AIを対戦相手にして、討論する力を伸ばす!Gem「せっとく道場」をプレゼント

討論の授業に、対戦相手としてAIを召喚してしまおう――。今回はその発想から生まれたGemをご紹介します。子ども自身が自ら対戦相手のレベルを選んで腕を磨き、最後には肯定的なフィードバックをもらえて笑顔になれる――それが、「せっとく道場」です。今回も有料パートまでお読みいただけた方には、そのまま使えるURLをプレゼント。
執筆/鈴木優太(宮城県公立小学校教諭)
目次
1 「せっとく道場」とは?
これまでの討論学習では、どれだけ場数を踏んでも,対戦相手はずっと同じ教室の友達でした。負けが続いて自信を失いかけている子や、逆に強すぎて相手がいなくなってしまった子が出てきたとしても、これまでは「個」に応じた対戦相手を用意することは不可能でした。――そう、生成AIが教室にやってくるまでは。
私の連載『「個」も「集団」も育つ学級経営&授業アイデア』で2回にわたってご紹介した討論学習についての提案をお読みいただき、「これならやれそう!」という反響をたくさんいただきました。この記事では、その提案にもう一つ強力な仕掛けをプラスすることを提案します。
入口にカードゲーム。出口に生成AI。その真ん中に「特訓場」。
googleのGemを活用し、討論に特化したAIの対戦相手を教室に召喚します。連載で提案した「もう一人のジャッジ」に続き、「もう一人の対戦相手」の登場です。その対戦相手(特訓場)を名付けて、
「せっとく道場」
GAIが対戦相手であれば、どんなテーマにも、どんな立場にも柔軟に対応します。難易度も子ども自身が選ぶことができます。討論学習の質を決める、一人一人の立論・反論の力を着実に伸ばしてくれます。本稿を最後の有料パートまで読んでくださった先生方には、そのまま使えるURLとプロンプトを共有します。

2 自己選択
使い方は、驚くほど簡単です。「はじめます」と挨拶をすると、やりとりが始まります。
はじめます。
せっとく道場へようこそ!わたしは、きみのとうろんのれんしゅうあいてをつとめるコーチだよ!まずは、きみの学年を下の番号からえらんで教えてね。
5(5年生)。
じゃあ、次の 2つの ことを 教えてね。
① とうろんの テーマ
② きみの 立場
テーマは家族旅行に行くなら海か? 山か? です。わたしは山です。
では、わたしは 反対の【海に行く立場】で 討論するよ。それで いいかな?

学年を入力すると、その前の学年までの配当漢字のみで応答します。低学年でも安心の設計です。
ぜひ「音声入力」を使用しましょう。中学年や高学年でもタイピングの技術に左右されず、討論学習の臨場感やスピード感を味わえます。
次に、討論の きびしさを 下の 1〜5の 数字から えらんでね!
★☆☆☆☆ やさしい
★★☆☆☆ ふつう
★★★☆☆ きびしい
★★★★☆ すぱるた
★★★★★ おに
今日の自分はどのくらい強い相手と組み手をしたいかを考え、対戦相手の強さを自分で選べます。誰かに与えられた課題ではなく自分で選んだ相手だからこそ、子どもたちは本気になります。こうした「自己選択」が、この実践の最大の仕掛けです。

難易度によって、AIの振る舞いはグラデーションで変化します。
「やさしい」は、ほめ言葉たっぷりの応援団。
「ふつう」は、教科書レベルの素直な反論。
「きびしい」は、データや具体例つきの鋭い指摘。
「すぱるた」は,定義のあいまいさまで突く多角的な攻め。
そして、「おに」は……後ほどたっぷりご紹介します。
同じテーマでも、選ぶ星の数によってまったく別の対戦相手が現れるのです。途中で「もっとむずかしくして」と頼めば、いつでも星の数を変えることができます。自分の成長に合わせて、相手の強さを自分で更新していく。ゲームのレベル上げと同じ心理で、子どもたちは夢中になります。
さて、ではこの間担任は何をすればよいのか。机間を回りながら画面をのぞきこみ、「お、『きびしい』に挑んだか!」「その言い返し、本番でも使えそうだね!」などと声をかけるだけです。
数十人の子どもたちの対戦相手をAIに一任できるからこそ、担任は一人一人の挑戦を「見取る」ことに専念できるのです。
どの難易度でも、質問だけを返す聞き役を演じるのではなく、必ず理由をそえた立論・反論を返すようにGemのプロンプトを組んであります。討論のシミュレーターとして機能させるためです。
3 実践例1~「★☆☆☆☆やさしい」を選んだ子の場合
2年生のAさんは、過去記事で紹介したカードゲーム「ペチャリブレ」で遊ぶ時には笑顔だったのに、授業の討論では、反論された瞬間に下を向いてしまうような子です。
そんなAさんが「ペットを飼うなら、犬か猫か」というテーマでAIと討論する際、選んだ難易度は「★☆☆☆☆やさしい」でした。
おそるおそる「ねこはかわいいからです」とだけ入力したAさん。AIはまず、自分の気持ちをはっきり言えたこと、かわいさという理由をつけたことの2つをほめました。そのうえで、穏やかに次のように伝えました。
でも、犬は かいぬしが かえってきたときに、しっぽを ふって 出むかえてくれるよ。ねこにしか できないことを さがしてみると、いいかえせそうだね。
反論と一緒に、言い返すためのヒントまでそっと添えてくれています。Aさんは画面に向かって小さくガッツポーズをして、「猫は、しずかにそばにいてくれます」と音声入力しました。
初めて相手に対して「言い返せた」体験をしたのです。

友達との討論では困難だった、傷つかない場数の積み重ね。AIが相手なら、何度負けてもだれにも知られません。この安心感が挑戦の心理的ハードルを劇的に下げてくれるのです。
次の少人数型討論の時間には、顔を上げて笑顔で反論を楽しむAさんの姿がありました。
4 実践例2~「★★☆☆☆ふつう」を選んだ子の場合
③年生のBさんは、社会科「工場の仕事」において、「機械と手作業、どっちが大切?」というテーマでの全体型の討論学習を翌日に控えていました。そこで、「手作業チーム」の一員として特訓に臨みました。選択した難易度は「★★☆☆☆ふつう」です。
AIは、必ずよいところを一つほめてから、理由の弱いところを突いてきます。
「人の手でないとできない」というのは、なるほどと思ったよ。でも、かまぼこ工場では、一日に何千本も作るよね。手だけで作っていたら時間がかかって、ねだんも高くなってしまうよ。わたしは、同じ形と同じおいしさで、たくさん作れるきかいのほうが大切だと考えるよ。
するとBさんは、何も言わずに資料集をめくり始めたのです。「あった! 形のくずれたものを最後に見つけるのは、人の目だって書いてある!」。教科書の記述だけでなく、資料集にある工場で働く人の言葉まで根拠として引用し、反論を組み立て始めました。
教師が「資料を根拠にしなさい!」と口酸っぱく指示をせずとも、言い返したい相手がいるだけで、子どもは自ら資料を開くのです。
翌日の全体型討論で、Bさんのこの反論はジャッジの決め手の一つに選ばれました。前日にAIから突かれた質問が、本番で友達から飛んできたのです。Bさんは思わず、「きた!その反論昨日AIにも言われた!」。
このように、全体型討論の予行練習の相手としても大活躍です。
5 実践例3~「★★★★★おに」を選んだ子の場合
5年生のCさんは、学級一の理論派。少人数型では負けなしで、正直、物足りなさを感じている子でした。「一番強いやつでお願いします」。Cさんは迷わず「★★★★★おに」を選びました。
国語科「どちらを選びますか」(光村図書)の学習の時間で、テーマは「家族旅行に行くなら海か?山か?」。Cさんは「山」という立場でした。
おにモードのAIは、容赦がありません。

言葉の定義、例外、隠れた前提――。重箱の隅をつつくような反論の連打。Cさんは智恵と語彙を振り絞って応戦します。……しかし、とうとう言い返せなくなりました。
悔しがったCさんは休み時間にも考え続け、再戦を挑みました。教室の友達が相手のままでは天井にぶつかってしまっていた子の学びのリミッターが外れた瞬間でした。
ここで注目していただきたいのは、おにモードであっても、AIの言葉づかいは最後までフェアで丁寧であることです。意地悪なのは論の中身だけ。人格を否定する言葉などは一切ありません。「強いのに、感じがいい」。このAIの姿そのものが、討論のお手本になっています。
5 「終わります」の後は、圧倒的肯定のフィードバック
子どもが「終わります」「以上です」などの結びの言葉を入力すると、AIは対戦相手からコーチへと戻り、やり取り全体を振り返ってフィードバックしてくれます。
まずは全力で肯定。次に、前向きなワンポイントアドバイス。最後は必ず温かい励ましで締めくくられます。

「おに」に完敗したCさんも、このように全肯定で受け止めてもらえたからか、最後は満面の笑顔です。負けても最後は必ず認められて終わる――。だから子どもたちは安心して強い相手に挑めるのです。
なお、乱暴な言葉や誰かを傷つけるような入力に対しては、頭ごなしに叱らず、優しくたしなめて討論の本来の目的に立ち返らせるセーフティネットを組み込んであります。入力はログとして残るという事実とセットにして子どもに事前に伝えておけば、生きた情報モラル教材としても機能します。
「せっとく道場」を活用した特訓場を設けることの良さは、時間と場所を選ばないことにもあります。少人数型討論の直前の予行練習に、全体型討論の前日のシミュレーションに、そして討論で悔しい思いをした授業後のリベンジに――。
定番の討論テーマはもちろんのこと、東京書籍・光村図書・教育出版など主要な教科書会社の各学年の単元を踏まえて対応するように設定してあるため、国語科・社会科・道徳科のどのテーマであれ、明日の授業にそのまま持ちこむことができます。
入口にカードゲーム。真ん中に特訓場。出口に生成AI。
個別最適な場数が「個」を鍛え、「集団」の討論を熱くします。AIとの特訓で磨いた立論・反論が、教室での生身の討論において「チームの発言」となって輝く。その瞬間を見守る時間は、私たち教師にとっても至福のひとときとなるはずです。
先生方の教室でも、ぜひ一人一人に専属の対戦相手を召喚してみてください。
↓↓↓続きは有料パートでお読みください。お読みいただけた方に、「🥊せっとく道場Gem」のURLを配布します。
参照:
鈴木優太『教室ギア55』(東洋館出版社)
鈴木優太『教室ギア56』(東洋館出版社)
鈴木優太『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)
鈴木優太『クラス全員が「聞ける」「話せる」!ペア活動図鑑100』(学陽書房)
鈴木優太編『学級づくり&授業づくりスキル レク&アイスブレイク (ロケットスタートシリーズ) 』(明治図書出版)
鈴木優太編『小学6年の学級づくり&授業づくり 12か月の仕事術(ロケットスタートシリーズ) 』(明治図書出版)
鈴木優太編『どの学年でも通用する学級づくりのワザだけ集めました。 』(明治図書出版)
鈴木優太(すずき・ゆうた)先生プロフィール
宮城県公立小学校教諭。1985年生まれ。2013年より教育サークル縁太会を主宰し、アイデアに富む教育実践と学びの場づくりに定評がある。最近著に『クラス全員が「聞ける」「話せる」!ペア活動図鑑100』(学陽書房・3月31日発売予定)があり、『教室ギア55』(東洋館出版社)、『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)はベストセラーを記録。みんなの教育技術では5年にわたり連載を担当、現在は『「個」も「集団」も育つ 学級経営&授業アイデア』を連載中。
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