生成AI時代のシン・学級経営①―これからの教室は生成AIとどう向き合うか―【ストレスフリーの教室をめざして #55】

「生成AI」という言葉を、教育現場でも耳にする機会が増えてきました。文章を作る、要約する、アイディアを出す、画像を生成する、質問に答える……。最近では、プレゼンテーションや会議資料なども生成AIを活用する実践が報告されています。こうした機能をもつ生成AIは、もちろん学校だけでなく、私たち人間の生活や仕事の中に急速に浸透しています。
一方で、小学校の教室で生成AIをどのように扱うかについては、慎重に考える必要もあるでしょう。特に重要なのは、小学生が生成AIを自由に直接使うことを前提にしないという点です。多くの生成AIには年齢制限や保護者の同意に関する規約がありますので、児童が個人で利用することは現状認められていません。また、個人情報の入力、誤情報、著作権、思考の外部化、依存的な使い方など、教育上配慮すべき点も少なくありません。
こうしたことを踏まえ本記事からは、「これからの小学校の教室は生成AIとどう向かうか」という問いについて、様々な角度から全5回にわたってお届けします。第1回では、まず生成AIをめぐる学校現場の現状を整理し、小学校教師がどのような立ち位置で生成AIと向き合えばよいのかを総論的に考えていきます。
執筆/埼玉県公立小学校教諭・春日智稀
目次
生成AIと学校
まず、学校現場における生成AIの位置付けについて確認しましょう。文部科学省(2024)「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」では、主に次のような内容が示されています(下線・太字は筆者)。
基本的な考え方
- 生成AIを有用な道具になり得るものと捉え、出力を参考の一つとして、リスクや懸念を踏まえた上で、最後は人間が判断し、責任を持つことが重要
- 学習指導要領に定める資質・能力の育成に寄与するか、教育活動の目的を達成する観点から効果的であるかを吟味した上で利活用
- 学びの専門職としての教師の役割が一層重要
情報活用能力の育成強化
- 生成AIの仕組みの理解、学びに生かしていく視点、近い将来生成AIを使いこなすための力を、各教科等の中において意識的に育てていく姿勢は重要
- 生成AIが社会生活に組み込まれていくことを念頭に、情報モラルを含む情報活用能力の育成を一層充実させていくことが必要
教職員が校務で利活用する場面
- 教職員自身が新たな技術に慣れ親しみ、利便性や懸念点を知っておくことは、児童生徒の学びをより高度化する観点からも重要
- 生成AIの仕組みや特徴を理解した上で、生成された内容の適切性を判断できる範囲内で積極的に利活用することは有用
児童生徒が学習活動で利活用する場面
- 発達の段階や情報活用能力の育成状況に留意しつつ、リスクや懸念に対策を講じた上で利活用を検討すべき。その際、学習指導要領に定める資質・能力の育成に寄与するか、教育活動の目的を達成する観点から効果的であるかを吟味することが必要
- 「生成AI自体を学ぶ場面」、「使い方を学ぶ場面」、「各教科等の学びにおいて積極的に用いる場面」を組み合わせたり往還したりしながら、生成AIの仕組みへの理解や学びに生かす力を高める
- この内容を要約すれば、「将来児童生徒が生成AIを上手に利活用することができるように、教職員自身が良さや課題を把握し、教育活動の目的を達成するために指導していくことが大切。ただし、最後は人間が判断し、責任を持つ。」と理解してよいでしょう。つまり国としても、児童生徒が近い将来に生成AIを上手に利活用するための力を育むことは重要であると捉えていることが分かります。
生成AI時代のシン・学級経営
特に小学校では、生成AIの扱いに慎重さが求められると言えるでしょう。小学生は、情報の信頼性を判断する力や、自分の個人情報を適切に守る力、出力された文章を批判的に読む力がまだ発達途上にあります。生成AIの回答は、非常にもっともらしく見えることがあります。しかし、もっともらしく見えることと、正しいことは同じではありません。だからこそ、「AIが言ったから正しい」と受け止めてしまうことには危うさがあります。実際、生成AIによる誤回答や偽情報は「ハルシネーション」と呼ばれ、時には大人でも騙されてしまう場合があります。
一方で、生成AIを完全に遠ざければよいわけでもありません。子どもたちは、これから生成AIが当たり前に存在する社会を生きていきます。だからこそ私たちは、全く新しいこと教えるのではなく、これまでも大切に指導してきたであろう、「情報とどう向き合うか」「便利な道具とどう付き合うか」「自分で考えるとはどういうことか」などという力をより一層育てていく必要があると言えます。
つまり筆者の考える生成AI時代の学級経営とは、「生成AIがある社会でも人間らしく学び、人と関わり、自分の頭で考えるための教室づくり」です。
