図や絵を使って自分の考えを表現するよさをどう感じさせるか?【理科の壺〜理科担任のはじめ方】

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理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~
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國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓
【理科の壺】図や絵を使って自分の考えを表現するよさ

「物事の様子を言葉で説明して!」といわれると、結構伝えるのが難しいと思いませんか? また、同じ説明でも受け手によってイメージすることが異なることもあります。「百聞は一見に如かず」とあるように、言葉で説明するよりも図や絵を使った方が伝えやすいことがあります。理科は自然を相手にしている教科です。どのようなときに図や絵を使えばいいのか、考えてみましょう。
優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような“ツボ”が見られるでしょうか?

執筆/埼玉大学教育学部附属小学校教諭・塩盛秀雄
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

図や絵を使って自分の考えを表現するよさ

理科の学習では、子どもたちが自分の考えを表現する場面がたくさんあります。ただ、自分のイメージを言葉で表現することが意外と難しい場合が多くあります。そんなとき、言葉を補う図や絵を描くことを認めたり、図や絵を使って考えを表現するようにしたりすると、子どもたちは目の前の自然事象に改めて向き合えるかも知れません。 そこで、今回は、図や絵を使って自分の考えを表現するよさを感じる場面を2つ紹介します。

1 事実の変化を言葉にする? 図や絵を使って言葉を見つけよう!

自然の事物・現象を観察、実験によって解決することが理科の学習では中心となります。そのため、まずは実験結果などの目で見て分かる変化について、自分の考えを言葉にする場面があります。

例えば、4年の「ものの温まり方」では、金属の温まり方を考えるときに金属棒や金属板を扱うことがあります。そのとき、「結果がどうなるのか」ということを言葉だけで表現することは、子どもたちにとってなかなか難しいところです。もちろん、結論としては「金属は熱したところから順に温まり、やがて全体が温まる」などといった言葉にしていく必要はあります。そのため、温まり方の変化について、まずは図や絵を描かせ、実験前にみんなで共有して言葉を見付けておくとよいでしょう。また、時間経過によって変化していくものであれば、図や絵を一つにするのではなく、時間変化によって3つくらい描かせた方が、言葉にしやすくなっていいかもしれません。

温まり方の変化の予測

2 目で見えないことは事実を基にイメージで表現しよう!

理科の学習では、目で見えないものも多く扱います。そうすると、どうしても捉えた事実としての数字だけでは、子どもたちが理解しにくいことがあります。

例えば、6年の「物の燃え方と空気」のときに、ろうそくが燃える前と燃えた後の集気ビンの中の様子について考える場面があります。気体検知管などを使って、実験結果として「酸素約21%→約17%」「二酸化炭素約0.04%→約5%」といった数字を目にすることが多くあります。しかし、目に見えない集気ビンの中の様子を図や絵を使って描かせると、意外とろうそくが燃えた後の酸素の量より二酸化炭素の量が多くなるといった勘違いをした図や絵を見ることが多くあります。おそらく、数字だけでは子どもたちの量的な印象を変化させることができていないのでしょう。そこで、実験結果の事実を使って描かせることで、子供たちの目で見えない部分についてのイメージをより具体的にすることができます。

もしかすると、火が消えるのは二酸化炭素が多くあるからと、子どもたちが勘違いするところにもつながるのかもしれません。ちなみに、ろうそくが燃え続けないのは、物が燃えるのに必要な酸素がないからですよね。

ろうそくが燃える前と燃えた後の、集気ビンの中の気体の様子

理科の学習の中で、子どもたちが言葉だけでなく図や絵を使って表現ができるようになると、自分の考えを表現するハードルが下がり、交流しやすくなります。そこに、一人一台のタブレット端末が加わると、ノートやワークシートに描いたものを写真で撮って提示したり、スライドショーのようにしたりすることができ、より交流が活発になります。

理科を担当することになって、内容を捉えさせることに目が向きがちですが、子どもたちが目の前の自然事象をどのように捉えているかを表現させることが大事です。言葉だけでは表現が難しい子どもたちも多くいるので、図や絵を用いて表現させることから始めてみませんか。

「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
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執筆者プロフィール
塩盛秀雄●しおもり・ひでお 埼玉大学教育学部附属小学校教諭/理科を中心に日々実践研究を行う。本学教育実習をはじめ、埼玉県教育委員会による埼玉県小学校教育課程実践事例などに携わり、埼玉県内の理科教育の振興に力を注いでいる。
主な著書に「これからはじめる“GIGA”全学年×1人1台端末×活用事例小学校理科3・4年」(日本標準)、「1年間まるっとおまかせ!小3担任のための学級経営」(明治図書)等がある。

寺本貴啓先生

<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。

イラスト/難波孝

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