保護者対応に活かすカウンセリングのスキル③―怒りや要求が強い保護者への対応編―【ストレスフリーの教室をめざして #53】

第2回では「不安が強い保護者への対応」を取り上げ、保護者に安心感を届けながらも教師が抱え込みすぎない対応のあり方を考えました。今回は第3回として、「怒りや要求の強い保護者への対応」をテーマにします。保護者対応の中でも、教師が最も緊張しやすく、対応後の消耗感も大きいのがこのタイプではないでしょうか。強い口調で訴えられたり、学校や教師への不満をぶつけられたりすると、教師の側も防御的になりやすく、多くのエネルギーをつかいます。しかし、保護者の怒りの背景にも、保護者なりの思いや不安が存在していることがあります。今回は、強い感情に巻き込まれすぎず、それでも相手を理解しようとする姿勢を保ちながら、学校としての立場を丁寧に伝えるための視点を整理していきます。
執筆/埼玉県公立小学校教諭・春日智稀
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目次
怒りや要求が強い保護者とは、どんな保護者か
保護者の中には、話し合いの場で強い怒りを表したり、学校の対応に対して厳しい要求を突きつけたりする方がいます。「どうしてもっと早く連絡してくれなかったのですか?」、「先生はうちの子のことをちゃんと見ているんですか?」、「納得できません!」、「今すぐ対応してください!」こうした言葉、一度はいただいたことがあるのではないでしょうか。
こうした保護者は、教師にとって特に対応が難しく感じられる存在です。なぜなら、相手の言葉が強いほど、教師の側にも「責められている」、「否定されている」という感覚が生まれやすく、冷静さを保つことが難しくなるからです。教師もまた感情をもつ人間ですから、強い怒りを向けられれば、身を守ろうとして反論したくなったり、正しさを証明したくなったりするのは自然なことです。
しかしここで大切なのは、表面に見えている「怒り」だけを相手の本質だと捉えないことです。怒りは、しばしば「二次感情」と言われます。その背景には、不安や子どもを守りたい必死さなど、別の感情が隠れている場合があります。つまり、怒りや要求の強さの背景には、「このままでは困る」、「わが子を守りたい」、「学校にきちんと動いてほしい」という切実な思いがあるのです。
もちろん、中には学校に対して過剰な要求をしたり、教師個人に感情をぶつけてきたりする場合もあります。そのようなときは、すべてを理解しようとしすぎて教師が心身を消耗する必要はありません。最初の段階では、「怒っている人」ではなく、「何かを強く訴えざるを得ないほど追い詰められている人かもしれない」という視点をもつことが、対話の入口として重要です。
怒りの背景を見立てることが対応の第一歩
不安が強い保護者の根底には、多くの場合、「わが子を守りたい」という強い気持ちがあります。学校生活は家庭から見えにくい部分が多く、保護者にとっては、見えない場所で子どもがどう過ごしているのか分からないこと自体が不安の原因になります。教師にとっては日常の一コマでも、保護者にとっては「知らされていないこと」「分からないこと」が積み重なることで不安が膨らみやすいのです。
また、保護者自身のこれまでの経験が影響していることもあります。保護者自身が子どもの頃に学校でつらい思いをしていた、過去に学校とのやりとりで苦労した、家庭の中で今さまざまなストレスを抱えている、子どもの発達や健康のことで継続的な心配がある、などの背景があると、学校に求めるハードルは自然と高くなるでしょう。つまり、今教師の前に現れている不安は、その場だけで生まれているものではない場合も多いのです。
だからこそ教師には、「この保護者はなぜこんなに不安なのだろう」と一歩引いて考える視点が必要です。もちろん、すべてを理解しきることはできませんし、保護者の内面を勝手に決めつけることも避けるべきです。しかし、表面的な言動だけを見て「また心配している」「過敏すぎる」と受け止めるのと、「子どもを守りたい気持ちがとても強いのだろう」と捉えるのとでは、教師の対応は大きく変わります。
