あきらめない力を伝えるとは?【伸びる教師 伸びない教師 第68回】
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豊富な経験によって培った視点で捉えた、伸びる教師と伸びない教師の違いを具体的な場面を通してお届けする人気連載。今回のテーマは、「あきらめない力を伝えるとは?」です。ちょっと失敗しただけであきらめてしまう子供の姿が学級で見られませんか。なんでも簡単に工夫されている現在だからこそ、子供たちには「簡単」だけに慣れないでほしいという話をお届けします。
執筆
平塚昭仁(ひらつか・あきひと)
栃木県公立小学校校長。
2008年に体育科教科担任として宇都宮大学教育学部附属小学校に赴任。体育方法研究会会長。運動が苦手な子も体育が好きになる授業づくりに取り組む。2018年度から2年間、同校副校長を務める。2020年度から現職。主著『新任教師のしごと 体育科授業の基礎基本』(小学館)。
目次
最後までやり抜く力
校内でカリキュラムマネジメント研修をしたとき、本校の子供たちに身に付けさせたい資質・能力を教職員に考えてもらいました。考えた資質・能力を4つに絞り、次年度の重点指導項目として取り組んでいくことにしました。
その中の1つに、「最後までやり抜く力」がありました。
この力を選んだ理由として、ちょっと失敗しただけであきらめてしまう、自己肯定感が低いなどの理由が挙げられました。中には、「自分にはできない」と、始める前からあきらめてしまう子供がいるとのことでした。そうした子供は、失敗することを極度に嫌がり自分ができそうなものばかりを選んで取り組むそうです。
「自分にはできない」と、挑戦する前にあきらめてしまうことは、自分のこれからの可能性をあきらめることと同じだと私は考えます。
そこで、4月の始業式、校長の話でこんなメッセージを子供に伝えました。
ずいぶん昔の話ですが、校長先生はこの〇〇小学校で担任の先生をしていたことがあるのです。今から約30年前、ちょうど、体育主任の○○先生と同じくらいの年でした。
昔は、町の陸上大会があり、町内すべての小学校の5、6年生全員が1つの学校に集まって100m走、幅跳び、高跳び、リレーなどの競技で順位を争いました。競技に参加しない人は、学級対抗大縄跳びに参加しました。
この大会は5月に行われたのですが、陸上競技に参加する学校代表の人は、陸上部として4月から毎日練習に励みました。ただ、大会が終わると解散する、その時期だけの陸上部でした。
大会が終わった後、
「せっかく大会に出るのなら、そのときだけでなく1年間ずっと練習をすればいいのに……」
という思いが強く自分の中に残りました。そこで、校長先生に「1年間通して陸上部を続けさせてください」とお願いしました。これが、今の「〇〇小陸上部」の始まりです。
はじめは数人でしたが、いつのまにか40人くらいまで増え、練習を保護者の方が手伝ってくれるようになりました。そのおかげもあって、県大会で入賞する人が多くなり、中には、全国大会まで行く人も何人か出てきました。
ところが、ある年の県大会、1人も入賞しないことがありました。ただ、その学年の子供たちはみんなとてもよく練習を頑張っていたので、「人と比べず自分の記録が伸びることを目標にあきらめないでいこう」と励ました。その後、この「あきらめない気持ち」は陸上部の合言葉となり横断幕も作りました(広げて見せました)。それからというもの、大会ではこの横断幕を会場に掲げ、一人一人が自分の最高記録を目指しました。
県大会で入賞しなかった学年の子供たちは、中学校でも全員陸上部に入り、熱心に練習に励みました。その子供たちが中学3年生の夏、陸上の全国大会が新潟県で行われました。その大会に陸上部からなんと9人(のべ)の人が出場することになりました。1つの学校の陸上部から9人も全国大会に出ることは今までありませんでした。しかも、小学校の県大会では誰一人入賞しなかった学年の子供たちです。そのことを私のところに報告しに来てくれたときの中学生の笑顔は今でも忘れません。
できないことって、すぐにはできるようにならないのですよね。それでも、あきらめずに努力を続けていくと、急にできるようになることがあるのです。皆さんの中にも逆上がりや縄跳びの練習をしていて、そんな経験をした人がいるのではないでしょうか。
これは、運動だけでなく勉強やほかのことでも同じです。
みなさんには、今年1年、この「あきらめない気持ち」を大切に、最後まで粘り強く取り組んでもらえればと思います。

