菊池省三の「コミュニケーション力が育つ教室づくり」 #21 時間切れの「解散期」にしないために必要な振り返りを

連載
菊池省三のコミュニケーション力が育つ教室づくり

教育実践研究家、教育実践研究サークル「菊池道場」主宰

菊池省三
菊池省三の「コミュニケーション力が育つ教室づくり」

タックマンモデルをベースにした学級の成長理論に基づき論を進めてきた本連載。今回は、第5段階「解散期」において年間の学びをどう振り返り、その成果をどう次につなげるか、について提案します。キーワードは、学びの「社会化」です。

時間切れで迎える「解散期」

今年度も残すところあとわずか。受け持った子供たちをどのように見送りましたか? 
この連載では、1年間を通して「学級の成長4段階」についてお話ししてきました。
「学級の成長4段階」とは、心理学者のタックマンが、チームビルディング形成について提唱した「タックマンモデル」を、私なりに学級の成長段階に当てはめたものです。
連載では第2回に1段目の「形成期」、第11回第12回で2段目の「混乱期」、第15回第16回で3段目の「標準期」、第19回第20回で「達成期」を取り上げてきました(下図参照)。

もともと「タックマンモデル」は、チームビルディングにおけるステージを段階別に表したものですが、後にタックマンによりもう1段階が追加されました。それは「達成期」に続く第5段階、「解散期」です。

「解散期」は、チームとして目的を達成した後、解散のための手続きを行うとともに、表彰や打ち上げなどを行う時期です。ビジネスでは、目的が達成した時点で解散しますが、学校の場合、「3月」という期限が決まっています。
つまり、「達成期」であろうが「標準期」であろうが、さらにいえば「形成期」だろうが、目的の達成度に関係なく、時間軸のみで解散になるのです。

これまで様々な学級を見てきましたが、「達成期」を経て「解散期」に至った学級はほとんどありませんでした。
ともすれば、「形成期」のまま1年が過ぎ、時間切れになった学級さえ少なくありません。
1年間の見通しを持たないままスタートし、1学期は教師の思い込みで空回りし、2学期に息切れ、3学期は3月の終了を待つだけの “消化試合”。こんな教室では、子供たちは楽しいはずがありません。

教室から飛び出す”ダイナミック”な学びに

ビジネスにおける「解散期」には、メンバー同士で労をねぎらうとともに、チームとして活動して得たことをまとめ、その成果を出し続ける上で必要な引継ぎ事項を考えていきます。

学級も同様です。まずはみんなで学んできたことを認め合い、喜び合う。
その活動の一つが第20回で紹介した「試練の10番勝負」です。
最後まで真剣勝負で意見を出し合うことで、子供たちは本気で話し合う楽しさを実感していきます。

そして、学級での学びをどう振り返り、その成果をどう今後に活かしていくかも重要です。年度末には、教師、子供の二つの視点から振り返りましょう。

教師は、自らの指導とかかわりについて振り返ります。1年間自分が経営してきた学級が、子供たちにとってはどうだったのか、について振り返ることが大切です。
例えば、「試練の10番勝負」のテーマでは、教師自身が力を入れてきた取組について取り上げます。
「成長ノートは私の何をどう育てたのか?」「なぜ、○年○組は話し合いが成立するのか?」「言葉(価値語)を得て自分はどう変わったのか?」「『ほめ言葉のシャワー』は、なぜ◯年◯組を変えたのか?」など、私の場合は、“言葉” に力を入れてきたので、言葉に関する問いになりました。
この問いは、子供自身への問いかけであると同時に、教師に対する評価でもあります。
“教師の通知表”と言ってもいいでしょう。教師にとっても、試練です。

次に、子供の視点から見て、学びが教室の中で完結する“閉ざされた学び”になっていないかどうかを振り返ります。
多くの教室を回っていると、学習活動が“社会化”していないな、と感じています。学びが、教室の中だけに終始しているのです。

①誰かと何かを議論する
②自分から提案する
③みんなを巻き込む

このような学びを経験することで、子供たちの学びはどんどんダイナミックになっていきます。学びは教室という小さな枠には収まりきらず、外へと向かっていきます。

児童会での活動
PTAや地域とのつながり
学校全体を巻き込んだ活動

こうした学びの成立が “社会化” であり、本来、子供が身に付けるべき “学力” なのです。

以前、私が受け持っていた6年生の学級でのエピソードです。
卒業近くの3月、家庭科で「感謝の気持ちを伝えよう」という学習をしている子供たちから、「お世話になった大人にも『ほめ言葉のシャワー』をしよう」という意見が出ました。
校長先生や教頭先生、養護教諭、専科の先生、ALT、学校用務員、さらにはPTA会長、読み聞かせに訪れたボランティア等々、自分たちにかかわってくれた人たちに向けて、「ほめ言葉のシャワー」を行いました。「ほめ言葉のシャワー」を聞きながら、子供たちの観察力と表現力にあらためて驚かされました。

“社会化” は、活動として外へ向かい、学ぶ姿勢として内面に積み重なっていきます。外面と内面の二つの学びを繰り返すことが、健全な学びの“社会化”なのです。

4月、再び新しい “教室” で子供たちとの学びがスタートします。
初日に教壇に立ったとき、子供たちを見ながら、ぜひ彼らの1年後の姿を思い浮かべてください。
その姿の実現が、教師としての”覚悟”です。

一つの “チーム教室” が解散し、4月からまた新しい “チーム教室” がスタートする

取材・文/関原美和子 プロフィール写真/西村智晴


Profile
きくち・しょうぞう。1959年愛媛県生まれ。北九州市の小学校教諭として崩壊した学級を20数年で次々と立て直し、その実践が注目を集める。2012年にはNHK『プロフェッショナル仕事の流儀』に出演、大反響を呼ぶ。教育実践サークル「菊池道場」主宰。『菊池先生の「ことばシャワー」の奇跡 生きる力がつく授業』(講談社)、『一人も見捨てない!菊池学級 12か月の言葉かけ コミュニケーション力を育てる指導ステップ』(小学館)他著書多数。


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第1回 すべての教科の基盤となる “空気づくり” <前編>
第2回 すべての教科の基盤となる “空気づくり” <後編>
第3回 教師のパフォーマンス力が、教室の空気をつくる <前編>
第4回 教師のパフォーマンス力が、教室の空気をつくる <後編>
第5回 授業動画で “教室の空気” を学ぶ <前編>
第6回 授業動画で “教室の空気” を学ぶ <後編> ──高知県佐川町立黒岩小学校での授業より
第7回 子供の “つぶやき” と “雑音” への対応 <前編>
第8回 子供の “つぶやき” と “雑音” への対応 <後編>
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第11回 学級の「混乱期」をどう乗り越えるか<前編>
第12回 学級の「混乱期」をどう乗り越えるか<後編>
第13回 コミュニケーション力が育つ授業レポート② ~岡山県浅口市立鴨方中学校2年2組<前編>
第14回 コミュニケーション力が育つ授業レポート② ~岡山県浅口市立鴨方中学校2年2組<後編>
第15回 「標準期」における成長は、子供の主体性にかかっている <前編>
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第17回 コミュニケーション力が育つ授業レポート③ ~愛知県豊橋市立松山小学校2年ろ組 <前編>
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第19回 1年間のゴールイメージを実現する「達成期」の指導 <前編>
第20回 1年間のゴールイメージを実現する「達成期」の指導 <後編>

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