保護者対応に活かすカウンセリングのスキル②―不安が強い保護者への対応編―【ストレスフリーの教室をめざして #52】

個人面談などで、特に教師が難しさを感じやすいのが、「不安の強い保護者」への対応ではないかと思います。些細な出来事にも敏感に反応して、「大丈夫でしょうか?」と何度も確認したり、先のことまであれこれと心配したりします。これにどこまで答え、どうしたら安心してもらえるのか、今回は考えていきたいと思います。
前回の保護者対応のカウンセリングスキル・第1回「総論」では、保護者対応にカウンセリングの視点が必要な理由について整理しました。保護者対応では、事実を伝える前に、まず相手の感情や背景を理解しようとする姿勢が重要であること、そして教師がカウンセリングの基本的なスキルを保護者対応に活かしていくことが大切です。
執筆/埼玉県公立小学校教諭・春日智稀
目次
不安が強い保護者とは、どんな保護者か
不安の強い保護者に対応するとき、教師が誠実に応えようとすればするほど、かえって負担が大きくなることがあります。また、その場を収めようとして「大丈夫です」「様子を見ましょう」と端的に返してしまうと、保護者は十分に安心できず、何度も同じ不安を訴えることにもなりかねません。
「不安が強い保護者」とは、単に「心配性」ということでもありません。子どもの表情や言葉、友達関係や学習状況のちょっとした変化にも敏感に反応し、それを見過ごすことができず、確認や相談という形で学校にアプローチしてくる保護者のことを指します。
例えば、子どもが「今日、あまり友だちと話せなかった」と家でつぶやいただけで、「クラスで何かあったのでしょうか」と心配になってしまう保護者がいます。少し元気がなかっただけで、「いじめではないでしょうか」「先生は気づいていますか?」と不安を訴えてくることがあります。あるいは、「今は特に問題はないけれど、これからトラブルになるのではないか」「このままで大丈夫なのか」と、まだ起きていないことについて先回りして心配する場合もあります。
このような保護者は、教師から見ると「そこまで心配しなくても」と感じることもあるかもしれません。しかし、保護者本人にとっては、それが切実な不安です。子どもの毎日を守りたい、つらい思いをさせたくない、手遅れにしたくないという思いが強いからこそ、少しの変化にも大きく心が動くのです。
不安が強い保護者には、いくつかの特徴が見られます。子どもの様子を細かく知りたがる、連絡帳や電話で何度も確認する、「先生はどう思いますか」と判断を求める、「もし〜だったら」と先の不安を話す、といった点です。中には、相談しているというより、安心をもらいに来ているように感じられることもあるでしょう。
こうした保護者の対応で大切なのは、「面倒な保護者」「心配しすぎる保護者」といった見方で固定しないことです。保護者の行動だけを見ると重く感じられることがありますが、その背景を丁寧に見ていくと、別の姿が見えてきます。
不安の背景には、「子どもを守りたい」という思いがある
不安が強い保護者の根底には、多くの場合、「わが子を守りたい」という強い気持ちがあります。学校生活は家庭から見えにくい部分が多く、保護者にとっては、見えない場所で子どもがどう過ごしているのか分からないこと自体が不安の原因になります。教師にとっては日常の一コマでも、保護者にとっては「知らされていないこと」「分からないこと」が積み重なることで不安が膨らみやすいのです。
また、保護者自身のこれまでの経験が影響していることもあります。保護者自身が子どもの頃に学校でつらい思いをしていた、過去に学校とのやりとりで苦労した、家庭の中で今さまざまなストレスを抱えている、子どもの発達や健康のことで継続的な心配がある、などの背景があると、学校に求めるハードルは自然と高くなるでしょう。つまり、今教師の前に現れている不安は、その場だけで生まれているものではない場合も多いのです。
だからこそ教師には、「この保護者はなぜこんなに不安なのだろう」と一歩引いて考える視点が必要です。もちろん、すべてを理解しきることはできませんし、保護者の内面を勝手に決めつけることも避けるべきです。しかし、表面的な言動だけを見て「また心配している」「過敏すぎる」と受け止めるのと、「子どもを守りたい気持ちがとても強いのだろう」と捉えるのとでは、教師の対応は大きく変わります。

不安が強い保護者への対応に活かすカウンセリングのスキル
では、不安が強い保護者に対して、教師はどのように関わればよいのでしょうか。ここでは、第1回で整理したカウンセリングのスキルを軸に、特に大切にしたい対応を整理します。
カウンセリングスキル①「傾聴と受容」―まずは不安を受け止める―
最初に必要なのは、相手の不安をいったん受け止めることです。不安が強い保護者は、問題の解決以前に、「この不安を分かってもらえるか」「軽く扱われないか」を気にしています。そこで教師がすぐに「大丈夫です」「問題ありません」と返すと、保護者は安心するどころか、「ちゃんと分かってもらえていない」と感じることがあります。
ここで活用したいのが、「傾聴と受容」のスキルです。例えば、
「それは心配になりますよね」
「〇〇が気になっておられるのですね」
「そう感じられたのですね」
といった言葉で、まず気持ちを受け止めます。
ここで大事なのは、不安の内容に全面的に賛成することではありません。例えば、いじめが起きていると断定できない場面でも、「いじめかもしれませんね」と同調する必要はありません。しかし、「そう感じるくらい心配なのですね」という気持ちの部分は受け止めることができます。この違いはとても大きいものです。
カウンセリングスキル②「明確化」―不安の中身を整理する―
不安が強い保護者の話は、「気持ち」が先行してしまうため、内容が広がりやすいことがあります。「最近元気がない」「友だちとうまくいっているのか心配」「勉強も大丈夫か不安」「このままでよいのか分からない」など、いくつもの心配が混ざっていることも少なくありません。そこで必要になるのが、明確化です。
明確化とは、相手の話を整理し、「相手の心の中にぼんやりとあるけれど言語化されていない思いや感情」をはっきりさせることです。
例えば、
「今一番心配なのは、友だち関係のことですね」
「つまり、最近の表情の変化が気になっておられるのですね」
「学習面そのものより、学校での気持ちの面が心配なのですね」
と返します。
このように整理されると、保護者自身も「自分は何を一番心配していたのか」に気づきやすくなります。教師にとっても、どこに焦点を当てて応答すればよいかが見えやすくなります。
カウンセリングスキル③「アサーティブな伝え方」―見通しを示し、学校としての対応を伝える―
不安が強い保護者にとって、今の説明と同じくらい大切なのが「これからどうなるのか」「学校は何をしてくれるのか」という見通しです。不安は先が見えないと強くなります。ここで必要になるのが、アサーティブな伝え方です。ここでのアサーティブな伝え方とは、「相手を尊重しながらも、学校としてできること・見ていくことを明確に伝えること」です。
例えば、
