菊池省三の「コミュニケーション力が育つ教室づくり」 #7 子供の “つぶやき” と “雑音” への対応 <前編>

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菊池省三のコミュニケーション力が育つ教室づくり

教育実践研究家、教育実践研究サークル「菊池道場」主宰

菊池省三
菊池省三の「コミュニケーション力が育つ教室づくり」

菊池省三実践の最新深化形を紹介する連載第7回。今回は、子供たちが発する「雑音」についての考察を起点に、学級崩壊のタイプを四つに分類、崩壊が進行するプロセスについて分析していきます。

“つぶやき” と “雑音” は似て非なるもの

授業中、子供たちが “何気ない一言” を発する場面が多くあります。

“何気ない発言” とは、教師や他の子供の発言へのリアクションで、次の二つのタイプがあります。

①つぶやき……他の子の発表を聞いて思わず出てしまった一言や、教師の発言に対しての感嘆の一言。
例:「なるほどなあ」「よっしゃあ!!」「(答えに自信がなく、小声で)○○かなあ」

②雑音……他の子を嘲笑したり、教師を挑発したりする一言。
例:他の子の誤答に対する冷笑やあからさまな誤答。「わかりませーん」「聞こえませーん」「(他の子の意見と)同じでーす」、独り言で「面倒くせー」「ばかじゃね」。

ここ最近、先生方から、「授業中の子供の “何気ない発言” をどう捉えればいいか悩んでいる」という相談がよく寄せられるようになりました。研修会で「学級の困りごと」についてグループトークをしても、必ず挙がってくる問題です。

同じ “何気ない一言” でも、①と②は似て非なるものです。ところが、目先の指導にとらわれ、この二つを同じ土俵に上げてしまう教師が少なくないのです。

子供の発言を拾い、教師が「どうしてそう考えたの?」「○○さんはそう思ったんだね」「みんなに聞こえるようにもう1回話してみて」と返す。

たとえそれが、「聞こえませーん」という “雑音” だと気になっても、「教師がうまく取り上げれば、授業は滞りなく進んでいく。子供の声を拾うのは教師の腕次第」。そういう思い込みで教育技術に力を入れてきたのでしょう。

子供の声を拾うことは一見、一人一人を大切にしているように見えますが、拾った一言が“雑音”の場合、深い学びにつながることはありません。

それどころか、「何か言えば、先生がかまってくれる」と勘違いし、“雑音” がどんどんエスカレートしていくばかりです。

“雑音” が学級崩壊につながっていく

子供の他愛ない “雑音” は、ときに深刻な学級崩壊へとつながります。

学級崩壊には次の四つのタイプがあると私は考えています。

担任に反発し、言葉や力による暴力が起きている学級。いわゆる “荒れた学級” がこれに当たる。

担任を嫌って、無視したり無関心だったりする学級。学級の人間関係が冷え切った “静かな崩壊”。

担任を嫌ってはいないが、学級に締まりがなく、集団としてまとまっていない学級。若い教師にありがちで、子供の勢いに押され、集団としての規律が守られていない。

担任も子供も明るいが、お互いに空気を読み、馴れ合って群れている学級。一見、落ち着いた学級に見えるが、人間関係が表面的で個が確立されていない、いわば “明るい崩壊”。

①や②の崩壊は形となって現れているため教師も自覚しやすいのですが、③や④はわかりにくいものがあります。教師は漠然とした不安を持ち、あるいは荒れていることにすら気付いていないこともあります。

先に述べた “雑音” は、③や④の “見えない崩壊” から始まっていきます。

最近は①のような、見るからに乱暴な反抗は目立たなくなりました。その代わりに、子供たちは “雑音” で小さな抵抗をしているのです。

“雑音” にいちいち耳を傾け、安易な言葉かけで子供たちを増長させればさせるほど、“雑音” はエスカレートしていきます。
軽い言葉はだんだんと攻撃的に変わり、②の静かな崩壊、①の荒れた学級へとつながっていくのです。

そもそも子供たちはなぜ “雑音” を出すのか。「もっとわかるように勉強を教えて」という気持ちの裏返しではないでしょうか。
それに対して、「うるさい」と一方的に封じ込めたり、表面的に「そう思ったんだね」と返すだけで何の手立ても講じなかったりする教師に対して、子供はますます心を閉ざしてしまいます。

子供の “つぶやき” を活かしつつ、“雑音” にとらわれないようにする。

教師の力量と覚悟が試されているのです。

子供の “つぶやき” を価値付けてほめ、みんなに広げていく

※この連載は隔週火曜日に公開します。

取材・文/関原美和子 プロフィール写真/西村智晴


Profile
きくち・しょうぞう。1959年愛媛県生まれ。北九州市の小学校教諭として崩壊した学級を20数年で次々と立て直し、その実践が注目を集める。2012年にはNHK『プロフェッショナル仕事の流儀』に出演、大反響を呼ぶ。教育実践サークル「菊池道場」主宰。『菊池先生の「ことばシャワー」の奇跡 生きる力がつく授業』(講談社)、『一人も見捨てない!菊池学級 12か月の言葉かけ コミュニケーション力を育てる指導ステップ』(小学館)他著書多数。


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第1回 すべての教科の基盤となる “空気づくり” <前編>
第2回 すべての教科の基盤となる “空気づくり” <後編>
第3回 教師のパフォーマンス力が、教室の空気をつくる <前編>
第4回 教師のパフォーマンス力が、教室の空気をつくる <後編>
第5回 授業動画で “教室の空気” を学ぶ <前編>
第6回 授業動画で “教室の空気” を学ぶ <後編> ──高知県佐川町立黒岩小学校での授業より

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