「次期学習指導要領の基本的な方向性」のポイント~「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ(案)」より【次期学習指導要領「改訂への道」#52】

2026年9月25日、中央教育審議会の教育課程企画特別部会で、2025年1月から行われてきた学習指導要領改訂に向けた議論をまとめる、審議まとめ(案)が示されました。この審議での意見を受けてさらに修正を図り、一般のパブリックコメントや親部会などでの審議を経た後、審議まとめが示され、2026年末頃には中央教育審議会の答申が示され、今年度内には次期学習指導要領が示される予定です。
この審議まとめ(案)は、次期学習指導要領自体や具体的な各教科等の方向性を示す重要なもので、次期学習指導要領を読む前にこれを読むと、より深く理解することができるため、できれば直接読んでいただくのがベストです。ただし、第1部「次期学習指導要領の基本的な方向性」と第2部「基本的な方向性を踏まえた各教科等の方向性」だけでも、PDFで約400ページに及び、資料編を加えると1000ページを超えるものになります。
そこで、今回は審議まとめ(案)の基本方針を示す、第1部「次期学習指導要領の基本的な方向性」を中心に、ポイントをざっと紹介していくことにしましょう。
目次
「主体的・対話的で深い学び」は、現行学習指導要領と基本的に変わらない
第1部は第1章「子どもたちを取り巻く社会や学校の現状と展望」〜第8章「次期学習指導要領の趣旨を実現するために必要な方策」まで、8章に整理されています。
まず第1章の冒頭は、社会や学校の現状と展望に触れています。少子化・高齢化やグローバル情勢、自然災害の激甚化など、多様な社会状況に触れていますが、全体を通してデジタル化とAIがもたらす変化や課題に多くが割かれていることを押さえておきたいものです。その課題の中で、ただデジタルやAIを活用できるようにするのではなく、「五感を通じた体験や身体性」も大事にしつつ、AI時代にこそ重要となる、「人間ならではの力を育むことを教育課程全体で強く意識する必要がある」ということがポイントでしょう。
第2章「次期学習指導要領に向けた基盤となる考え方」で、⑴の①に示された次期学習指導要領の方向性にある、「生涯にわたって主体的に学び続け、多様な他者と協働しながら、自らの人生を舵取りすることができる、民主的で持続可能な社会の創り手を『みんな』で育む」はこれからの学校教育の目的とも言える重要なポイントです。そしてそれを実現するための3つの方向性として、①「主体的・対話的で深い学び」の実装、②多様性の包摂、③実現可能性の確保を示しています(資料1参照)。
資料1

①は、現行学習指導要領と基本的に変わらないという点で安心できる材料と言えるでしょう。その上で、特に「深い学び」の実装に取り組みやすくなるよう、学習指導要領を構造化・表形式化、デジタル化することを示し、同時に小学校「情報の領域」や中学校「情報・技術科」の創設など、情報活用能力の抜本的向上を行い、具現化を図るとしています。
また②については、ただ単に多様な子供たちへの対応のために行うのではなく、多様な人が集まって行う試行錯誤が、「民主的で持続可能な社会の創り手を育てる上で大きな価値を有する」ことや「多様な子供たち同士の対話や協働が『深い学び』を駆動させる契機となる」としているところが重要でしょう。
さらに③では、こうした教育の実施に向け、「学習指導要領の構造化に伴う内容の精選、調整授業時数制度の創設…教科書の精選」などを通して、「教育課程における『余白』の創出」を行うなど、環境整備を通して教師の負担軽減を図りつつ、より確かな実践を支援することを示しています。
その上で、⑵で改めて、AI時代には知識の価値が下がるのではなく、「むしろ、知識を意味理解や外化を伴う形で効果的に身に付け、知識と知識を繋げて頭の中で構造化したり、共通点や原理・原則を見いだし…」ていくような「確かな知識」が重要だとし、このような過程を通して身体化(記号接地)された知識の重要性を説明しています。特に、この身体化(記号接地)ということは、深い理解にもつながるもので、今井むつみ委員の資料などを参考に、理解をしておきたいものです(資料2参照)。
⑶では、「多様な他者が協働しながら複雑な課題を解決していくことが不可欠となる」今後の社会においては、「『好き』(興味・関心)を育み、『得意』を伸ばしながら、それらを原動力として学び全体への動機付けを図っていく取組」と「『当事者意識を持って、自分の意見を形成し、対話と合意ができる』ことは、いずれも重要かつ密接に関連したもの」としています。
資料2

各学校が実情に応じて活用できる「調整授業時数制度」
第3章では、「深い学び」を実現するための方策を示しており、⑴の②で、「学習指導要領の目標・内容の構造化について説明。そして、「『知識及び技能に関する統合的な理解(統合的な理解)』を、『思・判・表』について可視化した状態として『思考力、判断力、表現力等の総合的な発揮(総合的な発揮)』を抽出して定める」としています。この「『統合的な理解』・『総合的な発揮』による構造化」は「内容の精選に繋がる」ものとしており、教師がより主体的に授業づくりをするために、しっかり理解しておきたいところです。
⑶では、評価が難しいと言われた「学びに向かう力・人間性等の再整理」が示されており、「学びや生活に向かう態度」と「情意・感性」の2側面で整理し、図も加えて分かりやすく説明がなされています(資料3参照)。
資料3

⑷では、資質・能力を一体的に育成し、「深い学び」を具現化しやすくするための学習指導要領の構造化について、「知識及び技能」と「思考力、判断力、表現力等」が並列するパターン(算数・数学や理科など)と、並行するパターン(国語や外国語など)も示されています。
こう見てくると授業づくりが難しくなりそうに思えますが、⑸で、デジタル学習指導要領の導入によるレイアウト変更やキーワード検索などによって、授業づくりの意図に応じて、情報を整理し直せることも説明しており、大きな支えになるでしょう(資料4参照)。
資料4

その他、⑺では、「見方・考え方」の再整理、⑻では、資質・能力の再整理が説明されており、見方・考え方については、それを働かせて資質・能力を育むものではなく、「各教科等を学ぶ本質的な意義を示すことに焦点化してより端的に示す」としていること、資質・能力については、言語能力・情報活用能力について説明がなされているところも押さえておきたいところです。
第4章では「多様な子どもたちを包摂する柔軟な教育課程」について説明されていますが、やはり大きいのは⑵で説明されている調整授業時数制度でしょう。各学校が実情に応じ、特別な申請をしなくても最大15%程度の授業時間数を増減させたり、研修に活用(週1時間程度)したりできることが説明され、その活用方法の類型も示されています。これについては、すでに2026年度から全国のサキドリ研究校で取組が始められており、その成果や課題についての情報を今から集めておくことが必要でしょう。
さらに第5章では、こうした取組で生み出された余白を通じて教育の質の向上を図ることが示されています。
