小2算数「かけ算(3)」指導アイデア(3/6時)《簡単な場合の2位数と1位数の乗法》

執筆/東京都荒川区立第一日暮里小学校主幹教諭・石川大輔
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一、東京都目黒区立八雲小学校校長・長谷豊

目次
単元の展開
第1時 九九表をつくり、九九表からさまざまなかけ算のきまりを見付ける。
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第2時 九九表から見付けたきまりを発表し合い、かけ算の掛ける数と積関係や交換法則、分配法則をまとめる。
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第3時(本時)簡単な場合の被乗数が2 位数のかけ算について、九九表を基に、学習してきたかけ算の性質やきまりを用いて答えの求め方を考える。
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第4時 九九を活用して、ものの数の求め方を、かけ算を用いて解決できるように工夫して考える。
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第5時 比較量を求めたり、図を見て基準量の何倍かを考えたりし、「倍」についての理解を深める。
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第6時 学習内容の定着を確認するとともに,数学的な見方・考え方をふり返る。
本時のねらい
数量の関係に着目して、簡単な場合の2位数と1位数の乗法の答えの求め方を、乗法の性質やきまりを基に考えることができる。
評価規準
簡単な場合の2位数と1位数の乗法の答えの求め方を、乗法の性質やきまりを基に考え、説明している。
本時の展開
(表①を提示する)九九の復習です。唱えてみましょう。

一一が1、一二が2、一三が3、……一九が9。二一が2、……九八72、九九81。簡単です。
よくできましたね。では、(表①を横と縦に広げて表②の形にする)㋐、㋑、㋒に入る数は、いくつでしょう。

㋐、㋑、㋒に入る数はいくつでしょう。
えっ、九九表からはみ出ているよ。
㋐と㋑は4の段の続きだから……。
㋒は12の段? いくつか、分からないよ。
㋐、㋑、㋒に入る数を求める式は何でしょう。
㋐は、4×10です。
㋑は、4×12です。
㋒は、12×4です。
では、㋐、㋑、㋒に入る数が分かりますか。
どれも、九九にない式だから分かりません。
どうやって考えたら、答えが求められるかな。
㋐、㋑、㋒の式は、どれも九九にはありませんね。このような場合、どのように考えれば、答えが求められるでしょう。
九九よりも大きいかけ算の答えの求め方を考えよう。
見通し
一番答えが求められそうなのは、㋐、㋑、㋒のうち、どれですか。
㋐の4×10です。
最も答えが求められそうな式として、㋐の4×10が挙げられることが予想されます。この4×10の解き方から、既習の乗法の性質や乗法の意味、交換法則など、既習のかけ算のきまりを基に考えればよいことを押さえます。
※本時の学習を深めるためには、前時までにかけ算のきまりを知識・技能として習得しておくことが重要です。
答えは、いくつになりましたか。
40です。
どのように答えを求めたか、説明してください。
4の段は、かける数が1増えると、答えが4増えるから、4×9に4を足しました。

私は、4×10は4が10個分だから、4を10回足しました。

今まで学習したかけ算のきまりを使うと、計算できそうですね。では、㋑と㋒についても答えの求め方を考えてみましょう。考えた求め方は、九九表やノートに書きましょう。
※表②の形になった九九表を、紙、もしくはタブレットPCで配付する。考えは、この九九表やノートに書かせる。
自力解決の様子
A つまずいている子
九九を暗唱できなかったり、かけ算のきまりを理解していなかったりして、答えやその求め方を表やノートに書いていない。
どう考えたら、㋑や㋒の数を求められるのか分からないなぁ……。

B 素朴に解いている子
九九表を用いて答えを求めているが、かけ算の性質や意味、交換法則を根拠にした答えの求め方の説明が書けていない。
九九表に数を書いて考えてみよう。㋑は48で、㋒も48だ。

C ねらい通り解いている子
九九表や式、言葉を関連させて、かけ算の性質や意味、交換法則を根拠にした答えの求め方の説明と答えが書けている。
[㋑かける数と答えのきまり]4の段は、かける数が1増えると答えが4増えるから、4×12の答えは48だ。
[㋒同じ答えのきまり]12×4と4×12の答えと同じだから、12×4の答えは48だ。

学び合いの計画
自力解決ではAからCの子供のように、答えが求められない子供や根拠をもって多様に考えられる子供が存在します。このような子供たちがそれぞれ根拠を明確にもって説明できるように、全体の話合いの前にペアやトリオで説明し合う場を設定したり、全体検討である子供が説明したことを再現させたりします。
Aのような子供には、これまでに学習したかけ算の意味や性質をふり返らせながら表に数字を書き込ませます。
九九表に数を書き込む様子が見られたら、「これは、〇〇のきまりを使って考えているね」と考え方を価値付けたり、「どうして、この数を書いたの?」と問うたりして、根拠としたかけ算のきまりを意識させます。
Bのように、九九表に数を書き込む子供がいることが予想されます。このような子供は考えの根拠が不明確、もしくは、根拠を基に考えていても式や言葉で説明できない(書けない)ことが考えられます。このような子供に言葉や式で説明させるために、自力解決の途中や全体検討の前に、ペアかトリオで話し合う活動を設定します。
場合によっては、教師が「この数はどのように求めたのか、表に書き込んだり式を書いたりして説明してみて」と指示して子供の考え方を言語化させたり、「何のきまりを使って考えたのかな」と問うて、前時までに学習したかけ算のきまりをふり返らせ、自分の考えの根拠に気付かせたりしてもよいでしょう。
Cのような子供には、㋑も㋒も同じきまりを根拠にしている子供と㋑と㋒で違うきまりを根拠にしている子供や、見通しで出されていないきまりを根拠にして考えている子供がいることが予想されます。
前者の子供には「ほかのきまりを使って求められないかな」と問うて、多様な考え方を引き出します。説明し合う場では、「答えは教えずに、答えの求め方を説明しましょう」と指示します。
ノート例
A つまずいている子
B 素朴に解いている子
全体発表とそれぞれの考えの関連付け
まず、㋑について考えましょう。
田中さん
九九表に数を書いて考えました。

田中さんは九九表で、どのように考えて答えを求めたのでしょう。
鈴木さん
掛ける数と答えのきまりを使うと、掛ける数が1増えると答えが4増えるから、40の次は44で……。(かけ算の性質)
(説明の途中で止めて)今、鈴木さんが、掛ける数が1増えると答えが4増えると言ったけれど、本当にそうでしょうか。(44を指し示して)表で説明できる人はいますか。
掛ける数が10から1増えて11になると、答えは40から4増えて44になります。
今の説明を表にかいて説明できる人はいますか。
こういうことです。

鈴木さん、こういうことですか。
鈴木さん
そうです。だから44の次は、掛ける数がまた1増えるので、答えは4増えて48になります。
今の説明を、自分の表にかいて、隣どうしで説明してみましょう。
※隣どうしで自分の表にかき込んで説明する。
では、前の表で説明できる人はいますか。
さっきの掛ける数は11で、1増えた12のときの答えは、44から4増えて48になります。

表に書いたことを式にするとどうなりますか。
こうなります。

このような掛ける数と答えのきまりは、九九を超えた場合も成り立つのでしょうか。
㋒は4の段の続きだから成り立つと思います。
4×9は4を9個足すことで、㋐の4×10は4を10個足したということでした。4×11は4を11個足すということで、㋒の4×12は4を12個足すことだから、掛ける数が1増えると4増えています。
式にすると、こうなります。

九九のときと同じように、掛ける数が1増えると答えが4増えています。だから、九九を超えた場合も掛ける数と答えのきまりは成り立つと思います。
※このように、教師がつまずいている子供の疑問を代弁しながら、途中で説明を止めて続きを説明させたり、言葉で説明したことを表や式で説明させたり、ペアやトリオで説明を再現させたりするなどの手立てを講じ、つまずいている子供もともに学び合えるようにます。
㋑は、掛ける数と答えのきまりを使えば求められましたね。次に、㋒について考えましょう。
㋑と同じように、掛ける数と答えのきまりを使えば答えを求められそうです。
㋒は、掛ける数が1増えると答えが12増えるから、表にかくと、こうなります。(かけ算の性質)

式にすると、こうなります。(かけ算の性質)

山本さん
もっと簡単に答えを求められます。
どうやって答えを求めたのですか。
山本さん
同じ答えのきまりを使いました。4×12と12×4の答えは同じだから、4×12=48、12×4=48なので㋒は48です。(交換法則)
今、山本さんが説明したことを、隣どうしで説明し合いましょう。
本当だ。
山本さんのやり方は、どちらかの答えが分かっていれば、簡単に答えを求められるね。
私はほかの求め方で答えを求めました。
どんな求め方ですか。
段の答えを足すきまりを使いました。12×4の答えは、3×4と9×4の答えを足せば求められます。3×4=12と9×4=36なので、12+36=48。だから、12×4の答えは48になります。(分配法則)
全体発表では、多様な答えの求め方を発表させ、表と式、言葉を関連させながら子供の理解を図っていきます。多様な答えの求め方が子供から出されなかった場合は、教師から提示して考える場を設定します。また、答えの求め方が、かけ算のきまりを基に考えていることを板書し、価値付けます。

どのように考えれば、九九よりも大きいかけ算の答えが求められましたか。
掛ける数と答えのきまりを使ったら、答えが求められました。
同じ答えのきまりを使ったら、答えが求められました。
段の答えを足すきまりでも答えが求められました。
どの求め方も、かけ算のきまりを使っています。
かけ算のきまりを使って考えると、九九よりも大きいかけ算の答えが求められるのですね。
かけ算のきまりを使うと、九九よりも大きいかけ算の答えが求められる。
評価問題
九九ひょうにある㋓と㋔に入る数はいくつでしょう。入る数とそのもとめ方をノートに書きましょう。
㋓ 5×12 ㋔12×5

子供に期待する解答の具体例
※ここには書いていませんが、分配法則を用いた求め方でもよいでしょう。
〈例1〉㋓から考える
・㋓かける数と答えのきまりを使うと

だから、㋓は60
・㋔同じ答えのきまりを使うと、5×12と12×5の答えは同じだから
5×12=60
12×5=60
だから、㋔は60
〈例2〉㋔から考える
・㋔かける数と答えのきまりを使うと
12×4=48
12×5=60
だから、㋔は60
・㋓同じ答えのきまりを使うと、12×5と5×12の答えは同じだから
12×5=60
5×12=60
だから、㋓は60
かけ算のきまりを基に、答えを求めているかどうかを評価します。根拠とするきまりは、どれを使っていてもよいでしょう。書くことが苦手な子供には、九九表に書き込むことを指示し、きまりを根拠にした記述が見られていればよしとします。場合によっては、インタビューをしてどのように求めたのかを話させてもよいでしょう。早く問題を解き終わった子供には、九九表の空いているマスに数字を書き込ませ、考えを深めさせます。
感想例
- かけ算のきまりを使うと、大きな数のかけ算もできることが分かりました。
- 大きな数のかけ算でも、九九で見付けたきまりを使えることが分かりました。
- 私が九九表で考えたことは、かけ算のきまりを使っていたことが分かりました。
- ほかの大きな数のかけ算も、きまりを使って計算してみたいです。
- 九九とそのきまりを使えば、12×12みたいな計算もできそうです。
- 九九表の空いている所の数を全部書きたいです。
イラスト/横井智美
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