長なわ跳びの8の字跳びは、どのように指導したらいいの? 【使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業 #16】
#14では、長なわ跳びの「0の字跳び」「8の字跳び」について紹介しました。長なわ跳びは、なわに引っかかるという失敗が班の仲間に見えてしまう運動です。長なわ跳びを苦手と感じている子に寄り添った教材や指導の仕方を工夫していくことで、全員が「できた」という喜びを感じ、集団的達成感を味わえる指導が可能となります。今回は、8の字跳びの「連続跳び」と「むかえ回し」について紹介します。
執筆/栃木県公立小学校教諭・下野誠仁
監修/筑波大学附属小学校教諭
体育授業研鑽会代表
筑波学校体育研究会理事・平川 譲
目次
1 連続跳び
⑴ 「連続跳び」のメリット
長なわ跳びでは、最もポピュラーな「8の字跳び」ですが、◯分間で何回跳べるかを目指す「スピード跳び」ではなく、連続何回跳べるかを目指す「連続跳び」をおすすめします。
「スピード跳び」は、どうしてもなわを回す速度が上がってしまうため、苦手な子が恐怖心をもちやすくなります。ややもすれば、同じ班の子に「速く! 速く!」と急かされてしまうこともあり、その経験が苦手意識を強めてしまう恐れもあります。
一方、「連続跳び」は、班全員が長く跳び続けることを目指すので、苦手な子も跳べるようになわをゆっくり回す意識が生まれます。自然と仲間のことを思いやりながら活動できるのは「連続跳び」の大きなメリットです。また、連続10回を達成したら、20回、30回…と課題を設定すると、楽しみながら長なわ跳びの技能を高めることができます。さらにクラス全体で集団的達成感をもたせることをねらうなら、各班の最高記録の合計をクラス記録として、その伸びを確認していくという方法があります。これにより、自分たちの成長を実感し、より意欲的に取り組むことができます。
⑵ 「連続跳び」の指導のポイント
「連続跳び」では、以下のようなことに視点を当てて指導しましょう。
①班の人数
学習班の2班を合わせた班、または列の班など8人程度の班が適当です。これ以上少ない人数だとなわに入るのが間に合わなくなります。また、10人以上では待ち時間が長くなってしまいます。
②入るタイミング
「とおりぬけ」「0の字跳び」と同じく、なわが床に当たるタイミング、またはなわを追いかけるタイミングで入ります。スタートが遅れた次の子、その次の子が引っかかることもあるので、よく観察して原因を見極める必要があります。
③跳ぶ位置
回し手の間の中央でなわを跳びます。次の子も間を空けず、前の子に続いてなわに入って跳びます。
④抜ける方向
なわを跳んだ後、急いで反対側の回し手のそばを通り抜けます。入るときも抜けるときも回し手の近くを通るようにすると、8の字がだんだん細くなっていきます。
2 むかえ回し
⑴ 「むかえ回し」のメリット
連続跳びが全員でできるようになったら、「むかえ回し」にチャレンジしましょう。
「むかえ回し」とは、下から上に向かってくるなわ回しのことです。一般的な上から下に降りてくる回し方(かぶり回し)の反対です。
この「むかえ回し」を習得することで「ひょうたん跳び」や「ダブルダッチ」という技への挑戦も可能になり、長なわ跳びの技のバリエーションが広がります。子どもたちがさらに楽しく活動できるようにするためにも、身に付けさせたい技です。
⑵ 「むかえ回し」の指導のポイント
基本的には、「かぶり回し」と同じです。なわの中に入るタイミングが少し難しいので、試行錯誤しながら見つけさせていくことで、子ども同士のかかわりも深まります。「むかえ回し」では、以下のようなことに視点を当てて指導しましょう。
① 班の人数
「かぶり回し」と同様に8人程度の班で行います。
② なわに入るタイミング
試技者は、なわが目の高さを下から上に通り過ぎたら、なわを追いかけるようにしてスタートしてなわに入るようにします。かぶり回しと違い、床になわが当たる音がないので、なわの位置を認識してスタートすることになります。
③跳ぶ位置
中央よりも少しだけ奥でなわを跳ぶと抜けやすく、次の子も入りやすくなるため、意識して跳ばせるとよいでしょう。
④抜ける方向
「かぶり回し」と同じです。細長い8の字を目指していきます。8の字が太いと、かぶり回しより引っかかりやすくなります。
⑤スモールステップで
苦手な子のためにも、最初は「なわの中に入って1回跳べたらOK」、次は「1回跳んだ後になわの外に出られたらOK」というようにスモールステップで取り組ませていきます。
そして、班やクラス全員の達成を課題にし、達成した子は赤白帽子の色を替えるようにさせます。そうすることで、まだ達成していない子は誰なのか、子どもたちも教師も分かりやすくなります。子どもたちは、まだ達成していない子に積極的にアドバイスをしたり、真剣に応援したりするようになるでしょう。また、教師も全体が把握でき、苦手な子への支援がしやすくなります。
全員が「むかえ回し」のなわに入って跳び、外に出られるようになったら、「むかえ回しの連続跳び」にチャレンジしていくとよいでしょう。
3 よくあるつまずき
①なわに入るタイミングがつかめない。
→「はい!」や「いま!」と声をかけたり、苦手な子の後ろに上手な子が並ぶようにし、後ろからちょうどよいタイミングで背中を押してやったりします。
②先頭の子のスタートが遅れ、引っかかってしまう。
→先頭に並ぶ子は入るタイミングがつかみづらいので、上手な子を先頭に並ぶようにさせます。
以上のような教材や指導法の工夫で、「みんなができる」「みんなが楽しめる」長なわ跳びの授業を目指していきましょう。
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執筆
下野 誠仁
栃木県公立小学校 教諭
1988年、沖縄県那覇市生まれ。若手や体育授業が苦手な教師にとっても取り組みやすく、子どもたちみんなが「できた」を実感できる体育授業を目指し、実践・研究を重ねる
監修
平川 譲
筑波大学附属小学校 教諭
体育授業研鑽会 代表
筑波学校体育研究会 理事
1966年千葉県南房総市生まれ。楽しく力がつく、簡単・手軽な体育授業を研究。日本中の教師が簡単・手軽で成果が上がる授業を実践して、日本中の子どもが基礎的な運動技能を獲得して運動好きになるように研究を継続中。『体育授業に大切な3つの力』(東洋館出版社)等、著書多数。
イラスト/佐藤道子