【高橋純教授が解説】「学び方」を身につけたその先へ 子どもの思考を深める授業をどうつくる?[後編①]
【前編①】【前編②】では、自律的に学ぶための土台となる「学習過程」について紹介しました。しかし、子どもが自分で学習過程を進められるようになれば、それで十分なのでしょうか。大切なのは、その過程で一人ひとりがどれだけ深く考え、学びを更新しているかです。後編では「見方・考え方」や思考の深まり、学習形態、向上目標を手がかりに、「深い学び」を実現する授業づくりを高橋純教授が解説します。

この記事は、「デジタルを活用したこれからの学び」の授業づくりを支える理論を、識者がわかりやすく解説するシリーズ第3回目です。記事一覧はこちら

東京学芸大学教授
高橋 純
東京学芸大学教育学部教授、日本教育工学協会会長、東京都教育委員。教育工学、教育方法学、教育の情報化などが専門。著書に『学び続ける力と問題解決―シンキング・レンズ,シンキング・サイクル,そして探究へ』(東洋館出版社)などがある。
目次
学習過程を回すだけでは「深い学び」にならない
前編では、自律的に学ぶためには、「課題の設定→情報の収集→整理・分析→まとめ→説明・発表」という学習過程を子ども自身が理解することが大切だとお話ししました。
しかし、ここでもう一つ考えなければならないことがあります。同じ学習過程で学んでいれば、どの子も同じように深く学べるのでしょうか。もちろん、そうではありません。
例えば「情報の収集」で、教科書から一つだけ言葉を抜き出す子もいれば、複数の資料をじっくり見比べて共通点や違いを見つける子もいます。「まとめ」でも、調べた事実を並べて終わる子もいれば、複数の事実を関連づけ、そこから自分なりの考えを導き出す子もいます。つまり、同じ学習過程でも、その質には違いがあるのです。
では、その質をどう高めればよいのでしょうか。私は、自律的に学ぶための基礎として、「学習過程」「見方・考え方」「学習形態」「向上目標」の4つを挙げています。学習過程が「どの順に学ぶか」だとすれば、見方・考え方は「どのように深めるか」、学習形態は「誰と、どこで学ぶか」、向上目標は「どう自分を伸ばすか」ということです。
学習過程は、いわば学びを進めるための道筋です。その道筋をたどりながら、見方・考え方を働かせたり、ICTを活用したり、必要な相手と協働したりすることで、一つひとつの活動の質を高めていくのです。
大切なのは、「子どもが自分で進めているからよい」と考えないことです。自律的に学ぶことと、深く学ぶこと。その両方を実現する必要があるのです。
「見方・考え方」は思考を深めるための技である
学習過程の質を高めるうえで、特に重要になるのが「見方・考え方」です。
「見方・考え方」と聞くと、少し難しく感じるかもしれません。しかし、私はもっとシンプルに、考えるための「技」として捉えてよいと思っています。例えば、「比べる」「つなげる」「分ける」「理由を考える」といったことです。
前編で、学習過程の基本は「事実をもとに考える」ことだと説明しました。ところが、たくさんの事実を集めても、それをただ並べているだけでは、なかなか考えは深まりません。そこで、「2つを比べてみよう」「関係がありそうなものをつないでみよう」といった見方・考え方を働かせます。すると、ばらばらだった事実の間に関係が見えてきます。
西東京市立上向台小学校の講演でも、私は情報収集をしっかり行ったうえで、こうした基本的な「技」を使うことが、最後のまとめの文章を書きやすくすることにつながるとお話ししました。
これは、子どもに「深く考えましょう」と言うのとは大きく違います。「もっと考えて」と言われても、子どもには何をすればよいのかわかりません。しかし、「この2つを比べてみたら?」「この出来事と前に学んだことをつなげられない?」と考えるための方法がわかれば、自分で思考を進めることができます。
授業の形だけをまねても、子どもは自律的には動きません。大切なのは、子どもが自分で学ぶために必要な「技」を、日々の授業の中で身につけていくことなのです。

