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<キャッチボール連載>若手女性教員の奮闘日記 毎日が全力疾走!♯2 「厳しさ」を受け止めてもらうための鍵

連載
菊池省三の「コミュニケーション力が育つ年間指導」~3学級での実践レポート~
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教育実践研究家、教育実践研究サークル「菊池道場」主宰

菊池省三

菊池省三先生から学び続ける全国各地の教師たちが集う教育実践研究サークル「菊池道場」を代表する若手お二方によるキャッチボール連載。子どもと向き合う上での葛藤、毎日の忙しさ、そして奮闘の日々の中に訪れる至福の瞬間……。若手教員の等身大でリアルな日常を綴ります。

今回の執筆者/高田ゆり彩(埼玉県公立小学校教諭)

「子どもたちに育ててもらっている」感覚

はじめまして。髙田ゆり彩と申します。今年度で教員7年目になりました。

教員3年目を迎えた頃、仕事に慣れる一方で「なんとなく授業をこなせば、やり過ごせてしまう毎日」に、私は「これでよいのだろうか」と強い危機感を抱くようになりました。
自分が教師として在る意味を模索する中で出会ったのが菊池省三先生です。今では全国の素敵な道場の先生方と出逢い、日々学ばせていただいています。

毎日の教室で「自分が子どもたちに育ててもらっている」と感じる瞬間があります。素直にまっすぐ成長に向かう姿に負けないよう、目の前の子どもたちから学び続けたい。そんな思いでこの連載を書かせていただきます。

田中先生の原稿にあった「教師と子どもの距離感が近すぎては負荷(厳しさ)をかけられず、成長のタイミングを失ってしまうのではないか」という問いかけ。まさに私自身も日々葛藤し続けているテーマです。

今年度、私は2度目となる6年生の担任をしています。始業式の日、緊張しながら教室に入ると、1人の児童(Aさん)が机に顔を伏せていました。自己紹介を始めると顔を上げてくれましたが、初日からどうしても気になる存在でした。

2日目、私はこの1年の学級の「成長曲線」を黒板に示しました。全員が「高い目標(Aの道)に進みたい!」と手を挙げるような、心地よい緊張感のある空気をつくった上で、「Aの道に進みたい人!」とクラス全体に問いかけました。

周りの友達が全員まっすぐに手を挙げる中、Aさんだけが手を挙げません。しかし、周囲の熱量を感じ取ったのか、遅れてほんの少しだけ、迷うように手を挙げようとしました。

背中がヒヤッとする瞬間でした。ここで田中先生の言う「教室のゆるさ」に流されて見過ごすことも、逆に無理に挙げさせることも違う。私はとっさに、「今、少し手が動いたよね。きっと心の中では、みんなと一緒に成長したいと思っているのだと思います!」と笑顔で言い切りました。
全員が成長に向かうという空気感の中で、今年度のクラスがスタートしました。

「教師の自己開示」の大切さ

5月、市内陸上大会がありました。当日に向けての1ヶ月間、子どもたちは毎朝・放課後の練習に一生懸命励み、本番でも全員が競技や応援を全力でやり遂げました。

やり切った表情で教室に戻ってきた6時間目。私はこれまでの努力をこれからの学校生活に活かしていけるように、「成長ノート」や「白い黒板」を使い、丁寧に振り返りの時間を取ろうと考えていました。

しかし、子どもたちは疲れ切っており、自分を振り返る気力は残っていません。重い空気を感じつつもそのままノートを配っていた時、Aさんをはじめとする数人から「えー」「書きたくない」というマイナスな発言が飛び交いました。今思えば、単純にお互いのがんばりを認め合ったり、喜び合ったりする時間にするべきだったのではないかと反省しています。これも、私自身の「急ぎすぎ」が原因ではないかと思いました。まだ年度が始まって2ヶ月、教師が良かれと思って示す「望ましい在り方」であっても、子どもたちにとってはハードルが高すぎることがあるのだと改めて学びました。

ですがその時は、周囲の子どもたちもその言葉をただ黙って聞いていました。私は「この雰囲気をそのままにしていて本当に良いのか」と考え、今学期始まって以来、初めてクラス全体に対して毅然と伝えました。

田中先生の言う、「ときには一歩前に進むような負荷をかける『厳しさ』」が今まさに必要だと感じました。「ひとりぼっちをつくらない」「誰ひとりとして取り残さない」。担任としての想いを本気で伝えると、涙を流しながら聞く子もいました。

その後、放課後に数人の女の子たちが駆け寄ってきました。

「先生、でもね、5年生のときのことを考えると、Aさんすごく成長しているんですよ」

ハッとさせられました。私は自分の理想を押し付け、子どもたちの変化してきた部分を十分に認められていなかったのではないか。

次の日の朝、私はクラスのみんなに、素直な心の内をぶつけることに決めました。

「昨日はみんなに少し言い過ぎてしまったなと反省しました。みんなで一緒に成長したいという思いが強いんです。先生のこの気持ちが、少しでも伝わっていたら嬉しいです」

教師のプライドを捨てて「自己開示」をしたとき、子どもたちの視線や表情が深く私に向いているのを肌で感じました。

特に高学年になると、教師の価値観の押し付けになってしまうと子どもたちは離れていってしまいます。教師とはいえ間違える。だからこそ素直に自分の弱さや願いをオープンにすること。それが、必要な「厳しさ」を受け止めてもらうための距離感の鍵なのだと痛感しました。
翌日、改めて行った「白い黒板」の実践。いつもはノートへの鉛筆が進まないAさんが、静かにペンを走らせていました。そこには、「黒板に書くことの大切さです。なぜなら、ノートだと相手にわからないし、交流でも聞くだけで考えようとしないからです」と、素直な気持ちが綴られていました。

陸上大会の翌日の「白い黒板」
陸上大会の翌日の「白い黒板」

「周囲の子」を育てるアプローチ

連載第1回の田中さんの原稿の中に、「『自分と先生』だけの関係で、教室にいる他の仲間が見えていない」という言葉がありました。本当にその通りだと思います。気になる子に教師が直接注意し続けることは関係をすり減らし、健全な信頼関係が築けませんよね。

そこで、気になる子と直接向き合うだけでなく、その子の周囲にいる子に対して、教師が「裏方マネージャー」として関わっていくアプローチを大切にしています。
そのことを実感したのが、社会科見学の行動班をつくる日でした。Bさんは、明るく元気で、クラスに活気を与えてくれる存在です。ですが、4月は自分のことだけに終始しがちで、周りの友達に自分から働きかけるような様子は見られませんでした。そんなBさんが、行動班を作る時間になると、いつも特定のメンバーで群れてしまいがちな気になる子たちに対して、自分から進んで「ぼくが同じ班になります!」と意気込んでいました。それまでの関わりを通して、私とBさんとの間で「クラスの成長」への意識が共有できていたからこそ生まれた姿でした。

実際の社会科見学中も、Bさんはグループのみんなが困らないように、「こっちの列にちゃんと並ぼう!」「離れないでねー!」と優しく声をかけ続けてくれていました。

社会科見学の翌日、私はBさんに、
「たくさん声をかけてくれていたね。彼らも本当に助かっていたと思うし、そうやって自分もクラスも成長していくんだよね。クラスのことを考えてくれてありがとう」と伝えました。

このグループのリーダーになった子の成長ノートに「『わたしが班長やりたい!』と言ったら、『じゃあ決まり』で終わりにするのではなく、Bさんは自分から、『男子はまとめるよ。全体はおねがい!』と力になろうとし、本当はない役割をつくって支えてくれました。」という記述がありました。教師が直接手を出さずとも、子ども同士の関係性の中で気になる子も周りも共に育っている様子が見て取れました。

Bさんのグループのリーダーを務めた子の成長ノート
Bさんのグループのリーダーを務めた子の成長ノート

周りが変われば、その子も変わる

気になる子に直接指導しすぎて距離感を損なうよりも、まずはその子の周りにいる子どもたちへの関わりを大切にし、周りから育てていくこと。高学年における「子どもと教師の距離感」を円滑にするために、今私が子どもたちから学んでいる視点です。

私が目指す学級のゴールの姿は、教師がつくる学級ではなく、子どもたち同士が互いを見つめ合い、成長し合える学級です。そのためにも、教師自身が時に自己開示をしながら信頼を結び、同時に子どもたちの関係性を裏から支えるマネージャーでありたい。そんなクラスを、年間を通してつくっていきたいと思っています。

※この連載は、原則として月に1回公開します

次回の執筆者・田中麻莉子先生へ

心のこもった原稿とお言葉をありがとうございます。出会った頃から変わらない教育への熱い思いと、3年生の子どもたちに真摯に向き合う姿に、いつも刺激をもらっています。

ここまで「教師と子どもとの距離感」を考えていく中で、よく集団の分析で使われる「2:6:2の法則」が頭の中にありました。教室では、「消極的だけれど、責任感がある」「積極的だけれど、責任感がない」と言われる6割の子たちが多数派を占めています。Bさんに続けと、残りの6割層にどんな言葉をかけ、クラス全体の底上げを図れるのか。そこへのアプローチが、今の私の大きな課題です。

田中先生が始められた「質問タイム」や「ほめ言葉のシャワー」は、まさにこの「6割の層」を主役に押し上げ、公に向かう姿を引き出す鍵になるのではないでしょうか。この中間層が成長することで、連動するように下位の2割の子たちの変容も期待でき、集団としての成長にもつながると考えています。

中間の彼らがどう上の層へと上がり、学級全体が成長していくのか、先生が意識されている関わりをぜひ教えてください。お返事を楽しみにしています!

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取材・文/関原美和子


菊池省三先生の写真

Profile
きくち・しょうぞう。1959年愛媛県生まれ。北九州市の小学校教諭として崩壊した学級を20数年で次々と立て直し、その実践が注目を集める。2012年にはNHK『プロフェッショナル仕事の流儀』に出演、大反響を呼ぶ。教育実践サークル「菊池道場」主宰。『菊池先生の「ことばシャワー」の奇跡 生きる力がつく授業』(講談社)、『一人も見捨てない!菊池学級 12か月の言葉かけ コミュニケーション力を育てる指導ステップ』(小学館)他著書多数。


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