小2道徳「森の ともだち」指導アイデア

使用教材:「森の ともだち」(東京書籍)

執筆/千葉県公立小学校教諭・野木村遼太郎
監修/千葉県公立中学校校長・大舘昭彦、文部科学省教科調査官・浅見哲也

授業を展開するにあたり

この時期の二年生の子供は、学校生活にも慣れ、交友関係が広がってきています。しかし、まだ自分本位の考え方から抜けきれない子も多く、友達の立場を理解したり、自分と異なる考えを受け入れたりすることが難しいことも少なくありません。

そのため、些細なことでけんかになってしまうこともあります。だからこそ、学級で生活を共にし、勉強したり遊んだり、困っているときに助けたり、心配したり励まされたりといったさまざまな経験を積み重ねることで、友達のよさや大切さを実感できるようにしていくことが重要です。

今回の授業では、森の動物たちが助け合い励まし合う姿に共感させ、学級の仲間として一人ひとりがよりよい友達関係を築くために、だれに対しても優しい気持ちで助け合っていこうとする心情を育てていきたいと思います。

教材について

「森の ともだち」は、わがままで乱暴なきつねのこんきちがおおかみにつかまってしまい、森の動物たちが力を合わせて助ける話です。

いじわるばかりするのでこれまであまり仲のよくなかったこんきちを助けるかどうかを森の動物たちが話し合う場面では、迷いの気持ちはあったものの、同じ森にすむ仲間だからこそ力を合わせて助けたいと決心した動物たちの気持ちに共感させたいのです。

さらに助けてもらったのに自分のことしか考えなかった恥ずかしさに涙するこんきちの気持ちを考えることを通し、どんな仲間にも手を差し伸べることでお互いの心が通じ合うきっかけになることに気付けるようにしていきたいと考えます。

子供の授業後の姿を明確にする

本校では、内容項目の分析をしっかりと行い、そこから授業のねらいを設定していきます。まず、各学年に設定されている内容項目の指導内容を書き出し、キーワードになりそうな言葉を子供が分かるような簡単な言葉に置き換えます。

そこから、子供の実態を踏まえて、授業前の子供の姿と授業後に求めたい子供の姿を書き出します。このとき授業後の変容を期待するためには、子供に新たな学びがあることが大切です。

そして、この授業後の子供の姿こそが本時の評価につながっていきます。つまり、授業後の姿を教師がどれだけ具体的にイメージしてねらいを設定できるかがとても重要になります。逆に言えば、それによりねらいからぶれずに授業を展開していくことができます。

▼資料1「内容項目からねらいを設定するまでの流れを示した価値分析シート」

資料1「内容項目からねらいを設定するまでの流れを示した価値分析シート」

▼ワークシート(低学年用)

ワークシート(低学年用)

資料やワークシートのPDFはこちらよりダウンロードできます

実際の授業展開

教材名
森の ともだち

ねらい
「森のどうぶつたち」と「こんきち」の気持ちを考えることを通して、助け合うことのよさに気付き、どんな友達とでも、仲よく助け合おうとする態度を育てる。

内容項目
B(10) 友情・信頼

準備するもの
・ワークシート
・場面絵①②③

ワークシートや資料のPDFはこちらよりダウンロードできます
小二道徳学習プリント「森の ともだち」

指導の概略(板書計画例)

指導の概略(板書計画例)

導入

①価値への方向付け。

  • 助けてもらった経験について話し合うことで、ねらいとする道徳的価値へと方向付けをする。
  • 「どうして助け合うのか」と問い返し、テーマを提示する。

展開1

②教材を範読する。

  • どんな動物が出てきて、どんなことが起きたかを考えながら聞くように意識させる。
  • 範読した後、意図的に沈黙の時間を設け、子供が頭の中を整理する時間をつくる。

展開2

③内容を把握する。

  • こんきちの人物像の確認をする。
  • 森の動物たちのこんきちに対するうれしい気持ちが、だんだんと「嫌だなぁ」という気持ちに変わってきたことを確認する。

展開3

④心情メーターを使い、気持ちを視覚化する。

  • こんきちの叫び声を聞いたとき、森の動物たちは助けようかどうしようかを相談していることを確認し、自分ならどうするかを心情メータ―に記入する。

展開4

⑤役割演技を行う。

  • 心情メーターを基にして、演者を4人選び、役割演技を行う。観客は、どんな話が出ていたのかに注意しながら見るようにする。
  • 演技後、観客→演者の順に意見を聞き、迷いながらも助けようとしたことを確認する。

展開5

⑥中心発問「なきだしたとき、こんきちはどんな気もちだったのだろう」

  • 自分勝手な考えを反省している発言や、助けてくれたことに対する感謝の気持ちを取り上げる。
  • これからの行動を考えた発言に注目し、はじめのこんきちと現在のこんきちを比べ、どうして変わったのかを問い返す。

終末

⑦ふり返り。

  • 授業での学びをワークシートに記入させる。
  • 書いたことを発表させ、まとめの板書に追加する。

ここがアクティブ! 授業展開の補足説明

話合いを活発にするために

子供たちに意欲的に話し合ってもらいたいときに大切なことはいくつかありますが、道徳の授業においてはまず第一に、「自分の考えをもつ」ということがとても大切だと考えます。今回の授業では、「森の動物たちがおおかみの叫び声を聞いて相談する場面」を話し合わせたいと考えました。

そこで、叫び声を聞いたときの森の動物たちの「たすけたいメーター(心情メーター)」を書き、気持ちを視覚化しました。さらに、それを基にまずは隣同士のペアで意見交換を行いました。子供一人ひとりが、自分の意見をもつことや、ペアでの意見交換を通して安心感をもつことが活発な話合いには大切です。

役割演技の演者の選出

役割演技を行う際に注意しなくてはいけないことは、演者がその役割をきちんと取得しているかです。「やりたい人」で選ぶのは、ねらいに迫れなくなることが心配されます。今回の授業では、4人の演者を選出しました。

選出する際に参考にしたものが、子供が書いた「たすけたいメーター」と「ペアでの意見交換の発言内容」です。机間指導をする際に、メーターの様子と意見交換の内容を確認しながら、この子供はどちらの気持ちに強く共感しているか、それとも揺れ動いているのかなどを確認しました。

助けようという気持ちが強い子供と、あまり強くない子供をそれぞれ二人ずつ選び、役割演技をさせることで、森の動物たちの迷いについて体験的に確認することができました。役割演技を効果的に活用するためには、監督者たる教師の役割が非常に重要です。

授業をするうえでの注意点 ・ ポイント解説

役割演技を始める前には、まず約束を確認することが大切です。演者のことを笑ったり、冷やかしたりは絶対にさせてはなりません。

また観客には、どこを見るのか、「視点」を示すことが大切です。また、登場人物になりきって演技をするため、始める前にしっかりと場面を設定し、演技が終わったら、必ず役割解放をしてあげることが重要です。

教材の内容によっては、だれか一人が悪者になるなどのネガティブな内容もあるため、どうしてもその教材で行う場合は、椅子や机などの人間以外のものを役と見立てて行うなど配慮が必要です。

役割演技をした後は全体でシェアリングを行い、たくさんの気付きをクラスの子供全員で確認し、その中から新たな学びを得て、道徳性を養っていくことが大切です。

教科調査官からアドバイス

文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・浅見哲也

道徳科の授業を構想するとき、活用する教材が中心になると、読み物教材の登場人物への心情理解のみに終始する授業になることがあります。

道徳科は、内容項目に含まれる道徳的価値を手がかりとしながら子供の道徳性を養うことが目標であることから、野木村先生のように、まず、内容項目を発達の段階を踏まえてしっかりと理解し、授業後の子供の姿をイメージしながらねらいをしっかりと設定することが重要です。

そのねらいを達成するために、読み物などの教材を活用していると言えるのです。また、教材と同様に指導方法も授業構想の先に立つものではありません。子供たちにとって道徳性を養うために大切な学習を考え、その学習をより効果的に行うために指導方法を工夫します。

特に今回の授業では役割演技を取り入れていますが、演じる子供への配慮など、すべてが教師の明確な意図の基に行われることで、多くの子供たちが授業のねらいに達することができるようになると言えるでしょう。

『教育技術 小一小二』2021年1月号より

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