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同僚性の育成に投資をしていますか?【赤坂真二「チーム学校」への挑戦 #77】

連載
赤坂真二の「チーム学校」への挑戦 ~学校の組織力と教育力を高めるリーダーシップ~

上越教育大学教職大学院教授

赤坂真二
チーム学校への挑戦

執筆/上越教育大学教職大学院教授・赤坂真二

教員のメンタルヘルス悪化が深刻化するなかで、学校現場では何が起きているのでしょうか。多忙化や複雑化する業務への対応に追われる一方で、職員室では同僚同士が支え合う余白そのものが失われつつあります。本来、教師を支えてきたはずの「やりがい」や「責任感」でさえ、ときに自らを追い詰める要因へと変わってしまう――そんな危うさも見え始めています。今回の赤坂先生の連載は、教員を孤立から守る「ソーシャルサポート」の重要性を手がかりに、校内研修を通じた同僚性の再構築と、支え合いが自然に生まれる学校組織のあり方について提案します。

職員室を覆う「高ストレス」の正体

「今日もまた、ため息とともに一日が終わる」。はつらつと働いている職場がある一方で、疲れが見え始めてくる頃ではないでしょうか。我が国における学校教員の精神的健康状態の悪化は、もはや個人の資質の問題として片付けられるレベルを超え、看過できない水準に達しています。文部科学省の調査(令和7年12月22日)によれば、精神疾患による休職者数は、令和5年の過去最多数からやや減ったものの高止まりの状態で、教職員のメンタルヘルスは、学校教育の根幹を揺るがす喫緊の課題となっていると言えるでしょう[i]。

八尋ら(2022)は、教員が抱えるストレスの要因を「内的要因」「外的要因」に分類して分析しています。内的要因とは、年齢や性格、教職経験年数に加え、その教員が抱く「理想の教師像」といった教育観や職務意識です。一方、外的要因とは職場内に起因するもので、具体的なストレッサー(ストレスの種)は、児童生徒との関係、保護者対応、さらには部活動指導や膨大な校務分掌など、多岐にわたります。教員のストレスの9割以上は、この外的要因によると報告されています。[ii]。

教員が心の支えとして大事にしていた教育観や職務意識が、知らず知らずのうちに自分自身を追い詰める刃となることがあるようです。かつて「聖職」としてのやりがいを支えていたはずの献身的な教師像が、現代の複雑化したニーズの中では機能しなくなり、やりがいのある仕事が一転して「ストレスフルな作業」へと変貌してしまうパラドックスが起こっているのかもしれません。この負担感が許容量を超えたとき、教員はバーンアウト(燃え尽き)という深い闇に飲み込まれていくのでしょう。

失われゆく「防波堤」

教員をバーンアウトから守るための「防波堤」として、古くからその重要性が説かれてきたのが「ソーシャルサポート」です。困難に直面したときに、同僚から「大変だったね」と情緒的な支えを受けたり、管理職から具体的な助言という道具的なサポートを得られたりすることは、教師の心の折れを防ぐ大きな力となります。

しかし、今の職員室において、この防波堤が崩壊しつつあることが近年のデータから明らかになりました。「OECD国際教員指導環境調査(TALIS)2024報告書のポイント」によれば、日本の教員の仕事時間は依然として調査参加国中で最長という記録を維持しています。しかし、単に「忙しい」だけではありません。深刻なのは、前回の2018年調査と比較して、「教員の相互信頼度」が調査参加国中で最も低下しているという事実です[iii]。

教員たちはあまりの多忙さに、隣の席で悩んでいる同僚に「大丈夫?」と声をかける余裕すら失っていないでしょうか。教材のやりとりや授業の見学といった、専門職としての高め合いも減少傾向にあり、職員室は「専門家が集うチーム」から、「個々がバラバラにタスクをこなす作業場」へと変質しているようです。相互信頼という「土壌」が枯れ果てた場所で、ソーシャルサポートという「花」を咲かせろという方が無理な話なのかもしれません。

「仕組み」としての校内研修:同僚性を再構築する

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