菊池省三の「コミュニケーション力が育つ教室づくり」 #4 教師のパフォーマンス力が、教室の空気をつくる <後編>

連載
菊池省三のコミュニケーション力が育つ教室づくり

教育実践研究家、教育実践研究サークル「菊池道場」主宰

菊池省三
菊池省三の「コミュニケーション力が育つ教室づくり」

社会生活において必要不可欠な「コミュニケーション力」の育成を重視する菊池省三実践。その最新進化形を紹介し、教師と子供たちとが共に成長する教室づくりについて提案する連載第4回。今回は、教師がパフォーマンス力を発揮するための10のアプローチについて考えます。

パフォーマンス力を発揮する10の具体的なアプローチ

前回、教師の自分らしさを活かした子供へのアプローチがパフォーマンス力であることを述べました。その根底には、「子供と共に授業をつくる」という思いがなければなりません。

そのように考えると、教師のもつ雰囲気や仕草、動作、構えなど非言語的な要素も含めたアプローチすべてが教師のパフォーマンス力であり、教育方法や教育技術の土台になっていると考えられます。

そこで、私が授業でパフォーマンスを行う際に意識している10の具体的なアプローチを示しましょう。

1 教師の動き~歩き方

①小走りで教室後方から戻る
②指名した後、スキップで黒板前に戻ったり、指名した子供からわざと離れたりする
③教壇からジャンプして降りる
④両手を開いて、一人の子に視線を集める動きをする
⑤子供の発言に相槌を大きく打ちながら、全体に目線を送れる位置に動く
⑥板書後、くるりと全体に向けて振り向く

2 教師の動き~スキンシップ

①握手を求める
②望ましい挙手を促す
③迷っている子、発言させたい子に挙手を促す
④前に出て発言した子の両肩に手を置き、称賛する
⑤スキンシップしながら、望ましい動きを示す(ハイタッチ、頭を近付けた話合い等)
⑥「気になる子」「困っている子」に軽くタッチして安心感を与える

3 教師の動き~指先、手

①指先だけで指示をする
②手のひらを上に向けて差し出し、指名する
③「みんな、全員」を両手で示す
④「すばらしい」を指で示す
⑤5分の1黒板等に書いたことを指し示す
⑥両手を広げるポーズで、発言への安心感を示す
⑦教師への関心や集中を促すために、あえて動きや言葉かけを止める

4 教師のリアクション

①発言している子供の一番のファンになる
②「へえっ」「なるほどねえ」など、リアクションの基本を「驚き」にする
② リアクションは面白がることを大事にする
④美点凝視で、よかった点を言葉でも示す
⑤よいリアクションをしている子も取り上げてほめる
⑥言葉かけと価値付けをセットにする

5 全体の見方

①表情の変化
②着手スピード
③自己開示のレベル(書く作業、反応するときの表情や態度等)
④その授業のキーパーソンを決める
⑤緊張と弛緩のバランスを考える
⑥「一人が美しい」行動を取り上げる
⑦「一人をつくらない」を意識させる

6 個に対する言葉かけ

①困っている子に「困ってない?」
②早とちりの子に「スピード違反」
③一度失敗した子に「心が強い」
④おとなしい子に「聞き方が誠実」
⑤意欲的な子供に「君みたいな……」
⑥「気になる子」には、「きっと1秒後に全員から拍手が送られるでしょう」など、未来予測の言葉をかける

7 個と個、個と全体をつなぐ

①よい態度をほめた後、真似したり修正したりした子供もほめる
②発言に困った子がいたら「助けられる人いますか?」と尋ね、挙手した子供をほめる
③友達の意見を笑顔で聞いている子供をほめる
④話合いのとき、自由に立ち歩いて声をかけ合っている子をほめる
⑤ペアの対話や活動時の非言語の部分を取り上げてほめる
⑥1時間の授業における変容、成長した子供を取り上げ紹介する

8 学級の盛り上げ

①称賛の拍手をリードする
②リアクションを促す
③ガッツポーズ、ハイタッチを促す
④「学級」「〇年〇組」「みんな」を主語にしながらほめる
⑤3S(すごい、すばらしい、さすが)でほめ、その理由を話す
⑥細かな動きを小刻みに入れ、スピード感を出す

9 子供の非言語への着目

①持ち物・流行に目を向ける
②子供のファッションを観察する
③芸能界情報を得ておく
④子供の会話内容を聞き逃さない
⑤子供同士の友だち関係づくりを観察する
⑥子供が書いていることに目を留める

10 安心して楽しく学べるしかけ

①誰もが答えられる簡単な問いを出す
②伏せ字で回答を示して当てさせる
③短い時間でユーモア語を入れて相談させる
④多様な答えが出る問いを出す
⑤特定の子のための問いを出す
⑥「誤答」の価値付けをする

子供の行為をプラスにとらえ、その場で拍手や握手、価値語とつなげて話すなど、価値付けてほめる。こうしたパフォーマンスを繰り返すことで、子供たちの中に価値ある行為が根付いていきます。子供たちの動きがダイナミックになり、学級が温かくプラスの空気になっていくのです。

意図的に一人の子を取り上げる。本人も嬉しくなり、周りの子も注目して、教室に一体感が生まれる。

※この連載は隔週火曜日に公開します。

取材・文/関原美和子 プロフィール写真/西村智晴


Profile
きくち・しょうぞう。1959年愛媛県生まれ。北九州市の小学校教諭として崩壊した学級を20数年で次々と立て直し、その実践が注目を集める。2012年にはNHK『プロフェッショナル仕事の流儀』に出演、大反響を呼ぶ。教育実践サークル「菊池道場」主宰。『菊池先生の「ことばシャワー」の奇跡 生きる力がつく授業』(講談社)、『一人も見捨てない!菊池学級 12か月の言葉かけ コミュニケーション力を育てる指導ステップ』(小学館)他著書多数。


菊池省三の「コミュニケーション力が育つ教室づくり」 ほかの回もチェック⇒
第1回 すべての教科の基盤となる “空気づくり” <前編>
第2回 すべての教科の基盤となる “空気づくり” <後編>
第3回 教師のパフォーマンス力が、教室の空気をつくる <前編>

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