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<連載> 菊池省三の「コミュニケーション力が育つ年間指導」第2部・学校づくり編 #8 愛媛県松山市立道後小学校6年4組③

連載
菊池省三の「コミュニケーション力が育つ年間指導」~3学級での実践レポート~
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教育実践研究家、教育実践研究サークル「菊池道場」主宰

菊池省三
菊池省三の「コミュニケーション力が育つ年間指導」 第2部・学校づくり編 タイトル

菊池実践を追試している3校の授業と子供たちの成長を、年間を通じてレポートする連載。今回は全校で菊池実践に取り組んできた道後小学校の中でも、とくに積極的に実践してきた川上洋文先生による今年2月の授業を紹介します。

レポートする学校の3人の先生方の紹介

担任・川上洋文先生より、学級の現状報告

「子どもたちが笑顔でのびのびと過ごせる学級づくりをするために何が必要か」と思い悩んでいたとき、菊池先生のセミナーに参加する機会がありました。改めて「ほめる」ことの大切さを痛感し、担任である自分が「子どもたちの何を見て、どうほめるのか」について考えさせられました。
学級開きでは、担任として、「温かい言葉のあふれる学級」「認め合い、助け合える居心地の良い学級」「よく考え、進んで実行し、最後までやり抜く雰囲気のある学級」を目指したいという思いを伝えました。「どのような学級で1年間過ごしたいか」をテーマに話し合い、「切り替え速度NO.1 全力チャレンジ全員笑顔のハッピーセット みんな最高 6年4組 31名」という学級目標が決まりました。自分たちで決めた学級目標を意識させるために、学級活動や行事など、様々な場面で口にしてきました。
具体的には、1年間継続して次の3つに取り組んでいくことにしました。


①朝の会で毎日「コミュニケーションタイム」を実施し、テーマについてペアやグループで話す場を設定する
②帰りの会で毎日「ほめ言葉のシャワー」を実施
③自分自身の言葉遣いについて、「ほめる」言葉を意識して使う

①と②を続ける中で、最初はなかなか言葉が出てこなかった子も前向きに取り組めるようになり、ペアで楽しそうに会話をする姿が多く見られるようになりました。ほめてもらった後の感想を笑顔で発表できる子も増えました。友達からのほめ言葉の変容に気づき、次回のほめ言葉のシャワーに向けて頑張ることを力強く話す子もいます。
残り少ない小学校生活を充実させ、「このクラスで良かった」という思いを高めるために、子どもたちが自分の成長をより実感できるような指導のあり方を学び続けていきたいと思っています。

菊池省三先生の授業レポート

「みなさん、こんにちは! 拍手をしたら笑顔になりますね。本気の拍手で、指の骨を折りましょう!」
菊池先生が教室に入るなり、挨拶すると、子どもたちはとびきりの笑顔で大きな拍手をした。菊池先生が、
「さっき4時間目の授業を見ていて、『いいなあ』と思ったことを書きますね」と黒板に一文字書いた。

「この漢字が読める人?」
4~5人が手を挙げた。
「3秒だけ、隣の人と相談しましょう」と声をかけると、子どもたちが相談し合い、半数強が挙手した。
「じゃあ、もう2秒だけ」と菊池先生がさらに促すと、子どもたちは再び相談し合い、ほとんどの子が手を挙げた。
指名された男子が、自信たっぷりの笑顔で、「『りん』です」と答えた。
「4時間目で交流する場面があったとき、彼が私のところに来て話しかけてくれました。

さっき読んでいた会話の本では、<『はじめまして、○○と言います。よろしくお願いします』と紋切り型で言ってしまうと壁ができて、それ以上コミュニケーションが取れない>という主張をしていました。彼はそういう紋切り型の挨拶ではなくて、『これ、どうですか?』とストレートに話しかけてくれたんですね。……うん、ここで拍手だな!」
菊池先生に促されてみんなが拍手した。
菊池先生が黒板に続けて書いた。

「姿も気持ちも前向きで『頑張るぞ』というやる気の人は、何と読むか3秒だけ相談しましょう」
半数あまりが手を挙げると、菊池先生が挙げていない子の手を持ち上げながら、
「みんなが頑張って手を挙げているから、僕も手が挙がるんだよな」と話すと、みんなが大笑い。「こうやって手が挙がると、みんなも手が挙がるんだね」と、教室を見渡すと、みんなの手が挙がった。
「右手の中指先を天井に突き刺す。これを手を挙げるというんです」
みんなの指の先がピシッと挙がった。
「『りりしい』です」
菊池先生が、
「じゃあ、凜々しい姿勢を見せてください」と声をかけると、みんなの姿勢もピシッとなった。


4組は、授業の冒頭から、明るい声やスピードがあるリアクションが自然に起きるいい教室でした。いいリアクションができるのは、教室に「みんなで頑張るぞ」という空気があり、子どもたちの心理的安全性が保たれているからです。
私の授業を特別授業として切り離すのではなく、4時間目の川上先生の授業の言葉かけとつなげながら、「この先生には、何を言ってもいいんだ」という空気を導入の部分でつくり、安心感を印象づけることで、子どもたちに「楽しそう」「楽しい」「楽しかった」経験をさせたいと考えました。
対話・話し合いをする度に、「自分たちは成長したなあ」と実感できると、対話・話し合いへの憧れが生まれます。「みんなで頑張るぞ!」というやる気が感じられる教室では、みんなで「楽しそう」「楽しい」「楽しかった」経験が、教室の空気となって積み重なっていくのです。

1枚の写真から気づいたこと、思ったこと、知っていることを自由に発表

菊池先生がA4判の紙を配った。

3.24

「これは、何の数字でしょうか?」と菊池先生が尋ねると、あちこちで「卒業式?」というつぶやきが聞こえた。指名された子が「卒業式です」と答えると、みんなが大きな拍手を送った。
続いて菊池先生が教室を回りながら、ペアスケーティングの三浦璃来選手・木原龍一選手の写真を見せると、「ああ~っ」と大きな声が挙がった。
「リアクションがいいですね」と菊池先生がみんなをほめながら、リアクションの3つのポイントを板書した。


「じゃあ、この写真の2人のペア名を知っている人?」と問いかけると、5~6人が手を挙げた。
「りくりゅうペアです」
当てられた子が答えると、「おおっ」と大きな声と拍手が起こった。
「りくりゅうペアについて、知っていること、写真を見て気づいたこと、何でもかまいません。5秒だけ近くの人と相談しましょう」
相談後、菊池先生に指名された縦1列が発表した。
「感じたことや気づいたことは一人ひとり違う。ということは、『前の人と同じです』『一緒です』という発表はないということですよね?」と菊池先生があおった。


・金メダルを獲って笑っている
・年齢が9歳差

菊池先生が黒板を指さしながら、
「今のように、なじみのない情報が来たら、『うなずいて軽く驚きながら上手に笑う』んだね。じゃあ、時を戻そう」
発表した子が、「年齢が9歳差です」と言い直すと、みんなが「おおーっ」と拍手をした


リアクションは、「わかった」「ひらめいた」という意識が表面化した動作です。つまり、わかったことやひらめいたこと、見つけたことが深まっていけば、リアクションもよりいいものになります。これこそが、授業の醍醐味ではないでしょうか。
「次はこれ」「次は……」と、教師が正解を握り、順番に示していく授業では、深まりのリアクションが出てくることはありません。表面的な浅いリアクションが続き、授業に締まりがなくなっていくのです。


子どもたちの発表は続く。


・すごい人


「さっきの2つは、知っている情報。今の発表は自分が思ったことを素直に話した。発言の内容の種類が違うんだね。思ったことを話せる自己開示ができる彼がすばらしいし、それを受け入れるみんなもすばらしいですね」
みんなが拍手をした。


・日本で初めて(ペアスケートで)金メダルを取った
・コルティナオリンピックで、日本代表としてペアで出た、人気のスケート選手

続いて菊池先生が、銅メダルを取った、スキージャンプ競技の男女混合の選手たちとスピードスケートのパシュートの選手たち、フィギュアスケートの国別団体で銀メダルを取った選手たちの写真を次々と見せた。
「この人たちの共通点はなんだろう。どの団体も、『 を大切にしました』と言ったそうです。 は、一人ひとり違うことだよね。では、さっき配った紙に書きましょう。いくつでも書いていいですよ」
子どもたちは自分の考えを書いた後、自由に立ち歩いて意見交換し、そのままの位置で発表した。


・団結力
・協力性
・チームワーク
・笑顔
・志
・仲間

「正解が出ました。彼が言ったんだけど、聞いていて覚えていて言える人?」と菊池先生が尋ねると、指名された子が「『団結力です』と誤答した。
「うん、そうとも言える。次を読んでいますね」と菊池先生。もう1人の子が「チームワークです」と答えると、みんなが大きい拍手を送った。
「『チームワーク』はカタカナですね。ひらがなや漢字だとどんな言い方になるか、次に聞こうと思っていました。さっき答えてくれた『団結力』も、その1つだよね。先を読んでますねえ」と菊池先生がフォローの言葉かけをした。


聞き合う力を育てるため、子どもたちが発表した意見の中に正解があったとき、「聞いていて覚えていて言える人?」という問いかけを度々します。このとき、間違えて別の人が発表した意見を答えてしまう子もいます。
この問いでは、次の問いにつながる “誤答” だったため、「先を読んでいるね」と言葉をかけました。そもそも不正解のないこうした問いかけには、誤答もいろいろな形で次につなげていくことができるのです。

「では、席に戻って、漢字とひらがなで表現してみましょう」
子どもたちはサッと席に戻り、一人ひとりが考えて書き込んだ後、再び自由に立ち歩いて意見交換し、発表した。


・協力性
・団結と絆
・協調性
・笑顔
・協力すること
・団結する
・仲間の力

子どもたちから様々な意見が出された。

4組にピッタリな「にんべん」の漢字1文字を考えよう

続いて、菊池先生が黒板に「イ」と書き、
「にんべんのつく漢字を、2分間でたくさん書きましょう」と問いかけた。
みんなが考えている間、菊池先生が黒板の「イ」に付け足した。

「これをしたいと思います」と菊池先生が話すと、みんなから「おおっ」「やったー」「ありすぎて困るー」と大きな拍手が起こった。
そのとき、菊池先生が思わずつぶやいた男子に歩み寄り、握手をしながら、
「『わが学級のいいところがありすぎて困る』と言えるのは、すごいことだよね」と言うと、みんなが拍手した。
その後、4組のいいところ、自慢できるところ、「卒業式までにこれを頑張りたい」と思うにんべんの漢字を出し合い、各班でベスト3を決める話し合いを行った。
班ごとに決めたベスト3を黒板に書き、班ごとに発表。


●1班
1位「仲」……仲がいい
2位「係」……係の仕事がおもしろい
3位「仏」……仏のように、みんな優しいから

●2班
1位「優」……運動会で優勝したことと、クラスみんな優しいから
2位「個」……一人ひとりが個性的だから
3位「仲」……仲間の信頼感が詰まっていて、仲がいいから

●3班
1位「仲」……仲がいいから
2位「個」……個性豊かだから
3位「体」

「なぜ、3班は『体』を3位にしたのか、予想しましょう」と菊池先生が問いかけると、何人もが手を挙げた。


・体育が好きだから
・運動会で優勝したから

3班が、「いっぱい食べて、健康で健やかな感じだから、『体』にしました」と話すと、みんながうなずいた。


キラッと光る意見やおもしろそうな答えが出たとき、途中でみんなに「なぜそう思ったんだと思う? 予想してみよう」と尋ねることで、子どもたちをつなぎ、「聞く」から「聞き合う」集団にレベルアップしていきます。
子どもたちは頭をフル回転させ、発表者の意見を予想します。たとえ、外れていたとしても、それは間違いではありません。「自分はこう考えたけれど、○○さんはこういうふうに捉えたんだな」と、新たな発見につながります。
「体」という文字が出てきたのは、みんなにとって、「運動会で頑張って優勝した」喜びが大きかったからでしょう。いくつかの班が挙げていた「係」という漢字も、係活動を頑張ったという学級での共通体験の表れです。
こうした納得解の学びには、その教室の歴史が見えるものです。

●4班
1位「信」……信じられるクラス
2位「仁」……誠実さがあるから
3位「個」……一人ひとり個性的だから

●5班
1位「仲」……みんな仲がいいから
2位「優」……優しいから
3位「信」……信じ合っているから

●6班
1位「係」……係をすることで、仲を深めることができる
2位「仲」……仲がいいから
3位「優」……みんな優しいから

各班が出したランキングをもとに、1位を3点、2位を2点、3位を1点として合算し、4組のベスト3が決まった。


1位「仲」
2位「優」
3位「個」

菊池先生が上のように板書し、
卒業式の1秒前まで、『仲良く優しく個性を発揮』して、成長していいクラスにしてください。凜々しい姿を見せてください」と話すと、子どもたちがピシッと凜々しい姿勢になった。

菊池省三先生から川上洋文先生へのメッセージ

今回の3回目の授業は、希望者を募り、自ら手を挙げた4人の先生方の中から、佐藤郁子校長先生が川上先生に決めた、とうかがいました。
川上先生は他県で教頭を務めた後、松山で再び担任として道後小に赴任し、2年目の本年度、学年主任として6年生の先生方をまとめています。
佐藤郁子校長が掲げた学校方針に賛同し、まず菊池実践の追試からスタートしたといいます。4時間目の授業を参観したとき、言葉かけのタイミングや間の取り方、表情など、細かいところにも学ばれた様子が表れ、丁寧に指導をされていることが伝わってきました。
素直に「学ぼう」という集団をつくり、一緒に学んだ先生方との共通理解のもと、1年間積み上げてきた学びが、学ぶことを素直に楽しむ4組を育てたのだと感じました。

菊池省三先生による授業解説

漢字の指導では、「意味のまとまり」や部首に分解して教えていきます。
この授業では、「人」にかかわる「にんべん」の漢字を通して、学級集団について考えさせたいと思いました。
「にんべん」の漢字には、いい意味を持つ言葉が多くあります。「にんべん」の漢字を集めることで、仲間とのかかわりをより意識するようになるでしょう。「にんべん」の漢字を、個人、グループ、学級全体で考え、ランキングしていく活動は、3つの段階を踏むこと自体が集団としてのあり方を考えていく学びとなります。
この授業は、4月であれば「今年の○年○組はどんな教室にしたいか」、年度末ならば、集大成として「○組の良さ」を問うなど、取り組む時期によって、様々な意味を持たせることができます。
「私(○組)を色に例えたら」の取組と共通する点も多くありますが、「にんべん」の漢字一文字のほうが、より鮮明なイメージになるといえるでしょう。
「にんべん」の漢字で、子どもたちから多く出てくるのは、「優」「仲」「信」などですが、今回、4組で多く出てきたのは「係」でした。係活動が子どもたちに大きな影響を与えていることがわかります。
軽やかな学級には、次の5つが共通点として見られます。


①表情が柔らかい
②ちょうどいい大きさの声で話す
③動きがスムーズ
④言葉で考え、行動している(教室に、価値語が浸透している)
⑤ 自治的な空気がある

⑤の自治的な空気というのは、教室掲示物からも見えてきます。その象徴的なものが「係活動」の掲示物です。「係活動」は、「学級のために自分ができることは何かを考え、実行する活動」です。教師から割り振られた「当番活動」とは全く異なります。
6年4組には、楽しそうな係活動の掲示物が貼り出されていて、子どもたちが係活動を楽しんでいる様子が伝わってきました。
6年4組のリアクションや表情が豊かなのは、上記の5つが育っているからでしょう。みんなで楽しみ、成長したいと思う、軽やかな空気感がありました。

ピッタリな「にんべん」の漢字1文字を話し合いながら見つけていく。見つけた漢字には、4組の歴史そのものが映し出されている。
ピッタリな「にんべん」の漢字1文字を話し合いながら見つけていく。見つけた漢字には、4組の歴史そのものが映し出されている。

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取材・文/関原美和子


菊池省三先生の写真

Profile
きくち・しょうぞう。1959年愛媛県生まれ。北九州市の小学校教諭として崩壊した学級を20数年で次々と立て直し、その実践が注目を集める。2012年にはNHK『プロフェッショナル仕事の流儀』に出演、大反響を呼ぶ。教育実践サークル「菊池道場」主宰。『菊池先生の「ことばシャワー」の奇跡 生きる力がつく授業』(講談社)、『一人も見捨てない!菊池学級 12か月の言葉かけ コミュニケーション力を育てる指導ステップ』(小学館)他著書多数。


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