授業の目標同様に教科の目標もまた重要!【全国小学校授業実践レポート 取材こぼれ話㉕】

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全国「授業実践レポート」 取材こぼれ話
授業の目標同様に教科の目標もまた重要!【全国小学校授業実践レポート 取材こぼれ話㉕】

田村先生の取材から連想した授業とは?

先日、國學院大學の田村学先生の取材で、その単元、その授業の目標や評価規準をシンプルに言語化し、授業で評価に活用することが大切だというお話になりました。そのお話を伺いながら、もっと大きな視点で教科の目標を捉えておく必要があるなと改めて実感したのです。まさに、そのことを感じたある授業についてお話をしてみたいと思います。

挿絵にこだわった脱線の路線修正をした先生

以前、とある授業の上手な先生に、国語の授業を見せていただいたことがありました。それは校内の研究会だったのですが、国語の名作の一つである「スイミー」の授業でした。学習指導要領、国語の低学年の「C読むことのエ」は、「場面の様子に着目して、登場人物の行動を具体的に想像すること」とありますが、まさにこれをねらいとした授業だったのです。

その授業はとても見ていて気持ちのよい、すてきなものでした。子供たちは先生の指示や問いかけもしっかり聞いて学びが進められています。授業のねらいも、時間内に実現できていました。低学年で、元気のよい子供たちなのですが、友達の意見をしっかり聞いて、同意したり、関連付けて自分なりの意見を発表したりするなど、学び合う基盤がしっかり気付かれていることも分かる、本当によいクラスでのよい授業だったのです。

ただ、1点だけ残念だなと思ったのは、授業の中盤にある一人の子供が言い出したことをきっかけに脱線して起こった、小さな論争(?)でした。

「スイミーたちと、大きな魚(まぐろ)とどっちが大きいのかな?」と、ある子供が挿絵を比べて言い出します。すると、他の子もつられて、挿絵を見比べながら、「同じくらい」とか「大きな魚のほうが大きいよ」とか、「スイミーたちのほうが大きいんじゃない」と言い始めたのです。さらに、隣の子と絵を並べて見比べる子供たちも出てきました。

研究授業ということもあったし、残り時間のこともあったのでしょう。その先生は、そのお話に少し付き合った後で、「でも今はその話ではなかったのではないかな?」というような声かけをされて、話をそこから本筋に戻したのです。

この部分だけが「もったいないな」と、私の心に引っかかって残ってしまったのでした。

教科の目標を実感できたら大きな力になる

何が引っかかったかというと、挿絵を基にした「どちらが大きいか」という授業の目標とはズレた論争を、よいきっかけと捉えていなかったことです。この学齢では、挿絵もとても重要な情報ですし、それに引っ張られてしまうこと自体は仕方ないことだと思います。しかし、国語とはどのような教科なのか、何を学ぶ教科なのかという思いがあれば、その場面も重要な学びのきっかけになったはずだと思ったのです。

小学校学習指導要領の国語の目標には、冒頭に「言葉による見方・考え方を働かせ、言語活動を通して、国語で正確に理解し…」とあります。その目標の意図を踏まえるならば、挿絵に振り回されて、「どちらが大きいか?」と考える子供に対して、私ならこう問い返したと思うのです。

「みんなのお話を聞いていると、挿絵を比べるだけではどっちが大きいか分からないみたいだね? でも、どこかに、分かるところはないのかな?」と。もちろん、子供たちの育ちによっては、「どこかに、分かることが書いてないかな?」とまで言う必要があるのかもしれません。しかし、その後の子供たちの気付きの重要性を考えたら、「書いてある」とは言いたくないところです。

少なくとも、そのクラスの子供たちは十分に育っているように見えました。ですから、最初の問い返しがあれば、本文に戻って「あ、スイミーが、『海でいちばん大きな魚のふりをして』って言っているよ」と気付く子供が出てきたはずです。

その気付きがあれば、「ああ、やっぱり本文をしっかり読めば分かるんだな」ということが実感できたでしょう。それは国語の目標、あるいは国語の本質が、子供たちの中に落ちた瞬間と言ってもよいのだと思うのです。そして、それはその後の長い長い国語の学びを続けていくうえで、彼らにとっての重要な道標になったのではないかと思います。

ベテランのよい授業を見ると、その授業、その単元、その教科の目標が常に意識されているように感じられる。
ベテランのよい授業を見ると、その授業、その単元、その教科の目標が常に意識されているように感じられる。

冒頭で触れましたが、その授業の目標は何か、評価規準は何かをシンプルに言語化して理解しておくことはとても重要です。それと同様に、あるいはそれ以上に、その教科の目標は何か、何が最も大事なのかということをシンプルに整理して、自分の中にもっておくことが、先生がその教科の授業を行ううえで、とても重要なのではないかと思ったのでした。

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執筆/矢ノ浦勝之

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