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GWは読書で危険な旅へ!隂山英男先生の「ヤケド本」とは?

2020/5/1

どこにも行けない今年のGW。旅に出るかわりに、自分の人生を変えてしまいかねない危険な本に手を伸ばしてみるのはいかがでしょうか? 「僕は読み出すと止まらなくなるところがあって、最近は少しセーブしているんですよ」 読書とは、死ぬほど活字を追いかけることだと語る隂山英男先生に、いまの教育哲学の礎になっている本について、教えていただきました。

(『小一教育技術』2014年6月号より再構成しています)

隂山英男先生
撮影/岡本尚樹

読書とは「止まらないもの。中毒」

僕は人生で2回ほど読書中毒になったことがあるんです。変な言い方かもしれないけど、自殺したくなるくらい活字を追いかけてしまうような感覚でした。

一度目の読書中毒は、17、18歳の頃。僕は、小説よりも詩集を読むことが多かったですね。「永遠というもの。没陽いりひといっしょにってしまった海のことだ」これは、金子光晴訳のアルチュール・ランボオ。他にも、萩原朔太郎とか中原中也とか……なにせ青春時代のことですから。

大学入試は倫社で受験したということもあって、哲学書はものすごく読みました。サルトル、ハイデッガー、ニーチェ、キルケゴール……等々。西洋哲学の本は、面白かったし、いろいろなことを考える材料にはなったけれど、最後までピンとくるものがなかったんです。

「人が人を幸せにする」ある意味傲慢な教職という仕事の意味を考えた

そんな時、三木清さんの『人生論ノート』に出合いました。

その中に、『日本人のいろんな哲学の中に幸福論がない』という一説があるんです。それは、後に僕が教師になってから今までずっと底流にあるテーマをくれた言葉でした。つまり、日本の社会は、全てのものが揃っているようでいて、ただ一つ幸福だけがない。それならば、いい教育というのは、子供たちに幸福になってもらうことだ、というね。

また、この時期に一番読んだのは森本哲郎さんの本で、「旅シリーズ」は全部読んだのですが、中でも『生きがいへの旅』で書かれていることは非常に印象深いものでした。当時戦争中だったベトナムの高校生が目をキラキラと輝かせて生活をしていて、当時最も社会福祉が進んでいると言われたスウェーデンの老人たちが、ものすごく寂しい表情で過ごしている、という内容が書かれていて、一体人間の幸福って何なんだろう、という命題を突きつけられたんですね。

何となく心地いいことが幸せのように思い込んでいるけれど、実は、人間ってもっとややこしいものですよね。

最近は、子どもたちと仲良くしようみたいな教育書が多いですが、人が幸せになるというのは、そう簡単なことじゃない。それに、人が人を幸せにするなんて、ある意味傲慢でもあるわけじゃないですか。でもそこを仕事にすることの意義を、この二冊から感じました。 

教師になってからは月5万円を書籍代に

ちなみに、二度目の読書中毒にかかったのは25、26歳あたりの頃。教師になって、自分の指導力に限界を感じた時でした。月に5万円くらいかけて、ハウツー本を読みあさり、そのときにいろいろ真似をして、一番手応えを感じた指導法が、岸本裕史先生が提唱されていた「百ます計算」でした。 

日本の教育って、よく知育偏重と言われますが、実質、徳育の国なんですよね。いじめなど、子どもたちの問題行動に対して道徳的なアプローチをしようとする。でも、岸本先生の『見える学力、見えない学力』は、極めてドライに、子どもたちの生活習慣が重要なんだという大胆な発想をした本でした。ジャーナリスティックな教育論に、衝撃を受けました。

読んだらヤケドする!? 陰山先生おすすめの本と映画

僕がおすすめする本は、小手先のテクニックではない、「そこまでやるか」という、触ったら大やけどをしそうな本です。
ぜひ、覚悟して読んでもらいたいですね。

人生論ノート』(三木清著/新潮社刊)

「日本の社会は、全てのものが揃っているようでいて、ただ一つ幸福だけがない。いい教育というのは、子供たちに幸福になってもらうことだ」この本で感じたこの思いが、隂山先生の教育のテーマとなっている。

生きがいへの旅』(森本哲郎著/角川書店刊 絶版)

「人が幸せになるというのは、そう簡単なことじゃない」(隂山先生)それでも、人を幸せにするために教職に就いている意味を改めて考えさせられた本。

※現在は絶版です。

見える学力、見えない学力』(岸田裕史著/大月書店刊)

それまで道徳的なアプローチが多かった教育界で、子どもたちの生活習慣が重要なんだというジャーナリスティックな教育論に、衝撃を受けた一冊。

『新編 教えるということ』(大村はま著/ちくま学芸文庫)

「大村さんは、最も早くから自分の授業を録音し、授業改善に利用した人。声が悪いからと劇団に入って発声法を学ぶなど、徹底した努力の軌跡が刻まれています」(隂山先生)

『AさせたいならBと言え』(岩下修著/明治図書刊)

「Aしなさいと言えば子どもは受け身になるし、言わないと成り立たない場合、主体性を引き出すBという言い方を紹介した本。これで僕の声かけも変わりました」(隂山先生)

映画「学校」(提供:松竹株式会社)

「夜間高校が舞台です。いろいろな課題を持った生徒一人一人に、教師が幸福の道先案内人として関わっていく。とつとつとやっているその姿に深く共感しました」(隂山先生)

撮影/岡本尚樹

隂山英男
隂山ラボ代表。一般財団法人基礎力財団理事長。
1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。兵庫県朝来町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。近年は、ネットなどを使った個別の小学生英語など、グローバル人材の育成に向けて提案や実践などに取り組んでいる。隂山メソッド普及のため教育クリエイターとして活躍し、講演会等を実施するほか、全国各地で教育アドバイザーなどにも就任、子どもたちの学力向上に成果をあげている。著書に「だから、子ども時代に一番学習しなければいけないのは、幸福です」(小学館)「学力は1年で伸びる!」(朝日新聞出版)「隂山メソッド たったこれだけプリント」(小学館)他多数

取材・文/三谷俊之        

『小一教育技術』2014年6月号より


いかがでしたか? どこにも行けない今ですが、活字の力で遠くまで思考の旅に出かけてみるのも貴重な体験になりそうですね。

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