気になる子をチーム学校で支えるには?【特別支援入門 こう取り組めばうまくいく】③
通常学級の担任の先生は特別支援教育の知識がますます必要な時代になってきました。特別支援教育について、子どもたちや保護者とどのように関わっていくか、チーム学校でどのように取り組んでいくかなどを特別支援教育の専門家である、京都教育大学総合教育臨床センター学びサポート室講師・榊原久直先生と立命館大学産業社会部教授(前京都教育大学総合教育臨床センター長)・相澤雅文先生に対談していただきました。その内容を「特別支援入門 こう取り組めばうまくいく」の3回シリーズで紹介します。第3回の今回は「気になる子をチーム学校で支えるには?」です。気になる子をチーム学校で支える理由や手順、先生同士や他の機関と良好な関わりをもつための方法など、チーム学校で子供を支援するための方法をお届けします。ぜひチーム学校に取り組むためのヒントにしてください。

目次
多面的、専門的な視点で子どもの理解と支援ができるチーム学校
――気になる子へのサポートはチーム学校で行うことが大切だと聞きます。なぜチーム学校で支えることが重要でしょうか?
相澤 チーム学校が重要な理由は、多面的、専門的な視点で子どもの理解と支援ができるからです。学校の先生、養護教諭、スクールカウンセラー(SC)、スクールソーシャルワーカー(SSW)、またボランティアの方や学校医など様々な側面からその子を見立てていくということが大切なのです。そうすることで、より適切な理解と支援の方法に結びつけていくことができます。また、担任の先生が1人で抱え込まないように、担任の先生の負担を軽減することも理由の1つです。多様性への包摂に向けて、様々な専門的な視点からの知見を得て、子どもを理解し、支援していくことが大切と考えます。
榊原 担任の先生が1人で気になる子へのサポートをするのは非常に難しいと思います。何十人もの子どもたちがいる中で、それぞれ異なる事情を抱える子どもたちのサポートは、専門性が問われます。真面目な先生ほど、専門書に載っている診断名や障害特性、具体的な配慮内容などを勉強されますが、追い詰められて余裕がなくなると、視野が狭くなり、断定や決めつけに陥りがちです。ハウツーに終始してしまうと、専門的な支援で悪影響をもたらすこともあります。そのため、様々な視点から様々な人が関わったほうが、子どもたちの多様な側面を見ることができるのではないかと思います。
もう1つは、今の学校現場では、1人の先生に求められることが多く、難しいという点です。子どもへの対応はもちろん、上手に授業を教え、保護者対応もこなし、特別支援や不登校支援なども行い、様々なことを求められます。しかし、正直なところ、そのようなスーパーマンはなかなかいないでしょうし、疲弊してしまう先生もいるでしょう。授業は分かりやすいけれど面白くない先生、休み時間は子どもと上手に遊べるけれど授業が苦手な先生、子どもには好かれるけれど保護者対応が苦手な先生など、様々な先生がいます。そのような中で、チームで対応することで、疲弊して辞めてしまうという現状に歯止めをかけられるのではないでしょうか。
先生一人一人のよさや苦手な部分を互いに補い合うことができるようになれば、働き続けられます。ひいては、それが子どものためにもつながるのではないかと思います。先生の多様性を損なうことなく尊重していくためにも、この「チーム」という視点は大事だと考えます。
――チーム学校で発達支援的サポートをする場合、どのような手順で行うのでしょうか?
相澤 担任の先生の気付きから始まることが多いと思います。学年団があれば、その学年の中で共有していき、さらに全校規模で考える必要がある場合は、校内支援委員会に提出し、学校全体で共有化していくという流れです。校内支援委員会には、SCや養護教諭も入ってきますので、意見を聞きながら進めていきます。具体的な支援を行ってみて、「どうだったか」という振り返りを行い、効果が認められれば継続し、効果が認められなければ変更・調整していくといったPDCAサイクルで進められていきます。
このように、子どもの変化を時系列で追って変更・調整していくという方法が一般的だと思います。合理的配慮については、基本的には本人・保護者に意思の表明からスタートし対応します。しかし、学校で気付いた場合は、まずサポートを実施し効果が認められるようであれば「このようなサポートをすると効果的でしたので、これからも続けていきましょうか」という提案を学校側から行い、合意形成を行うかたち、進めていくということも必要とされています。
榊原 担任の先生が気付くことが理想的だと思います。担任の先生の立場や視点から見えにくいところもあると思いますので、他のクラスの先生や校内の他職種の先生が気付くところから始まってもよいと思います。何気ない相談や雑談的なコミュニケーションを先生同士が行っていく中で、徐々にチームとしての形になっていくのではないでしょうか。
特に、授業中などでは困っているように見えないけれど、本人は困っているという子を担任の先生がどう見立てていくかという点が難しい点です。目立つ子はサポートされやすい傾向にありますが、目立たない子はサポートにつながらないことが多いので、そこに留意していきたいものです。
「何かをする」から目立つのですが、逆に「何かをしない子」を見落とさないようにすることも大事です。例えば、授業中に手を挙げないとか、グループワークでしゃべらない、その子だけ笑っていなかったなどです。「ない」という状況の子も気になる子として意識していくとよいと思います。
相澤 SCにそうした子どもを教室に来て観察していただくことで、心理的側面からの理解・支援が進んでいくことが期待できます。
日常にいろいろなことを言える関係性を
――教員同士のコミュニケーションがスムーズにいくための留意点を教えてください。
相澤 近年、学校はボランティアの方や支援員、専門職など、様々な立場の方とチームを作っての対応が求められるようになってきました。それぞれの役割に相互に関心をもち、情報を共有していくことが大切です。また、心配なことがあれば、気軽に相談し話し合える学校風土の醸成も求められています。
榊原 先生が「手伝って」「助けて」と言い合える関係性をつくることが大事です。職業柄、支援者である以上「うまくできない」と言うことは認めがたいことかもしれませんし、自分が受け持っている子どもたちに対して苦手意識や否定的な気持ちを抱くことは、人間である以上当たり前の現象です。「担任がクラスの子にそんなことを思うなんて」「それを誰かに言うなんて」と、職業倫理観が邪魔をして言えないこともあり得るでしょう。そうすると助け合いも生まれませんし、自分自身の安心感も足りなくなります。「ちょっと聞いてよ」「困ってて」「ちょっと手伝って」といったことを、何気ない日常に言えるような関係性をつくっていかれるとよいと思います。
個人的には、サポート後、「すみませんでした」ではなく、「ありがとうございました」で終わるのがおすすめです。それは、支えた後に「すみませんでした」と言われると「気を遣わせてしまった」と感じるので、次に声をかけにくくなるためです。チームをよりよくするためのちょっとした工夫です。
――学級担任が気になる子を支援する場合、どのタイミングで管理職などに相談するのがよいのでしょうか?
相澤 基本的には、対応に困ったとき、方向性が見えなくなったときです。すぐに校長というより、教務主任、教頭あるいは、学年主任、特別支援教育コーディネーターの先生などに「どうしたらよいでしょうか」と相談してみましょう。そうすれば、「それは校長に伝えたほうがよいよ」「校内で共通理解しよう」など、判断してもらえると思います。また、日常的に折に触れて相談を行うことも、OJD(On-the-Job Development)として望ましいことと考えます。
榊原 ちょっと上の先輩などに相談するのは、もっと早めがよいと思います。個人的におすすめするのは、「どのタイミングで管理職と相談するのがよいか」という相談を信頼できる同僚にすることです。困っていることを相談されることが、実はチームづくりの一環になっていきます。また、管理職の方々も知らないうちに大きな火種になって、いきなり求められるより、早めに言ってもらったほうが、効果的なサポートができると思います。
――管理職以外にどのような人とどのように相談するのがよいのでしょうか。養護教諭やSCなどの専門家とのコミュニケーションの図り方を教えてください。
相澤 管理職以外では、基本的には特別支援教育コーディネーターになるでしょうが、養護教諭やSCなどの専門家に相談するのもよい方法です。養護教諭からは、その子どもの体調の変化や保健室をどのようなときに利用しているか、保健室に来てどのような話をしているかなどを知ることができるでしょう。養護教諭は校内の状況をよく把握している方が多いようです。
それから、SCの場合は、その子にどのような場面でその行動が見られるのか、また、その行動が起こる前にどのような状況があるのかといった情報を伝え、できれば学級での様子を実際に見る機会を設け、心理的側面からの見立てをいただけるとよいと思います。また、SSWはネットワーク構築の専門家ですので、他機関との連携が必要なときには、どのような支援機関があるかなどの情報を提示してくれることと思います。
榊原 校内で、SCやSSWとの連絡の窓口になっているSCコーディネーターの先生がいらっしゃると思います。窓口は養護教諭が多いようです。その先生が十分機能していると校内連携もうまくいきます。もし、窓口がないという小学校は窓口の先生を置かれるのがよいでしょう。
