第57回 2021年度 「実践! わたしの教育記録」入選作品①(学級づくり部門)有松浩司さん(広島県竹原市立吉名学園)

特集
教育実践コンテスト「実践! わたしの教育記録」特集

報道の力で学校に笑顔の花を咲かせよう!

~5年生「ニュース番組作り」の取組~

広島県竹原市立吉名学園 有松浩司

1 はじめに

新型コロナウイルスの流行は、学校教育に大きな変化をもたらした。ペアやグループでの学習が制限され、教室では児童はほぼ正面を向いて、教師とのみ顔を合わせて授業を受けるのが基本となった。遠足や修学旅行、野外活動、運動会、学習発表会といった、児童にとってこの上ない楽しみであった行事も、残念ながら多くが中止を余儀なくされてしまい、生活科や社会科、総合的な学習の時間を中心に行われていた校外学習も、感染症予防対策として、ほとんど実施することができずにいる。かつては当たり前のように行われていた異学年同士の交流もほとんど行えない状況になり、教室からほとんど出ることもなく、ひたすら黒板と向き合って授業を受ける日々が続いている。こうした状況を受け、児童の笑顔は自然と減り、学校現場では以前のような活気や元気が失われつつある。
本実践は、こうした状況に危機感を感じた5年生児童が、総合的な学習の時間において、「報道の力で学校に笑顔の花を咲かせよう!」というスローガンの下、ニュース番組を作って各学年の活動や様子を紹介し、全校に笑顔を届けようとした取組である。本校では、以前は週に1回程度全校朝会を設け、その場で、各学年が授業で取り組んでいることなどを紹介し合っていた。国語科で学習した詩の音読、歌の発表、体育の技の発表、英語劇、プレゼンテーション等、各学年が工夫を凝らした発表を行うことで、他の学年・学級がどのような学習をしているのかを楽しく共有することができていた。しかし、感染症対策の一環として、全校で一同に集まることができなくなり、その結果、他の学年・学級がどのような学習をしているのかを知る手段が、全くといっていいほどなくなってしまったのである。そこで5年生児童が目をつけたのが、「報道」である。幸いにも、本校ではICT機器の整備が比較的進んでおり、各教室に1台ずつ電子黒板が整備されている。また、デジタルビデオカメラ、動画編集ソフトが内蔵されたパソコンもそれぞれ数台あり、これらをうまく活用して、自分たちが制作したニュース番組を各教室で視聴してもらい、集会活動に代わる「全校発表の場」を新たに設けようと考えたのである。
当然ニュース番組を制作するに当たっては、取材・撮影・編集等、多くの活動が伴う。そしてこれらの活動が、ほとんど児童にとって初めての経験である。教師にとっても、児童にとっても非常にハードルが高く、多くの困難を伴った取組であったが、学校全体を笑顔にするために、教師と児童が共にアイデアを出し合いながら取り組んだ実践である。その取組の具体を詳細に論じ、児童にどのような資質・能力が備わったのか、また残された課題は何か等について、整理していきたい。

2 単元の概要

(1)学年  第5学年
(2)教科・領域 総合的な学習の時間(全18時間)
(3)実施期間 令和3年1月〜3月
(4)単元の主なねらい
学校内の話題を取り上げて報道番組を制作し、情報を収集したり発信したりする上で必要な基礎的な知識や技能、思考力・判断力・表現力を高めるとともに、学校全体を笑顔を届けるという目標に向かって、最後まであきらめず、粘り強く課題に取り組む態度を育てる。
(5)単元を通して児童に獲得させたい資質・能力
①知識及び技能
・ニュース番組制作に必要な知識(用語、構成等)
・デジタルビデオカメラや動画編集ソフト等、ICT機器の基本的な操作の技能
②思考力・判断力・表現力等
・実際のニュース番組を比較したり分析したりして、その特徴を捉える力
・ニュース番組作りに必要な情報をインタビューや撮影等を通して収集する力
・集めた情報を整理・分析し、必要な情報のみを取捨選択する力
・視聴者により分かりやすく楽しく伝えるために、構成や細かい表現を工夫して伝える力
③学びに向かう力・人間性
・困難や失敗にもくじけず、最後までやり切ろうとする力
・友達と協力しながら、協働して創り上げていく力
・全校のためになることを進んで行おうとする態度

3 授業の実際

❶学校全体に笑顔を届けるために、ニュース番組を制作する計画を立てる。(1時間)

ニュース番組を作って全校の活動を紹介するという取組は、児童自身から生まれたアイデアである。学習発表会や集会活動が例年通りに行えず、「他の学年ってどんな勉強しているんだろう?」ということが児童の間で話題になった。その際、「そういうのをニュースにして、各クラスで放送したらいいのでは?」という案が生まれた。ちょうど社会科で「情報」の学習をしていた時期でもあるので、その学習を踏まえてこのようなアイデアが生まれたと考えられる。他の児童も「面白そう! やってみよう!」「どの学年もすごく喜ぶと思う!」と乗り気であったため、早速総合的な学習の時間を使って、報道番組作りに取り組むことにした。
第1時は、全員で目標(スローガン)を確認し、どのようなニュース番組を作るか、みんなでアイデアを出し合った。その結果、すべての学年の話題をそれぞれ1つ以上は入れる、学校や学校周辺の動植物の話題も入れる、ニュース番組はグループで制作し、それぞれのグループが1日に複数のニュースを伝える等の意見が出された。(感染症対策の観点から、グループ活動は必要最低限とし、できるだけ個人作業で活動が進められるように工夫することもこの場で確認した)なお、各学年の取組は、制作側の5年生自身もよく知らないので、分担して各担任の先生に、どのような学習を行っているのかを事前調査することにした。

❷どのような話題があるか、事前調査を行い、取り上げたいニュース(話題)を決める。(2時間)

児童は休み時間を使って各担任の先生に取材を行い、ニュースとして取り上げられそうな話題にはどのようなものがあるか、調査を試みた。また、学校や学校周辺の観察も入念に行い、話題として取り上げられそうな動植物についても、積極的に調査を行っていた。その上で、今度は教室で集めた情報を持ち寄り、大まかな分担を行った。

写真① 先生方に事前調査する児童の様子
写真① 先生方に事前調査する児童の様子
写真② 調査結果を持ち寄った授業の板書(一部)
写真② 調査結果を持ち寄った授業の板書(一部)

❸実際のニュース番組を分析し、基本的な番組の構成の仕方を学ぶ。(2時間)

取り上げる話題が決まったところで、いよいよニュース番組作りである。しかし、ニュース番組を作るのは、もちろん児童にとって初めての経験であるので、「先生、ニュースってどうやって作るのですか」という声が上がった。そこで、実際のニュース番組を視聴して、その特徴を分析することにした。
取り上げたニュース番組は2つ。1つは初雪に関するニュース、もう1つは動物園に関するニュースで、電子黒板を活用してインターネット上のニュースを視聴させた。ニュースを2つ取り上げたのは、1つのニュースを分析するよりも、複数のニュースを比較させた方が、より特徴を明確に捉えられると考えたからである。児童に2つのニュースを繰り返し視聴させ、共通点を考えさせたところ、以下のような意見が出てきた。

・最初にニュースの大まかな内容を伝えて、その後で詳しい説明をしている。
・動画には字幕(テロップ)やBGM(音楽)を入れて、より内容が効果的に伝わるように工夫している。
・最後に何人かのインタビュー動画を入れている。インタビューに答えた内容も、字幕を入れてより分かりやすくしている。
・キャスターが最後にニュースに関するコメントを簡単に述べている。
など

写真③ ニュース番組を比較・分析する児童の様子
写真③ ニュース番組を比較・分析する児童の様子
写真④ ニュース番組を比較・分析した授業の板書(一部)
写真④ ニュース番組を比較・分析した授業の板書(一部)

この学習を踏まえて、取材を行う際は、①詳しく内容を聞き出すこと②活動動画だけでなく、インタビュー動画を撮影すること等のポイントを明確にすることができた。なお、授業中の活動については5年生児童が撮影するのが難しいので、担任の先生に撮影を依頼する必要があることもここで確認した。

❹取材を行い、必要な情報を収集する。(2時間)

ニュース番組作りに向けて、いよいよ本格的な取材が始まった。授業時間は他の学級の都合上難しいので、ほとんどが休み時間の作業になった。なかなか取材相手が見つからなかったり、せっかく撮影したと思った映像がうまく保存できていなかったりと、悪戦苦闘の日々であった。しかし、児童は学校全体に笑顔を届けるという目標に向かって、あきらめずに何度も挑戦し続けていた。(取材は、マスク着用・消毒等の感染症対策をしっかりとった上で行わせた。)

写真⑤⑥⑦ ニュース番組作りに向けて、先生方や異学年児童、学校の動植物等を取材する児童の様子
写真⑤⑥⑦ ニュース番組作りに向けて、先生方や異学年児童、学校の動植物等を取材する児童の様子

❺集めた情報を使って、ニュース番組作りを行う。(10時間)

集まった情報を基に、個人またはペアでニュースの映像作りを行った。まずは以下のような構成表を基に、どのような流れで番組を構成するかを検討させた。

写真⑧ あるグループの番組の構成表
写真⑧ あるグループの番組の構成表

続いて、それぞれのニュース映像の制作を行った。児童は動画編集ソフトを使いながら、映像をつなげる→ナレーションを吹き込む→字幕を入れる→BGMを入れるという流れで、映像を完成させていった。最初はなかなか動画編集ソフトをうまく使いこなすことができず苦戦していたが、次第に操作に慣れ、工夫しながらニュースを編集する姿が見られた。なお、出来上がった映像は、お互いに評価し合う場を設け、よりよい映像になるように何度も修正を行わせた。こうして、全12本のニュースが完成した。

写真⑨ 動画編集する児童の様子(映像をつなげる)
写真⑨ 動画編集する児童の様子(映像をつなげる)
写真⑩ 動画編集する児童の様子(ナレーションを吹き込む)
写真⑩ 動画編集する児童の様子(ナレーションを吹き込む)
写真⑪ キャスターになってニュースを解説する児童の様子
写真⑪ キャスターになってニュースを解説する児童の様子

❻完成した映像を各教室で視聴してもらう。(給食時間)

いよいよ完成した映像を全校に披露する時が来た。給食時間を利用し、各教室の電子黒板で、数日かけて映像を視聴してもらった。「本当に楽しんでくれるかな?」「退屈しないかな?」児童の不安をよそに、各教室では嬉しそうにニュースを視聴する異学年の姿が見られた。楽しそうに視聴する姿を教師が撮影し、後日その様子を5年生児童に見せたところ、どの子も満足そうな表情を浮かべていた。

写真⑫ ニュース番組を視聴する異学年の児童の様子
写真⑫ ニュース番組を視聴する異学年の児童の様子

❼活動を振り返り、今後学校のためにできることを話し合う。(1時間)

最後にニュース番組作りの活動を振り返らせたところ、以下のような感想が見られた。

ニュース番組作りはすごく大変でした。最初は取材をするのもはずかしかったし、動画編集もすごく難しかったです。でも、他の学年の人によろこんでほしいと思って、一生けんめいがんばりました。ニュースができて、他の学年の人がよろこんでくれたときはすごくうれしかったです。もっと他のニュース番組を作りたいと思いました。6年生になってからも、みんなが笑顔になるように、いろいろなことにチャレンジしたいと思います。

多くの児童が活動に満足し、また他者のために頑張ることの素晴らしさを実感できたようである。

4 考察

本単元を通してどのような資質・能力が育ったのかを、児童の様子やワークシート、完成した作品等を基に考察した。概要を以下に示す。
①知識及び技能
「アポイントメント」「キャスター」「テロップ」等、ニュース番組制作に関わる用語やニュースの基本的な構成等について理解させることができた。また、デジタルビデオカメラや動画編集ソフト等、ICT機器の基本的な操作の技能も向上しつつある。ただし、たった1回の本単元でこれらが完全に習得したとは言い難く、今後も様々な活動を通して、これらの知識及び技能を高めていく必要がある。
②思考力・判断力・表現力等
実際のニュース番組の比較・分析、ニュース番組作りに必要な情報収集、ニュース番組の制作等、単元全体を通して、児童に思考・判断・表現を促す場面を設けることができた。児童の様子や作品等からも、これらの力の高まりを実感することができた。同様の活動を継続することで、児童自身にも思考力・判断力・表現力の高まりを実感させることが大切である。
③学びに向かう力・人間性
困難な課題にもくじけることなく、最後までやり切ろうとする児童の姿を見ることができた。振り返りからも、他者に貢献することの喜びを実感させることができたことがうかがえる。

5 成果と課題

《成果》
・児童の主体的な活動を促すことができ、育てたい資質・能力についても一定の成果を上げることができた。
・コロナウイルス感染症の拡大に伴い、様々な活動が制限される中、ICT機器を効果的に活用した単元を新たに開発することができた。
《課題》
・今回は児童の発案を基に急遽行った実践であるので仕方ない面もあるが、もう少し時間をとり、ニュース番組作りを一定期間継続的に、また連続的に行わせる方が学習効果は高いと思われる。1回目のニュース制作における反省点を、2回目のニュース作りに生かすように単元を工夫すれば、児童自身も自分の成長を実感できるはずである。

6 おわりに

当初5年生の総合的な学習の時間は、地域に出て、地域のことを詳しく調査する活動を計画していたが、コロナウイルス感染症の拡大に伴い、それらの活動が行えなくなってしまった。私自身、どのような活動に代替えしようかと悩んでいたところ、児童の発案により、本単元が生まれることになった。全校を喜ばせたい、全校に笑顔を届けたいという思いの下、児童は本当によく頑張った。何より一番笑顔であったのは、活動に取り組んだ5年生自身であったように思う。「あれもできない」「これもできない」と後ろ向きになってしまっていたのは、実は私の方であり、どのような状況であっても、活動を工夫すれば、主体的な学習を生み出すことができるということを、5年生の児童から教えられた。感染症対策により、活動が制限されることは今後も続くことが予想されるが、「ピンチをチャンスに変える」という発想の転換により、児童の主体的な活動を今後も生み出していきたい。

受賞の言葉

広島県竹原市立吉名学園 有松浩司

広島県竹原市立吉名学園 有松浩司

この度は、入選という栄えある賞をいただき、誠にありがとうございました。
本実践は、コロナウイルスの流行により様々な活動や行事が制約される中、本校の五年生の児童が、少しでも学校全体に笑顔を届けようと、報道番組の制作に取り組んだ様子をまとめたものです。児童は各学級の様子や出来事等を少しでも分かりやすく伝えようと、一生懸命取材や映像編集を行っていました。映像制作は、児童にとって非常に困難を伴う活動でしたが、実際のニュース番組を何度も分析したり、お互いの映像を評価し合ったりしながら、工夫と改善を重ね、より分かりやすく、楽しい映像になるように努めていました。「報道の力で学校に笑顔の花を咲かせよう!」を合言葉に、児童と共に試行錯誤しながら取り組んだ活動ですが、何より一番笑顔で輝いていたのは、他者のために一生懸命頑張り続けた五年生自身だったと思います。
今回の受賞を励みに、今後も積極的に単元の開発を進めていきたいと思います。このような研究をまとめる機会を与えてくださった関係各位、共に学び合った五年生児童に、心より感謝いたします。

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