを荒らしていた児童に迎合してしまいそうです……

かつてクラスを荒らしていた児童・Aくんに迎合してしまいそうです。6年生担任ですが、昨年度学級崩壊を起こしていました。その主犯格のAくんは現在私のクラスです。今は大人しくしています。しかし、少し叱られたり、人間関係で不満があったりすると、主犯格だったころの片鱗を覗かせます。

それに、ごく一部の周りの子も影響されてしまいます。それでこちらもビクビクしてしまい、指導が消極的になる場面が目立ってきました。(Aくんは頑張ろうとしているため問題行動は起こしていませんが、些細な点の“注意すべきか否か”という点ではグレーな点も多いです)。

保護者はいわゆるモンスターペアレントで関係をこじらせたら損しかないのですが、今のところよく見てくださっています。

指導に二の足を踏む情けない私にアドバイスをいただけましたら幸いです。

高学年なので、些細な点を注意するか否かのところも見ている子もいると思います。そういった子たちのことも考えると細かく指導すべきとは思いますが、どうしてもその子が再度暗転し、クラス全体が悪い方向へ流れてしまうのではという恐怖心が勝ってしまいます。(はせがわ先生・20代男性) 

A. 子どもの心に言葉を届け、成長へと導く指導ができるのは
そばで見守り続けているはせがわ先生しかいません

ご質問いただきありがとうございます。複雑な背景が絡み合っている問題がたくさん生じる教室では、これといった正解がない場合がたくさんあります。ですから、いろいろな状況を鑑みながら、丁寧な働きかけをされているはせがわ先生の「迷い」は決して間違いではないはずです。むしろその迷いによってAくんは守られているのかもしれません。

みんな、それぞれ良い心と、そうでない心があります。きっと過去のAくんはその良くない面がたくさん出てしまっていたのでしょう。学級崩壊が起こり、その「主犯格」として見られ出したAくんの良い面には、きっと誰も目を向けてくれなかったのではないかと思います。残念ながらそういった「主犯格」にされてしまう子どもたちは、存在自体が悪として扱われてしまうことも少なくありません。

そんなAくんにとって「頑張ろうとしている」という目を向けてくれるはせがわ先生は、救世主のように見えることでしょう。自分の良い面に目を向けてくれる先生のおかげで、今、頑張ることができているのだと思います。

しかし、だからといって行動すべてがガラッと変わるわけではありません。良い心とそうではない心の間を揺れながら、少しずつ少しずつ向上していきますから、その間には不適切な行動が散見されることでしょう。

ここで、その不適切な行動を逐一取り上げて指導するのは、はせがわ先生のおっしゃるように得策ではありません。今まで信頼をされてこなかったAくんにはきっと、強い指導を前向きに受け止めるだけの余裕はないはずです。反抗的な態度を取ったり、不服な様子を見せたりして、なんとか自分を守ろうとするでしょう。そして、先生が二の足を踏まれたのはきっと、こうしたAくんの脆さを感じ取られているからではないでしょうか。

悪い所を「指摘」することは簡単です。しかし、Aくんの心に言葉を届け、成長へと導く「指導」ができるのは、いつも側で見守りながら信頼関係を築き続けているはせがわ先生にしかできません。

例えば、Aくんを呼び出し2人で話をするのも一手です。「最近○○を頑張っていて、先生はとても嬉しい」と成長を認めながら「今のAくんなら~もできると思う」と新たな向上を求めるような言い方ならば、受け入れることが出来るかもしれません。

Aくんからしてみると、自分に寄り添ってくれている、抱えている課題を一緒に考えてくれているような感じがするでしょう。まなざしを向ける、良い行動を示す、今後どうなるかを予見させる……強い指導だけが指導ではありません。その時々でより良い方法を考えながら、Aくんの心に届くアプローチを選んでいくのが良いのではないかと思います。

もちろん、誰かを傷つけてしまった場合、学級全体に悪い影響を及ぼしかねない場合など、全体の前での即時指導が必要な時もあることでしょう。そうした時は、端的に、短い言葉で、真剣なまなざしを向けて注意の言葉をかけるようにしています。

くどくどと説教をしたり、感情的に話したりすると、反発したくなる気持ちを生んでしまうことがあるからです。そしてその後に場所を変えて、その子の気持ちを聞いたり、こちらの願いを伝えたりすると良いでしょう。

こうしてお話しさせていただいている私も、迷いながらの毎日です。あそこできちんと伝えておけば良かった。あの言い方はよくなかったな。そんな後悔がたくさんあります。しかし、年数を重ねるうちに、その迷いや後悔も大切な時間であると自信がもてるようになりました。そうやって迷った時間も、教師の思いとしてきっと子どもたちに届きます。Aくんとはせがわ先生の1年間が実を結ぶことを心より願っております。


みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。

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