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理科教育を通して子どもに豊かな体験を! 理科室や校庭でできる自然体験の場づくり【理科の壺】

連載
理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~
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國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓
【理科の壺】シリーズタイトルバナー

理科の授業では、子どもたちに自然の巧みさや生命の神秘に直接触れてほしいと思いながらも、日々の授業でどこまで豊かな体験の場をつくれるか、悩む先生も多いのではないでしょうか。子どもたちが自然と接する機会が減っている今、学校だからこそできる体験の場づくりが、改めて問われています。「先生、見て見て!」そんな声が自然と生まれる環境は、どのようにすれば整えられるでしょうか。今回は、理科室や校庭の環境づくりを起点に、生き物との触れ合いやダイナミックな自然体験を通して、子どもたちの感動と学びを広げる実践を紹介します。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような“ツボ”が見られるでしょうか?

執筆/和歌山市公立小学校教諭・藪麻美
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

「先生、見て見て!!」

休み時間になると、子どもたちは小さな生き物や草花をうれしそうに持ってきます。「宝物を見付けた!」という喜びや驚きとともに、誰かにこの気持ちを伝えたいという思いがあふれています。そのときの子どもたちの輝く表情から、本物を体験することの大切さを感じます。

しかし、最近は体験格差という言葉をよく耳にするようになりました。タブレット端末の普及や生活様式の変化などにより、子どもたちの自然と接する機会は減少してきています。

理科は、自然の巧みさ、神秘さ、美しさに直接触れることができる教科です。

こうした理科の特性を活かし、学校という場で、誰でもいつでもどこでも、自然の魅力に出合える体験の場をつくりたい。そんな思いで取り組んできました。

イラストAC

1.生物への興味と感動が広がる環境づくり

理科室の中や廊下には、生き物、季節の草花、科学おもちゃなどを準備しています。

自然いっぱいの『生き物ハウス』の中に入り、生き物を身近で見たり、触ったり、捕まえたりできます。また、みんなが通る廊下にも様々なものを掲示し、いつも身近に見られるようにしています。

  • 自然いっぱいの生き物ハウス(カエル、トンボ、クモ、バッタ、カマキリ、食草 など)
  • 育てた花や野菜(ヒマワリやヒョウタン、ヘチマの実など)
  • ふれあいコーナー(アカハライモリ、ドジョウ 、ウナギ、オタマジャクシなど)
  • 幼虫コーナー(チョウ、ガ、カブトムシなど)
  • 季節の掲示物 (草花や、キノコ、木の実など)
  • 生命のつながりの跡(サナギやヤゴの抜け殻)
  • 双眼実体顕微鏡(自由にミクロの世界をのぞく)
  • 手作り科学おもちゃ・本
自然いっぱいの生き物ハウス
大きく育ったヒマワリ、ヘチマなど

見るのも触るのも初めての生き物との出会い、ドキドキ、ハラハラが次第に「きれいだな」「不思議だな」「かわいいな」という心情に変わっていきます。

また、校庭にはキャベツやニンジン、パセリ、スミレ、ミカンやサンショウの木などの食草を植えました。チョウが卵を産みつけ、やがてたくさんの幼虫が生まれてくると、その幼虫を探しに子どもたちが集まります。

飼育はモンシロチョウから始まり、子どもたちは身の回りの様々な種類の幼虫を見付けていきます。アゲハチョウ、ツマグロヒョウモン、アオスジアゲハ、ジャコウアゲハ、さらにセスジスズメやオオスカシバの幼虫へと広がっていき、生き物の多様性に触れて興味を深めていきました。

一つの生き物や、一人の出会い、それが友達へ広がり、やがて周りへと広がっていきます。

2.生命の神秘を実感する体験 

3年生の「チョウの育ち」、5年生の「メダカのたんじょう」では、子どもたち一人ひとりが「Myよう虫」「Myメダカ」として飼育に取り組みました。

初めは幼虫が苦手で触れられなかった子どもも、観察したり毎日世話を続けたりしているうちに「かわいい」「育てたい」という気持ちに変わり、無事に羽化したときの感動、大空に放つときの表情は満足感であふれています。

「このMyメダカはオス? メス?」
「卵を産ませて増やしたい」
「大きく育てたい」

と飼育環境を考え世話を続けた子どもたち。メスが卵を産んだときは大喜び。卵の中の大きな目、パクパクと動く心臓、流れる血液に感動していました。

また理科の授業中にチョウの羽化の瞬間や、メダカの羽化の瞬間に立ち会うことができました。

「がんばれ!」
「命ってすごいな」

自分たちが育てた生き物は特別で、こうした体験を通じて学びが自分ごとになり、自然や生き物への愛情がぐっと深まっていきます。

3.自然の恵みを実感する体験

季節ごとの自然の恵みを味わう体験をさせたいと思い、まずは野菜作りから取り組み始めました。

●収穫した野菜
1学期、6年生の「ジャガイモパーティー」から始まり、4年生「スイカパーティー」、「サツマイモパーティー」、5年生「カボチャ・インゲンマメパーティー」、6年生は卒業前の「ヨモギで草餅パーティー」を開催。
「おいしい!」「苦手だけど食べられるようになった」「また育ててみたい」「心も体もポカポカになった」「ありがとう」——自然の恵みを心と体で体感しました。

ヒマワリ
大きく成長したヒマワリの根・茎・葉の大きさを観察しました。種の数を数え、「一粒の種から2000粒以上!」「無限ループだ!」「ずっと命がつながっている」 生命のつながりを実感しました。

ヘチマのたわし、ヒョウタンの水筒、おもちゃカボチャ
⇒一人一個ずつ持ち帰りました。

このような体験を通して、生命のつながりや自然の恵みを身近に感じ、私たちは自然から多くの恵みを受けて生活していることを感じることができます。

4.本物に触れるダイナミックな体験

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