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気になる子を継続的に見守るために|子どものSOSを見逃さない教室づくり⑤【ストレスフリーの教室をめざして】

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春日智稀
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子どものSOSは、教室の中だけで表れるとは限りません。だからこそ、担任一人の目だけで判断するのではなく、複数の先生の目をつなぎ、情報を共有しながら支援していくことが大切です。

では、子どものSOSに気づいた後、私たちはどのようにその子を見守っていけばよいのでしょうか。

SOS対応で難しいのは、教師のアンテナにかかった子を、その後どのように支援し、継続していくかという点です。気になる様子があったので声をかけた。保健室や学年主任にも共有した。保護者にも連絡した。できることはすべて行い、子どもの様子も落ち着いたように見えると、私たちはつい「ひとまず大丈夫かな」と安心してしまうものです。もちろん、一度の声かけや支援で子どもの状態が改善することもあるでしょう。それに越したことはありません。しかし、子どもの心の不調や困り感は、一直線によくなっていく場合ばかりではありません。少し落ち着いたように見えても、また心のモヤモヤが大きくなることがあります。

そこでシリーズ最終回となる本記事では、「気になる子を継続的に見守るために」をテーマに、一度気づいた子どものSOSをどのように見守り続け、支援を切らさずにつないでいくのかについて整理していきます。

執筆/埼玉県公立小学校教諭・春日智稀

SOS対応は「一度きり」では終わらない

子どものSOSに気づいたとき、最初の対応はとても大切です。声をかける。話を聞く。記録する。校内で共有する。必要に応じて保護者や関係機関につなぐ・・・。こうした対応によって、子どもが少し安心したり、状況が落ち着いたりすることがあります。

しかし、ここで注意したいのは、「一度対応したから終わり」ではないということです。例えば、友だちとのトラブルがあった子に声をかけたところ、「大丈夫」と答えたとします。翌日、その友だちと楽しそうに話している姿が見られた。教師は少し安心します。しかしこれは、「教師がその場所にいるときの人間関係」でしかありません。休み時間や教室移動、登下校など、教師がいないときの人間関係があることもまた事実です。教師の目が行き届かないところで、トラブルはじわじわと進行しているかもしれません。

また、保健室利用が増えていた子について養護教諭と共有したところ、一時的に来室回数が減ったとします。しかし、行事前や週明けになると再び不調を訴えることがあるかもしれません。体調不良の背景にある不安や問題が解決していなければ、別の形でサインが出ることもあります。

子どもの心は、天気のように変化します。晴れの日もあれば、曇りの日もあります。いったん晴れ間が見えてもまた雲が広がり、時には雨や雷になる日だってあるでしょう。これは、私たち大人でも同じはずです。大切なことは、曇りや雨、雷を悪とするのではなく、そんな日に自分とどう向き合うか、どう子どもと向き合うかです。

見守りには「時間軸」が必要

継続的に見守るためには、時間軸をもつことが重要です。気になる子について、「今日どうだったか」だけでなく、「明日どう見るか」「1週間後にどう確認するか」「1か月後にどう振り返るか」を考えることで、支援の目を継続させることができます。いじめ事案であっても、認知してから3か月後を目安に解消の見届けを行うことになっていますよね。

ここでは、見守りの時間軸を3つに分けて考えてみます。

①1日後に見る

まず大切なのは、声をかけた翌日、共有した翌日など、近いタイミングで様子を見ることです。

子どもにとって、教師が「昨日話したことを覚えてくれている」と感じられることは大きな安心につながります。反対に、せっかく話したのに翌日何も反応がないと、「先生は昨日のこと覚えているのかな?」と感じてしまうことがあります。

「昨日は話してくれてありがとう」
「今日はどう?」
「昨日より少し落ち着いているかな」
「また何かあったら言ってね」

この程度の短い声かけでも十分です。大切なのは、「話して終わりではない」「先生は気にかけ続けている」というメッセージを届けることです。

また声はかけずとも、翌日の様子を観察することも大切です。表情、あいさつ、休み時間の過ごし方、友だちとの関わり、授業への向き合い方などを見ておきます。前日と比べてどうかを確認することで、支援の方向性が見えやすくなります。

②1週間後に見る

次に、1週間程度のまとまりで見ることも大切です。

1日単位では、子どもの変化はわかりにくいことがあります。たまたま体調がよかった日、たまたま友だちとうまくいった日もあります。反対に、たまたま疲れていた日もあります。だからこそ、1週間という少し長い単位で見ることで、傾向が見えてきます。

例えば、

「保健室に行く回数は減ったか」
「休み時間に一人でいる日が続いているか」
「宿題や提出物の状況はどうか」
「特定の曜日や授業の前に不調が出ていないか」
「友だちとの関係は少し変わったか」

といった視点で振り返ります。

1週間後には、学年主任や養護教諭など、その子の様子を共有していた先生と状況を確認することも有効です。

「先週情報共有した〇〇さん、その後どうですか」
「保健室利用は続いていますか」
「休み時間の様子は変わりましたか」

このような確認をするだけでも、支援が途切れにくくなります。

また、保護者とも連携している場合には、1週間単位で連絡を取り合うことも重要です。

③1か月後に見る

さらに、1か月単位で振り返ることも大切です。

子どもの状態は、短期間で大きく変わることもありますが、じわじわと変化することもあります。1週間ではわかりにくかったことが、1か月で考えると見えてくる場合があります。

例えば、

「以前より表情が明るくなった」
「保健室利用は減ったが、提出物の遅れは続いている」
「友だち関係は安定してきたが、月曜日の朝だけ不調がある」
「行事後に再び疲れが出ている」

といったように、支援の効果や新たな課題が見えてきます。

1か月後の振り返りでは、「支援を続けるか」「少し見守りに移るか」「別の支援に切り替えるか」を考えます。一人の判断で不安なときには、ケース会議を開催してもよいでしょう。声かけを続けるのか、保護者と再度共有するのか、スクールカウンセラーにつなぐのか、席やグループを調整するのか。子どもの状態に応じて、支援を更新していくことが必要です。

支援を切らさないための記録

継続的な見守りに欠かせないのが記録です。第1回・第4回でも触れましたが、記録は子どもを管理するためのものではなく、支援を切らさないためのものです。気になる子について、すべてを詳細に書く必要はありません。忙しい学校現場で、長い記録を毎日続けることは現実的ではないでしょう。だからこそ、短く、続けられる形が大切です。

記録する内容は、次のようなものです。

  • 日付
  • 場面
  • 気になった様子
  • 子どもの言葉
  • 教師の対応
  • 共有した相手
  • 次に見るポイント

例えば、

「6月20日 朝 表情硬い。あいさつ小さい。『眠い』とのこと。1時間目後に再確認」
「6月21日 休み時間 一人で教室。声かけに『大丈夫』。養護教諭へ共有」
「6月25日 保健室利用なし。昼休みに□□さんと会話。少し笑顔あり」

この程度でも、後から見ると大きな意味を持ちます。

記録で大切なのは、事実を短く残すことです。「元気がない」「不安そう」といった解釈も大切ですが、できるだけ「何を見たのか」「何を聞いたのか」を残します。そのうえで、「友だち関係が気になる」「月曜日に不調が出やすいかもしれない」といった見立てを添えるとよいでしょう。

また、記録は自分だけのためではありません。学年主任、養護教諭、管理職、スクールカウンセラーなどと共有する際にも、記録があることで話が具体的になります。保護者と話す場合にも、「最近少し元気がないです」だけでなく、「今週は朝の表情が硬い日が3日ありました」と伝える方が、状況を共有しやすくなります。

継続支援で見たい5つのポイント

では、気になる子を継続的に見守るとき、どのような点を見ればよいのでしょうか。ここでは、5つのポイントに整理します。

ポイント①表情や声が戻ってきているか

まず見るのは、表情や声の変化です。あいさつの声、授業中の反応、友だちと話すときの表情などに、少しずつその子らしさが戻っているかを見ます。ただし、無理に明るく振る舞っている場合もあります。笑顔があるから大丈夫と決めつけるのではなく、「自然な笑顔か」「疲れが見えないか」「一人になったときの表情はどうか」なども含めて見ていきます。

ポイント②休み時間の過ごし方が安定しているか

休み時間の様子も大切です。一人で過ごす時間が減ったか、友だちとの関わりが戻ってきたか、逆に無理に誰かに合わせすぎていないかを見ます。一人で過ごしていても、本人が落ち着いて過ごせているなら問題がない場合もあります。一方で、近くに友だちがいるのに会話に入れない、教室に居場所がないように見える、用もなく廊下やトイレに行くことが多いといった場合は、継続して注意が必要です。

ポイント③学習への向き合い方が変わっているか

心の状態は、学習への向き合い方にも表れることがあります。ノートを書く量、提出物、宿題、授業中の集中、発表、ペア活動への参加などを見ます。以前より少し取り組めるようになったのか、まだ空白が多いのか、特定の教科だけつらさが出ているのか。学習面の変化を見ることで、心の状態や支援の必要性が見えてくることがあります。

ポイント④身体症状や保健室利用がどう変化しているか

頭痛、腹痛、だるさ、眠気、保健室利用の頻度なども継続して確認します。回数が減ったか、特定の曜日や時間帯に偏っていないか、体調不良の訴え方が変わっていないかを確認します。ここでは養護教諭との連携が重要です。担任が「最近落ち着いている」と感じていても、保健室ではまだ不調を訴えている場合があります。逆に、保健室利用が減っていても、教室で無理をしている場合もあります。複数の視点をつなぐことが大切です。

ポイント⑤子ども自身が助けを求められているか

最後に、子ども自身が困ったときに助けを求められているかを見ます。

「先生、少し話せますか」
「保健室に行ってもいいですか」
「今日はつらいです」
「友だちのことで相談したいです」

このように、以前よりも自分から言えるようになっているなら、それは大きな変化です。問題が完全に解決していなくても、助けを求められるようになっていること自体が、支援の成果と言えるでしょう。

支援は「続ける」だけでなく「更新する」

継続支援で大切なのは、子どもの状態に合わせて、支援を更新していくことです。例えば、最初は毎日短く声をかけていたけれど、少し安定してきたら、声をかけずに見守りに徹する日を増やす。保健室利用が続いている場合には、養護教諭と相談して来室時の対応を整理する。友だち関係が背景にある場合には、席替えやグループ編成を慎重に考える。家庭での様子が気になる場合には、保護者と共有する。必要に応じてスクールカウンセラーにつなぐ。このように、支援は子どもの状態に合わせて変えていく必要があります。

支援を更新するためには、次のような問いが役立ちます。

  • 今の支援は、その子に合っているか
  • 声かけは多すぎないか、少なすぎないか
  • 教室での負担は減っているか
  • 保健室やSSRとのつながりは十分か
  • 保護者との共有は必要か
  • 専門職につなぐ段階か
  • 次に見るポイントは何か

支援は一度決めたら固定するのではなく、子どもの状態を見ながら少しずつ調整していくものです。

リスクが高まりやすい時期を意識する

気になる子を見守るときには、時期も意識したいところです。子どもの心の状態は、学校生活の節目に揺れ動きやすくなります。

①長期休業明け

夏休みや冬休み、春休み明けは、生活リズムの変化や登校への不安が表れやすい時期です(#34参照)。休み中に家庭でつらさを抱えていた子もいるかもしれません。休み明けの数日は、特に表情や登校の様子を丁寧に見たいものです。

②行事の前後

運動会、校外学習、学習発表会、修学旅行などは、子どもにとって楽しみである一方、大きな負担になってしまうこともあります。事前の練習、グループなどの人間関係、役割や係への不安などが重なることで、心身に疲れが出ることがあります。行事が終わった後に、ほっとした反動で不調が出ることもあります。

③学期末や進級前後

クラス替え、担任の先生との出会い、進級、中学校進学などは、子どもにとって大きな変化です。新しい環境への期待と不安が入り混じる時期には、心の揺れが表れやすくなります。こうした時期には、普段より少し意識して見守ることが大切です。特に進級・進学後は、担任の先生も初対面の子が多いでしょうから、それぞれの子の「いつも」がわかりません。そのため、この時期は意図的に子どもたちと一緒にいる時間を増やし、みんなの「いつも」をいち早く把握することが大切です。

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