子どもたちが学校不適応にならないために。あたたかい学級づくりのためのショートアクティビティ
今日の学校現場では、不登校をはじめとする「学校不適応」が大きな課題となっています。子どもが学校で過ごすほとんどの時間は「学級」においてです。つまり学級集団をあたたかく、自他を尊重し合える関係にすることでストレスは軽減され、子どもは「学校が楽しい」と感じます。
そこで今回はあたたかい学級づくりのためのショートアクティビティを紹介します。
【連載】ストレスフリーの教室をめざして #05
執筆/埼玉県公立小学校教諭・春日智稀
これまでの記事をまだご覧になっていない方は、ぜひこちらもご覧ください。
<第1回目:小学校の教室で「子どものストレス」をゼロにするために。やってみよう、ストレスマネジメント教育>
<第2回目:実践! 小学校のストレスマネジメント教育~高学年の授業展開をもとに~>
<第3回目:ストレスは小さくなる? 小学校中・高学年のストレスマネジメント教育~ものの見方・考え方を変えてみよう>
<第4回目:ほっと一息 やってみようリラクゼーション法>
目次
1 なぜ今、あたたかい学級づくりが必要なのか
今日、学校が抱えている「学校不適応への対応」という大きな課題。この背景には、急激な社会の変化や地域社会関係の希薄化など様々な要因が考えられますが、子どもが「本音」を語ることが難しくなっているのではないか、と筆者は考えています。「表情は笑っているけれど、心の中では泣いている」という子どもがいたとしても、先生がそれに気づくのは簡単なことではありません。
そんな今だからこそ、あたたかい学級づくりを通して子ども一人一人の「本音」を引き出し、自他のかけがえのなさをはっきりと感じさせることが必要だと考えています。
2 ショートアクティビティの展開
①説明
何のためにこのアクティビティを行うのか、アクティビティのルール等について教師が説明します。
②アクティビティ
実際にアクティビティを体験します。
③シェアリング
アクティビティをやってみての感想などを共有します。
3 ショートアクティビティのアイディア
アクティビティ① 「こんな私です」
〇ねらい 友達との自己紹介を通して、他者理解を深める。
〇おすすめの実施時期 4月
〇所要時間 10~15分
〇準備 自由に歩きまわることができるスペース
〇先生の説明
⑴『これから、「こんな私です」というアクティビティをします。いろいろな人とじゃんけんをしながら自己紹介をします。スタートの合図で2人組をつくり、じゃんけんをしてください。じゃんけんに勝った人から、「私の名前は〇〇です。好きな食べ物は〇〇です」と自己紹介をしてください。続いて、次の人が同じように自己紹介をして、「よろしく」と握手をして別れます。これを、終了の合図があるまで繰り返します』※好きな食べ物の部分は変更可。
~アクティビティスタート~
⑵『はい、そこまでです。やってみての感想を、近くの人に話してみましょう。』
⑶ 気づいたことがあったら、発表してください。
・上手にペアを作れない子がいたら、先生がサポートしてあげましょう。
・低学年の場合には、自己紹介の話型を掲示するとスムーズです。
アクティビティ② 「バースデーチェーン」
〇ねらい 制限のある中で、集団で協力して目標を達成する。
〇おすすめの実施時期 学期のはじめ
〇所要時間 10~15分
〇準備 広いスペース
〇先生の説明
⑴『これから、「バースデーチェーン」というアクティビティを行います。みなさんの誕生日順に並んで、一つの大きな輪をつくります。スタートの合図のあとは、お話をしてはいけません。身振りだけで自分や相手の誕生日を確認しながら、協力して輪をつくりましょう。はじまりは、ここ(先生がいる位置)が1月1日にします。制限時間は、〇分です』
~アクティビティスタート~
⑵『はい、そこまでです。それでは、誕生日を確認していきましょう。順番に誕生日を教えてください。もし間違いがあっても絶対に責めずに、「ドンマイ!」と言ってあげましょう』
~誕生日確認スタート~
⑶『みなさんよくがんばりました!やってみておもしろかったことやむずかしかったことなど、発表してくれる人はいますか』
・「喋った/喋っていない」でトラブルになることがあります。先生が適切にサポートしましょう。
・制限時間内に終わらなければ、状況に応じて延長することも可です。
・特別に配慮が必要な子の様子をよく観察し、難しければサポートしてあげましょう。
アクティビティ③ 「サイコロトーキング」
〇ねらい 設定されたテーマについて語ることで、自分や他者の考えを知る。
〇おすすめの実施時期 学期はじめ
〇所要時間 15~20分
〇準備 サイコロ(グループの数だけ)・サイコロの目に応じたテーマの掲示
〇先生の説明
⑴『これから、「サイコロトーキング」というアクティビティを行います。出たサイコロの目によって、決められたテーマについて1分間お話ししてください。今回のテーマはこちらです。(テーマ例 「最近うれしかったこと」「最近こまったこと」「生まれ変わったら〇〇になりたい」「今ほしいもの」「もしも魔法が使えたら」「今ハマっているもの」など)
もし、どうしても話せない時には、パスをしても構いません。聞く人は、話す人の方を向いて、うなずきながら聞きましょう』
~アクティビティスタート~
⑵『みなさん、とても盛り上がっていましたね。やってみて、友達について新しい発見はありましたか。また、相手に話をきいてもらって、どんな気持ちになりましたか。発表してくれる人はいますか』
・話すのが苦手な子には、無理をしないように声をかけましょう。
・聞く人の態度も大切です。傾聴を促す雰囲気をつくりましょう。
アクティビティ④ 「じゃんけんいろいろ」
〇ねらい 制限がある状況で活動し、気持ちを合わせることの喜びを感じる。
〇おすすめの実施時期 学期はじめ
〇所要時間 5~10分
〇準備 特になし
〇先生の説明
⑴『これから、「じゃんけんいろいろ」というアクティビティを行います。ルールを変えて、いろいろなじゃんけんをしますよ。まずは、「普通にじゃんけん」です。最初はグー、じゃんけんポン!(何度か繰り返す)次は、「あとだしじゃんけん」です。みなさんはあとだしをして、必ず先生に勝ってください。最初はグー、じゃんけんポン!(ポン!)(何度か繰り返す)今度は、またあとだしをして、必ず先生に負けてください。最初はグー、じゃんけんポン!(ポン!)(何度か繰り返す)』
⑵『やってみての感想を、近くの友達に話してみましょう。難しかったことや面白かったことなど、発表してくれる人はいますか』
・子どもに疲れの様子が見えたり、どことなく活気がないと感じられるときにおすすめです。
アクティビティ⑤ 「聖徳太子ゲーム」
〇ねらい グループで力を合わせることの喜びを感じる。
〇おすすめの実施時期 いつでも
〇所要時間 10~15分
〇準備 特になし
〇先生の説明
⑴『これから、「聖徳太子ゲーム」というアクティビティを行います。4人1組のグループで集まって、4文字の言葉を考えてください。例えば、「おにぎり」だとしたら、4人それぞれ違う1文字だけを、同時に言います。だれがどの文字を言うか決めてください。他の人たちは、どんな言葉を言ったのか考えてください。(グループの数だけ繰り返す)』
~アクティビティ開始~
⑵『それでは、感想をグループの中で話してみましょう。難しかったことや面白かったことなど、発表してくれる人はいますか』
・声の小さい子に批判が集まってしまうことがあります。なるべく同じ大きさの声で言えるように伝えましょう。
【参考引用資料】
・『構成的グル-プエンカウンタ-事典』総編集 國分康孝・國分久子/図書文化
<プロフィール>
春日智稀(かすが・ともき)
2015年より埼玉県公立小学校教諭。体育主任・生徒指導主任・研究主任・教務主任などを担当。
ケアストレスカウンセラー/青少年ケアストレスカウンセラー。
日本生徒指導学会 日本学校教育相談学会 会員。