【木村泰子の「学びは楽しい」#50】新年度のスタートにこれだけは!
子どもたちが自分らしく生き生きと成長できる教育のあり方について、木村泰子先生がアドバイスする連載の50回目。今回は、先生から届いたメッセージをもとに、時間に追われる新年度の今だからこそ立ち止まって考えたいことをお伝えしていきます。(エッセイのご感想や木村先生へのご質問など、ページの最後にある質問募集フォームから編集部にお寄せください)【 毎月22日更新予定 】
執筆/大阪市立大空小学校初代校長・木村泰子

目次
学びの主語は子どもです!
新年度がスタートしましたね。
今、一日の学校生活の中で何を最上位において過ごしていますか。
スタートが肝心ですが、ルールを決めてきまりを守らせることが大事……などといったこれまでの学校文化を踏襲した手段を使っていないでしょうか。時間を守ることを強制しなくても、授業が楽しかったら勝手に始めるのが子どもです。
新年度のこの時期にいかに教員が子どもをコントロールできるかが勝負だなどと考えていませんか。確かにワクをつくり、そのワクに子どもをはめることが教員の仕事だと教えられていた時代はありました。しかし、時代は変わりました。
教員が主語と言われていた時代と同様のことをしていては子どもが育ちません。新年度がスタートした今は誰もが学び合える「環境(空気)」をつくることが優先です。すべての子どもが次の5つのことを全身で吸い込むことができる環境を子どもたちといっしょにつくれれば、すべての子どもの生き生きとした姿が先生たちの目の前にありますよ。
1.学校は楽しいところ
2.困ったら誰かが助けてくれる
3.いろんな友達がいることが当たり前
4.みんな違っていていいんだ
5.いつもいっしょが当たり前
次から次にきまりをつくっていかに守らせるかの手段に投じるエネルギーを、今こそ転換するのです。
子どもと一緒に「どうしたら誰もが学校は楽しいところって思えるかな?」の問いを出して、正解のない問いを問い続けるのです。子どもと対話を通して学び合う授業をしたくても、教科書の学習内容が多すぎて十分に指導する時間がとれないときは、私は間に合わない部分をプリントにして一斉授業式に何時間分をまとめて教えていました。そこには正解があるので、難しいことはありません。「授業時間ありき」ではなく「何を学ぶのか」を常に先生方が自分の頭で考えるのです。
「学びは楽しい」の読者フォームに10年目の教員の方から以下のようなメッセージが届きました。
子供を静かに移動させ、静かに聞かせる理由 「では、どうして生徒を教員のワクの中で管理するのでしょうか」について、私は理由の一つに、「時間がないから」があると思います。
学校は(社会もですが)時間にしばられています。昔よりもずっと多い授業時数とずっと多い事務業務に追われて先生自身も時間に追われています。当然子供に対しても、時間を守るよう厳しく指導します。おしゃべりをすると時間が延びます。だらだらします。子供の自然な姿は時間にしばられない姿です。本来はそうした子供の時間に合わせたいと思うことが多くあります。
私自身も時間が苦手なタイプです。時間に追われる仕事に疲弊します。余裕がありません。子供に十分寄り添う時間がありません。それでも子供に寄り添いたいと思う教師は多いはずです。
そのためには「捨てる」が大事と思います。木村先生の講演を聴かせていただいたことがあります。その時に「捨てたもの」の一覧を画面で見て感動しました。これらがなかったらどんなに心の余裕ができるだろうと思いました。「捨てる」そして「大事なことに時間を使う」ことができたらと思います。ただ、私には変える力がありません。「人のせいにせず自分から変えていく」ができていません。
全国のみなさん方の悩みを代弁していただいているように思います。職員室の空気が「ヒエラルキー」「前例踏襲」「同調圧力」で充満している中で、一人の教員に何ができるのかと悩み、大切なことがわかっている分だけ疲弊してしまう。そんな傾向が現在の学校現場に蔓延しているようにも思います。特に若い先生たちから教員の魅力を奪ってしまっている感があります。
教員の仕事の上位目標は「未来をつくる」ことです。大空小でよく言っていたのですが「みんなの給料は校長からもらっていないよ!地域住民の税金だよ。みんなが見るのは目の前の子どもだけ!」
相手を敵に回さず、自分のことは自分が決める
学校現場で時間を費やしているほとんどの業務が「未来をつくる」仕事につながっているでしょうか。この問いについて対話できる人を一人でも二人でも見つけてつながるのです。
点数で測れる「見える学力」を上位に置いているなら、今すぐ「学力観」を転換しましょう。
子どもたちがつくる「未来」のキーワードは「想定外」「多様性」「共生」です。よい点数を取っていればなりたい自分になれるなどという過去の正解は全く通用しません。そこで、大空小では「みんな」で4つの「見えない学力」を言語化しました。
人を大切にする力
自分の考えを持つ力
自分を表現する力
チャレンジする力
この「4つの力」が自分軸にしっかり培われていけば「自殺」「不登校」「いじめ」などの言葉は生まれないでしょう。
「自分のことは自分が決める」ことが当たり前になります。
また、これらの「見えない学力」は教員が教えられるものではありません。子ども同士の関係性の中でしか育ちません。先生たちの役割は大人の自分が「4つの力」をつける姿を子どもに見せることです。
正解なんてありません。この「学力観」の転換は職員室の中のたった一人の自分でもできることです。
まかり間違っても「子どもになめられたらあかん」という子どもとの関係性はつくらないように! 子どもは大人が思う以上に大人を観る力を本質的に備えています。
このコーナーでも何度も伝えていると思いますが、1秒先の未来は誰もわかりません。だからこそ正解のない問いを問い続ける力が不可欠なのです。教員は子どもと学びのパートナーになって、いっしょに「未来をつくる」のです。 その子がその子らしく、誰もが大切にされる社会をつくる大人に育っていくための学びのパートナーです。
どんな指導をしてもどんなテクニックを使っても学びのパートナーになれるものではありません。子どもを変える前に「大人の自分が変わる」だけです。これは誰にも指示されたり邪魔をされたりすることはありません。未来をつくるパートナーとして、今の自分をほんの少しアップデートする。そのための手段を「見えない4つの力」をつけることにチャレンジしてみませんか。
一人で組織を変えることは難しいかもしれませんが、自分を変えることはできます。
私自身も学校の組織文化を問い直すために走り続けなくてはと思わせていただいた読者の方からのメッセージでした。
学びは楽しいですよ。
〇新年度がスタートした今、教員のつくったワクに子どもをはめこむのではなく、誰もが学び合える「環境(空気)」をつくっていこう。
〇「未来」のキーワードは「想定外」「多様性」「共生」。未来を生きるために必要な「見えない学力」を育て、「自分のことは自分で決める」力をつけていこう。
〇子どもと教員はともに「未来をつくる」学びのパートナー。まずは教員自身が「見えない4つの力」をつけ、自分自身をアップデートしていこう。
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きむら・やすこ●映画「みんなの学校」の舞台となった、すべての子供の学習権を保障する学校、大阪市立大空小学校の初代校長。全職員・保護者・地域の人々が一丸となり、障害の有無にかかわらず「すべての子どもの学習権を保障する」学校づくりに尽力する。著書に『「みんなの学校」が教えてくれたこと』『「みんなの学校」流・自ら学ぶ子の育て方』(ともに小学館)ほか。
【オンライン講座】子どもと大人の響き合い讃歌〜インクルーシブ(共生)な育ちの場づくり《全3回講座》(木村泰子先生✕堀智晴先生)参加申し込み受付中! 大空小学校時代の「同志」お二人によるスペシャルな対談企画です。詳しくは下記バナーをクリックしてご覧ください。
