発達障害のある子供への個に応じた指導法【子供の個性と能力を最大限に引き出す 学級経営の極意Ⅲ⑥】

子供の個性と能力を最大限に引き出すためには、教師はどのような指導をしていけばよいのでしょうか。学級経営を長年、研究・実践してきた稲垣孝章先生が、全15回のテーマ別に、学級の中で個々の子供の力を伸ばしていく方法について解説します。第6回は、発達障害のある子供への指導について解説します。
執筆/埼玉県東松山市教育委員会教育長職務代理者
城西国際大学兼任講師
日本女子体育大学非常勤講師・稲垣孝章
「発達障害」を理解し、適切な対応をすることは学級経営の重要な視点です。発達障害のある子供の言動は、脳機能の特性によって引き起こされていることが明らかになりつつあります。決して、本人の性格や人間性に問題があるわけではありません。つまり、「わがまま」とか「我慢しろ」といった本人の努力で何とかするという対処法で解決する問題ではないということです。そこで、発達障害の子供に関わる指導を展開するにあたって、次の3つのキーワード「発達障害の理解」「発達障害への対応」「指導上の配慮点」でチェックしてみましょう。
目次
CHECK① 発達障害の理解
発達障害は「見えにくい障害」とも言われています。物事にうまく取り組めない原因は、発達障害によるつまずきや困難というより、本人の「わがまま」や「努力不足」、「やる気がない」などの問題であると受け止められがちな面に課題があります。まずは、発達障害に関する基本的な特性等を理解し、適切に対応することができるようにしていきましょう。
各学級にも発達障害に関する子供が存在します
文部科学省では、通常の学級に在籍する小中学生の児童生徒における発達障害の可能性について調査を実施しています。この調査によると、発達障害の可能性がある子供は、35人学級であれば3人程度が該当する割合となっているということです。調査によるとこのような子供たちは増えており、増加の背景には発達障害への認知の広がりもあると見られ、個性に応じた支援策の充実が課題になっています。
例えば、ADHD(注意欠如・多動症)の場合は、じっとしていることが難しい面があり、衝動的な行動をする場面があります。SLD(限局性学習症)の場合は、話し言葉で理解することに難しい面が見られ、枠内に文字を書くことが難しい状況も見られます。ASD(自閉スペクトラム症)の場合は、先の見通しをもちにくいことで不安になることや抽象的な言葉が理解できずに癇癪を起こすこともあります。これらの症状は、個々の特性によって、また、その場の状況によっても変わってくるので、あくまでも個に応じた指導を心がけていきましょう。
CHECK② 発達障害への対応
発達障害に対する正しい認識がなく、適切でない「関わり」や実態に即さない「環境」は、二次的障害を招いてしまうことがあります。「他の子と同じようにがんばりなさい」「そういうわがままは許しません」「特例は認められません」などという言葉を発することは、発達障害の子供の成長を妨げます。
また、このような捉え方では、学級集団としても人権意識を高めることはできません。個々の発達障害の子供に対して求められる適切な対応に努めていきましょう。
学校組織としての具体的な対応策を確認します
発達障害の子供への対応は、その特性を踏まえて行うことが肝要です。
例えば、ADHDの場合は、持ち物や時間割は、家庭で保護者と一緒に確認してもらいます。また、学級では、じっとしていることを強いるのではなく、プリントの配付を手伝う機会を設けるなど、明確な役割を与えて行動する時間を確保します。さらに、衝動的な行動が少なくなるように、「手を洗うときは順番に並ぶようにしよう」「飛び出さないで忍者のようにゆっくり歩いてね」など、本人が気付くことができるような声かけをします。
SLDの場合は、話し言葉での理解が難しい場合は、絵や文字などを活用して視覚的に伝えるようにします。また、タブレットや計算機、マス目の大きいノートを活用するなどの方法も考えられます。

ASDの場合は、先の見通しがもてないことで不安になりやすいので、絵や文字で視覚的に予定を示したり、早めに変更を伝えたりします。また、言葉で伝える時は、短く、具体的にゆっくり話すようにします。「きちんと片付けをして」ではなく、「その道具は、一番下の棚に戻します」というように声かけをします。興味・関心のあることには積極的に取り組むことができるので、電車が好きな子供には学習の中で電車の絵を使った説明を取り入れたり、スモールステップで目標を設定したりして、楽しく学習や生活ができるようにしていきましょう。
