長時間労働 【わかる!教育ニュース#22】

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長時間労働 【わかる!教育ニュース#22】

先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第22回のテーマは「長時間労働」です。

文部科学省が教員の勤務時間管理を厳しく要請

過酷な長時間労働はどんな理由でも、許されるものではありません。でも、学校では長らくまかり通ってきました。「働き方改革」が唱えられる今も、浸透しているとは言いがたいのが現実でしょう。

そんな状況に業を煮やした文部科学省がこのほど、改革の徹底を求める通知を、各教育委員会の教育長宛に出しました(参照データ)。長時間労働が依然絶えず、自治体や学校で取組に差があると指摘し、2023年度中の対処を促したのが特徴です。

要請したのは、勤務時間管理の徹底、改革の進捗状況の公表、学校や教員が担う業務の分担の明確化、ICTを活用した校務の効率化の4点。とりわけ勤務時間の管理には、厳しく臨んでいます。

まず、在校時間の上限の明示。文科省は20年に、教員の在校時間の上限を各自治体の条例や規則に盛り込むよう求めました。けれど、直近の調査ではいまだに「整備は検討中」と見通しが立っていない教委が、都道府県で10.6%、市区町村で21.9%。通知では23年度中の対処を求めるとともに、反映していない教委名を公表する可能性にも言及しました。

タイムカードなど客観的な手段での勤務実態の把握も、23年度内に全教委で始めるよう念押ししています。学校と保護者の間で、欠席や遅刻連絡、学校からの日常的なお便りにICTを活用しているのが半数にとどまっているため、デジタル化で教員と保護者双方の負担を軽くすることも勧めました。

規則や条例で勤務時間の上限を示さない教委を公表

文科省は教員の時間外勤務(残業)に「1か月で45時間以下」「1年間で360時間以下」という目安を示しています。ところが昨年、教委に行った調査で、4〜7月を平均した1か月の残業が「45時間以下」の割合は、小学校で63.2%。19年の51.5%から改善したとはいえ、4割近くが文科省の目安を超えています。過労死ラインとされる月80時間超も、4.4%ありました。

規則や条例で勤務時間の上限を示さない教委を公表するという「罰」には、文科省の本気度の強さを感じます。でも、改善できていないと糾弾するだけでは立ちゆかなくなるかもしれません。「罰」を逃れようと、嘘の報告をすることもあり得るからです。

勤務実態をタイムカードなどの客観的な手段で把握している市区町村教委は93.3%で、「100%」ではありません。カードを使っていても、正しく申告されているとも限らないでしょう。

そもそも、長時間労働がなくならないのは、働き方改革に否定的だからでも、怠けているからでもなく、「仕事」が減らないからではないでしょうか。あるいは「仕事」の量に見合った人手を、確保できていないからかもしれません。事態の打開に、現場が「変えよう」という意識で自発的に動くのは大前提。一方で、自治体や学校ごとの事情を踏まえ、現場と国それぞれがするべきことを考える必要もあります。

参照データ
▽文部科学省
https://www.mext.go.jp/content/20230203-mxt_zaimu-000027412_1.pdf

教科担任制【わかる!教育ニュース#23】はこちらです。

執筆/東京新聞記者・中澤佳子

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