【高橋純教授が解説】子どもが「自分で学べる」授業へ まず身につけたい「学習過程」とは?[前編①]
1人1台端末が日常の学習道具となり、子ども一人ひとりが自分に合った方法で学ぶ授業が広がっています。しかし、ただ「自分でやってみよう」と任せるだけでは、自律的な学びは実現しません。では、子どもが自ら学びを進めるために、教師は何を教えればよいのでしょうか。「学習過程」をキーワードに、東京学芸大学の高橋純教授が、これからの授業づくりの基本を解説します。

この記事は、「デジタルを活用したこれからの学び」の授業づくりを支える理論を、識者がわかりやすく解説するシリーズ第1回目です。記事一覧はこちら

東京学芸大学教授
高橋 純
東京学芸大学教育学部教授、日本教育工学協会会長、東京都教育委員。教育工学、教育方法学、教育の情報化などが専門。著書に『学び続ける力と問題解決―シンキング・レンズ,シンキング・サイクル,そして探究へ』(東洋館出版社)などがある。
目次
自律的に学ぶには「学び方」を教える必要がある
子ども一人ひとりが自分のペースや方法で学ぶ授業が注目されています。しかし、「では、自分でやってみましょう」と言うだけで、子どもが自律的に学べるようになるわけではありません。
自分で学ぶためには、いくつかの基礎が必要です。私は大きく4つあると考えています。
1つ目は、「どの順に学ぶか」という学習過程。2つ目は、「どのように考えを深めるか」という見方・考え方。3つ目は、「誰と、どこで学ぶか」という学習形態。そして4つ目が、他人との比較ではなく、自分なりによりよいものをめざす向上目標です。これらが、自律的な学びの土台になります。
例えば、1人で考えるのか、友だちに相談するのか、どこで学ぶと集中できるのか。こうしたことを自分で判断できるのも大切な力です。しかし、それ以前に「何から始めて、次に何をすればよいのか」がわからなければ、そもそも学習を進めることができません。
ですから、最初に身につけたいのが「学習過程」です。
これは教科の内容そのものとは少し違います。社会科で「産業」を学ぶ、理科で「植物」を学ぶといった内容が変わっても、「まず情報を集め、それを整理して、そこから考えをまとめる」といった学習過程は共通する部分があります。
学習過程を身に付ければ、教師が一つ一つ指示しなくても、子どもは「次は何をすればいいか」を考えられるようになります。反対に、この学び方を教えないまま子どもに委ねれば、ワークシートに細かな手順を書き、教師が活動を制御し続けなければなりません。
自律的な学びへの第一歩は、自由にさせることではありません。一人でも学べるための「型」を身に付けることなのです。
教科を超えて使える「学習過程」の型がある
では、学習過程とは具体的にどのようなものでしょうか。
私は汎用的な学習過程として「シンキング・サイクル」を示しています。「A 課題の設定」「B 情報の収集」「C 整理・分析」「D まとめ」「E 説明・発表」を基本とし、必要に応じて振り返りや評価を行いながら循環していくものです。
これは、AからEまでを必ず一度ずつ順番に行う、という意味ではありません。
例えば、調べている途中で新しい疑問が生まれれば、もう一度課題を設定して情報を集めます。集めた情報が多くなれば、表や図に整理してみる。整理しているうちに新しいことに気づけば、さらに情報を集める。学びはこうして行ったり来たりしながら進んでいきます。
重要なのは、この流れを教師ではなく子ども自身が理解していることです。
例えば、教師が「今日は調べましょう」「次は表に整理しましょう」「では、まとめを書きましょう」と毎回指示していたら、子どもはその授業では活動できても、教師がいなくなった途端に何をすればよいかわからなくなります。
一方、「情報を集めたら、必要なら整理・分析し、そこから自分の考えをまとめる」という基本的な流れが身に付いていれば、「レポートを書いてみよう」と課題を示すだけでも、自分で動き始めることができます。
小学校高学年まで同じような学習過程を繰り返し経験していけば、細かな手順を書いたワークシートも次第に必要なくなります。西東京市立上向台小学校での講演でも、私は「そのうちこれも書かなくなります。いつもと同じパターンです、始めなさい、でできる」とお話ししました。
めざしたいのは、学習過程そのものを子どもの中に定着させることなのです。


