教科担任制のよさと課題「教師という仕事が10倍楽しくなるヒント」きっとおもしろい発見がある! #38

「教師という仕事が10倍楽しくなるヒント」の38回目のテーマは、「教科担任制のよさと課題」です。近年、教科担任制が増えています。若手の先生が、学級担任ではなく、いきなり理科専科や算数少人数担任になるケースも見られるようです。教科担任制は、単に教科を分ける制度ではなく、教員同士が協力して学校全体で子供を育てていく仕組みでもあるという話です。教科担任制に悩んでいる先生はぜひヒントにしてください。

執筆/吉藤玲子(よしふじれいこ)
帝京平成大学教授。1961年、東京都生まれ。日本女子大学卒業後、小学校教員・校長としての経歴を含め、38年間、東京都の教育活動に携わる。専門は社会科教育。学級経営の傍ら、文部科学省「中央教育審議会教育課程部社会科」審議員等、様々な委員を兼務。校長になってからは、女性初の全国小学校社会科研究協議会会長、東京都小学校社会科研究会会長職を担う。2022年から現職。現在、小学校の教員を目指す学生を教えている。学校経営、社会科に関わる文献等著書多数。現在、日本・中国・韓国の初等教育において、異文化理解教育の推進に関する実践と研究にも携わっている。
目次
増える教科担任制
昨年、私が属する東京都小学校社会科研究会の夏のワークショップを開催したところ、実にたくさんの若手教員が参加してくれたことに驚きました。その背景には、広がりを見せている「教科担任制」の影響があると感じています。ベテランの先生方が国語や算数を担当される一方で、若手教員に社会科が割り振られることも多く、「学習問題をどのように立てればよいのか分からない」「問題解決的な授業の進め方に自信がない」と悩みを抱える若手の先生方が多く参加していました。
また、今年、私の大学の卒業生も学級担任ではなく、理科専科や家庭科専科、算数少人数担当として勤務しているケースが増えています。私が若い頃は「まずは学級担任から」という流れが一般的でしたが、学校現場の状況は大きく変わってきました。教科担任制がだんだん広がっている様子を実感します。
さらに、クラス替えを毎年行う学校も増えてきています。多様化する子供や保護者への対応が背景にはあります。1人の担任だけにすべてを任せるのではなく、「チーム学校」として複数の教員で子供を育てていこうという考え方が強まってきているのです。今回は、この教科担任制のよさや課題について考えてみたいと思います。

教科担任制の現状
多くの学校では、高学年(5、6年生)を中心に教科担任制が導入されています。図工や音楽、家庭科だけではなく、理科、外国語などで専科教員が配置される学校も増えました。形態としては、「専科型」と「学年内交換型」が多く見られます。また、小中連携の一環として、中学校の英語教員が小学校の外国語活動に関わる事例もあります。私も担任時代に実践したことがありますが、小学校と中学校の連携は時程の違いを調整するのが難しいです。
「学年内交換型」は、同学年の担任同士が比較的得意な教科を交換して行います。ただし、「学年内交換型」には難しさもあります。「自分に得意教科がない」と感じている先生や「自分のクラスを他の先生に見てもらうことに抵抗がある」という先生がいるとなかなかスムーズに進みません。小学校教員は「全教科指導」を前提とし養成されてきています。そのため1つの教科を専門に担当するとなると、教材研究や授業力向上のための研修が必要になります。
また、教員不足の問題も深刻です。本来であれば、理科が得意な教員を理科専科に配置したいところですが、実際には人員配置の都合で、新規採用の先生がいきなり理科専科になるケースもあります。本人も不安でしょうし、学校においても十分なサポート体制を整える必要があります。
しかし、その一方で教科担任制には大きなメリットもあります。1つは、教材研究が深まることです。同じ教科を複数クラス担当することで教材研究の質が高まり、授業改善にもつながります。もう1つは、複数の教員が子供に関わることで、児童理解が深まることです。担任1人だけの視点では見えなかった子供のよさや課題が見えてくることがあります。
