生成AI時代のシン・学級経営③―情報を確かめる力を育てる―【ストレスフリーの教室をめざして】

前回の記事では、生成AI時代だからこそ育てたい「問いを立てる力」について考えました。生成AIは、質問を入力すれば瞬時に答えを返してくれます。だからこそこれからの子どもたちには、「何を知りたいのか」「なぜそう考えるのか」「本当にそうなのか」と問う力が必要であると整理しました。
今回は、「情報を確かめる力を育てる」というテーマについて考えていきます。
生成AIは、非常に自然で整った文章を生成することができます。大人が読んでも「もっともらしい」と感じる文章を、短時間で作成してくれます。しかし、ここに大きな落とし穴があります。生成AIの答えは、いつも正しいとは限りません。時には、事実と異なる内容をいかにも正しい情報のように出力することがあります。こうした現象は「ハルシネーション」と呼ばれ、大人の間でも時に大きな問題となることがあります。
そこで本記事では、生成AI時代に必要となる情報モラルやファクトチェックの力について、小学校の教室でどのように育てていけるかを具体的に考えていきます。
執筆/埼玉県公立小学校教諭・春日智稀
目次
生成AIの答えは、なぜうのみにしてはいけないのか
そもそも生成AIは、答えを導くためにあらゆる膨大なデータを学習し、その特徴を捉えたり、パターン化したりして答えを生成しています。さらに生成AIは、こちらの問い(プロンプト)に対して非常に自然な文章で答えてくれます。文章の形が整っているため、読む側はつい「正しそうだ」と感じてしまいます。これは生成AIの特性上、ユーザーの意図に沿うような答えを出す設計になっていることが要因として考えられます。先述のハルシネーションも、ユーザーが期待する回答を出すために、生成AI自らが虚構の事実を作り上げていることから生じる場合があります。
しかし、文章が整っていることと、内容が正しいことは同じではありません。
これは生成AIに限った話ではなく、インターネット上には、正しい情報もあれば、誤った情報、不確かな情報、古い情報、誰かの意見にすぎない情報もあります。写真や動画でさえ、加工や編集によって事実とは異なる印象を与えることがあります。つまり、子どもたちはすでに「情報があふれる社会」の中で生きていて、私たち教師はこれまでも情報を適切に取捨選択する力を指導してきました。
例えば国語科では、筆者の主張と根拠を読み取ります。社会科では、資料を比較したり時系列をさかのぼったりして事実を考えます。理科では、観察や実験をもとに考察します。総合的な学習の時間では、調べた情報を整理し、自分の考えとしてまとめていきます。つまり、情報を確かめる力は、生成AI時代になって突然必要になったものではありません。普段の教科教育の中でも、十分に指導する機会があるのです。
しかし生成AI時代には、この力をより意識的に育てる必要があります。なぜなら、生成AIは「分かりません」と言わずに、もっともらしい答えを返してしまうことがあるからです。子どもがその答えをそのまま受け取ってしまえば、誤った理解につながる可能性があります。
だからこそ、子どもたちには次のような力を育てたいものです。
①だれが言っているのかを確かめる力(発信元の確認)
②どこに書いてあるのかを確かめる力(出典の確認)
③ほかの資料でも同じかを確かめる力(複数の資料の比較)
④事実と意見を分ける力(区別する力)
⑤自分の言葉で説明する力(言い換える力)
このような力こそ、生成AI時代の学級経営で大切にしたい力です。
情報モラルは「禁止」だけでは育たない
生成AIやインターネットの話になると、私たちはつい「使ってはいけません」「個人情報を書いてはいけません」「そのまま写してはいけません」といった禁止の指導をしたくなります。もちろん、禁止すべきことは明確に伝える必要があります。特に、個人情報を入力しないこと、人を傷つける使い方をしないこと、出典を示さずに写してはいけないことなどは、はっきりと教えるべきです。
しかし、「自分が初めて自転車に乗ったときのこと」を思い出してみてください。はじめは転んだりうまく乗れなかったりしたでしょう。それでも、一生懸命練習を繰り返すことで自由に乗れるようになり、そこで初めて「自転車は原則道路の左側を走る」「下り坂は結構スピードが出るんだな」「雨の日はブレーキが効きにくいな」などといった交通ルールや、乗ってみて分かる微妙な感覚を学ぶことができたはずです。言って聞かせただけでは、ほとんど分からないでしょう。これは自転車に限らず、料理でも、水泳でも、同じはずです。
これと同じで、情報モラルは「禁止」だけでは十分に育ちません。子どもに必要なのは、「なぜそれが危ないのか」「どうすれば安全に、正しく情報と付き合えるのか」を体感的に理解することです。これまでの記事でも確認したように、生成AIそのものを使わせることは利用規約に抵触する可能性があるため推奨されませんが、今やインターネットはほとんどの小学生が利用するでしょう。実際にインターネットを使いながら、こうしたことを指導していく必要があります。
例えば、「個人情報を入力してはいけません」と言うだけでは、子どもはそれをただの禁止事項として受け止めるかもしれません。いわば机上の空論です。しかし、「名前や住所、顔写真、学校名、友だちのことなどは、一度外に出ると自分では取り戻せないことがある」と具体的な事例を基に伝えると、なぜ守る必要があるのかが見えてきます。
また、「そのまま写してはいけません」と言うだけでは、子どもは「ばれなければいい」と考えてしまうかもしれません。しかし、「調べた情報を自分の言葉で説明できるようになることが学びである」「最近ではコピーしたかどうかが分かる機能も開発されている」と伝えれば、写すことと学ぶことの違いやリスクが分かってきます。
このように生成AI時代の情報モラルは、単に「危ないからやめよう」という指導ではなく、「情報をどう扱えば、自分や相手を守りながら学びに生かせるか」を考える指導であるべきでしょう。
