子どもが「助けて」と言える学級をつくる|子どものSOSを見逃さない教室づくり③【ストレスフリーの教室をめざして】

前回の記事では、「話したくない子にどう近づくか」について考えました。子どもの小さな変化に気づいたとき、教師はすぐに話を聞き出そうとするのではなく、タイミングを見て、近づきすぎず、短くやわらかい言葉で声をかけることが大切であると整理しました。
では子どもが困ったとき、教師は待っているだけでよいのでしょうか。
もちろん、教師が子どもの小さな変化に気づくことは大切です。しかし、教師がすべてのSOSに気づくことは難しいこともまた事実です。教室にはたくさんの子どもがいます。さらに子どもは学校だけでなく、家庭、習い事、SNS上の人間関係など、教師の目が届きにくい場所でもさまざまな出来事を経験しています。だからこそ、教師が気づく力を高めることと同時に、子ども自身が「困った」「助けて」と言える力を育てることも大切です。
このように、困ったときに誰かに相談したり、助けを求めたりする力は、「援助希求スキル」と呼ばれます。難しい言葉ですが、小学校の教室で言い換えれば、「一人で抱え込まずに、助けを求める力」と言えるでしょう。
そこで第3回となる本記事では、「子どもが『助けて』と言える学級をつくる」をテーマに、援助希求スキルを育てるための考え方と、教室でできる具体的な活動について整理していきます。
執筆/埼玉県公立小学校教諭・春日智稀
目次
援助希求スキルとは何か
援助希求とは、簡単に言えば「困ったときに自分から助けを求めること」です。たとえば、わからない問題があったときに「教えてください」と言う。友だちとの関係で悩んだときに先生に相談する。体調が悪いときに保健室へ行きたいと伝える。家庭で困っていることがあるときに、信頼できる大人に話す。こうした行動はすべて、援助希求に含まれます。
私たちはつい、「困ったら相談すればいい」と考えがちです。しかし、実際には相談することは簡単ではないこともあります。私たち大人でも、悩みを誰かに話すには勇気が要りませんか?「こんなことを言ったら迷惑ではないか」「弱い人だと思われないか」「大ごとになったらどうしよう」「どうせわかってもらえないのではないか」と考えて、なかなか相談できないこと、ありますよね。
子どもはなおさらです。小学生は、自分の困り感を言葉にする力が発達の途中です。自分が何に困っているのかわからないこともありますし、「困っている」と認めること自体が恥ずかしいと感じることもあります。また、過去に相談したときに十分に受け止めてもらえなかった経験があると、「言っても意味がない」と思ってしまうこともあります。
つまり援助希求スキルは、自然に身に付くのを待っているだけでは十分ではないかもしれないのです。だからこそ教室の中で、「困ったときは助けを求めてよい」「助けを求めることは弱さではない」「相談する方法はいくつもある」と、具体的に教えていく必要があるのです。
「助けて」と言えない子どもの背景
では、なぜ子どもは「助けて」と言えないのでしょうか。ここでは、子どもが相談をためらう背景を整理してみます。
①「迷惑をかけたくない」という思い
優しい子、周りをよく見ている子ほど、「先生は忙しそう」「友だちに心配をかけたくない」「家の人に迷惑をかけたくない」と考えてしまうことがあります。大人から見れば相談してくれた方がよいのですが、子どもなりに周囲を気遣って、言えなくなっていることがあります。
②「叱られるかもしれない」という不安
困っていることの中には、宿題を出せていない、友だちとけんかをした、約束を守れなかったなど、自分にも非があるように感じる内容が含まれることがあります。その場合、「相談したら叱られる」と思い、言えなくなってしまうことがあります。
③「どう言えばよいかわからない」という混乱
子どもは、自分の気持ちや状況を整理して説明することが得意とは限りません。「なんとなく嫌」「行きたくない」「モヤモヤする」といった感覚はあっても、それを言葉にできないことがあります。言葉にできないから相談できない、ということはよくあります。
④「大ごとになったらどうしよう」という心配
友だち関係の悩みでは特に、「先生に言ったら相手に伝わるかもしれない」「チクったと思われるかもしれない」「余計に関係が悪くなるかもしれない」と感じることがあります。相談したい気持ちはあっても、その後に何が起きるかわからない心配が、相談を遠ざけます。
⑤「相談するほどのことではない」という思い込み
子どもは、自分の困り感を小さく見積もることがあります。「これくらい我慢しなければ」「みんなも大変だから」「自分が弱いだけだから」と考え、一人で抱え込んでしまうのです。
こうした背景を考えると、子どもにただ「困ったら言ってね」と伝えるだけでは不十分であることがわかります。子どもが実際に相談できるようになるためには、相談してよい理由、相談の仕方、相談できる相手、相談した後の流れを、具体的に伝えていく必要があると考えられます。
