#40 子どもたちが意欲的に授業に臨めるチーム編成とは【連続小説 ロベルト先生!】

連載
ある六年生学級の1年を描く連続小説「ロベルト先生 すべてはつながっています!」

文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官

浅見哲也

いよいよ小学校生活最後の3学期が始まりました。今回は体育の時間、チーム種目であるバスケットボールの授業でもこんなひと工夫ができるという一例です。

第40話 3学期

年明けの黒板

年が明けた。いよいよ子どもたちも小学校の卒業を迎える。

家のポストを見ると、子どもたちからの年賀状が届いていた。宛名を見ると「ロベルト鉄也様」と書いてあるものも多い。私の家族には、いつからハーフになったの?と不思議がられたが、これは私と子どもたちにしかわからない秘密である。

結局、年賀状は喪中の家庭以外の全員の子どもから届いた。残暑見舞いの一件もあったので、ちょっと複雑な気持ちになったが、とても嬉しかったのは事実だ。

いよいよ小学校生活最後の3学期が始まった。

夏は科学展や創意工夫展の作品で教室が飾られたが、冬は書き初め展の作品で飾られる。私は黒板に次のようなメッセージを書いて子どもたちを迎えた。


これまで、自分の中の「真面目さ」(1学期)に「努力」(2学期)を積み重ねて、皆さんは心も体も大きく成長させてきました。しかし、この成長は自分のがんばりだけではありません。周りで支えてくれた…家族、友達、地域の人などのおかげでもあるのです。

そこで、3学期のテーマは「感謝」です。

自分は「生きている」から「生かされている」という意識で感謝の気持ちを表してみましょう。キーワードは「ありがとう」です。

また、春からは中学生になります。「は」「こそ」「も」を「今年」の後に付けて誓いを立ててみましょう。新たな目標を立てることは大切ですが、仕切り直すことや継続することも大切です。そして、強い決意をもって中学校へと羽ばたいていきましょう。

ーロベルト朝見ー

バスケットボール

バスケットボール

「今日から体育の時間はバスケットボールになります!」

「やったー!」

鉄棒やマット運動の器械運動、短距離走や持久走などの陸上運動など、体育の時間には様々な種目を行うが、サッカーやこのバスケットボールなどのゲーム運動は子どもたちからの人気も高い。

個人よりもチームの種目で気をつけなければならないことは、個々の運動量と満足度の確保である。

例えばバスケットボールは、学校以外にもスポーツ少年団のチームに属して、技能が高い子もいる。反対に、普段あまり運動をしない子は、大きなボールの扱いにも慣れていない。

こうした実態の子が混在している中で試合の勝ちにこだわったら、おそらく上手な子は、苦手な子にパスを回さずに試合を進めるだろう。かと言って勝ちにこだわるななんて子どもには無理な話だし、試合をする以上は勝ちにこだわってやってほしい。

そこで、体育の授業で大切なのは、技能を高めるとともに、勝つための作戦を立てることにある。

では、どのようなチーム編成をすれば、子どもたちが意欲的に授業に臨めるのか?一般的に考えれば、どのチームも試合に勝てる可能性を残すために均等に分けるとよい。しかし、私は思い切った策に出た。

「では、チームを発表します。全部で8チーム作りました」

子どもたちは興味津々である。

「とりあえずチームの名前は後で決めてもらうとしてAチーム。青田くん、金子くん、倉内くん、島田さんの以上4名」

「えーっ!」

想定内の驚く反応が子どもたちから返ってきた。それは通常バスケは5人でやるものという驚きではなく、名前を呼ばれた4人はバスケが得意な子ばかりだからだ。しかも、男子の中に女子が一人混じっている。

ざわめきが冷めやらぬうちにBチームの発表。

「塚越くん、中村くん、長谷川さん、花崎さん」

またどよめきが起こった。今度もまたバスケが得意な残りの子が集まっていることだ。

「では、CチームからHチームまでを発表します」

ここからは、それほど技能に差のない5人ずつのチームを6つ発表した。

「このチームで試合をしていくことにします」

そう言うと、当然「AチームとBチームは強すぎる、勝てるわけないよ」という声が上がった。無理もない話である。私は続けてルールを説明した。

「サッカーのJリーグのように、リーグを分けて試合を行います。AチームとBチームはJ1リーグとします。そして、残りの6チームをJ2リーグ3チームとJ3リーグ3チームに、今からくじ引きで分けます」

こうしてそれぞれのチームが戦うリーグが決まった。

「まずJ1リーグは1回の体育の時間内に2試合やって、2試合とも勝つか1勝1敗の場合は得点が多い方が勝ちとし、勝った方はJ1に残留、負けた方はJ2に降格します。

J2リーグは3チームがお互いに試合をして、1位がJ1に昇格、2位がJ2に残留、3位がJ3に降格します。J3リーグも三チームがお互いに試合をして、1位がJ2に昇格、残りの2チームはJ3のままとなります。

こうすると、どんどんリーグが入れ替わりますが、AやBチームとCからHチームが試合をすることになった場合には、5対0からスタートし、AやBチームのゴールは1点、CからHチームのゴールは5点とします」

「そんなのずるいよ」

今度はAやBチームから文句が出たが、そこは構わず、

「弱音を吐く前に勝ってみろ!」

と軽く払い除けた。1試合は前後半無しの5分。もし見学者が出たとしても残された人数で戦うことなど細かな点も確認した。授業の前半は作戦を立て、チームごとに作戦に合ったパス練習やシュート練習をすることにした。そして、後半はすべてのチームが2試合ずつゲームをした。

J1のAチームとBチームの試合は、ほとんどが経験者だけあって動きも速く、白熱した試合展開となった。両チームの女子3人もパワーこそ男子に負けるが、冷静にパスを男子につないで得点に結び付けている。

男子も、女子には無意識に強引な接触プレーを避けているらしく反則も少ない。1試合目は3対2でAチームが勝利し、2試合目は2対2の引き分けで、AチームのJ1残留、BチームのJ2降格が決まった。

CからHチームでは、バスケットボールがそこそこできる子がチームのキャプテンに選ばれている。そして、キャプテンを中心に作戦を立てて試合に臨んだ。もし、AやBチームのメンバーが同じチームにいたら、キャプテンには選ばれなかった子たちだろう。

また、試合の様子を見ると、AやBチームのボールの扱いには遙かに劣るが、チーム全員がボールに触れる機会があり、予想もしなかった子がシュートを決めてヒーロー、ヒロインになっている。J2リーグではDチームが1位になりJ1への昇格を決めた。

次の体育の授業では、J1とJ2それぞれでAチーム対Dチームなどハンディ有りの試合が行われた。

ここで早速奇跡が起きた。J1のAチーム対Dチームの試合で、1試合目はAチームがDチームを8対5で破ったが、2試合目でDチームが1ゴール決め、10対6でDチームが勝ったのだ。トータルで15対14でDチームがJ1残留を勝ち取ったのだ。それはそれは大喜びだった。

J2では、前回このリーグに降格したBチームが2試合とも相手に点を入れさせず、5点以上取って2試合とも勝ち、再びJ1に復帰した。このようなルールで試合を重ねていくうちに、J3からスタートしてJ1まで昇格したチームも現れた。

一連のバスケットボールの授業が終わった後に、子どもたちに感想を聞いてみた。すると、初めてシュートを決められたことが嬉しかったという感想や、たくさんボールに触れることができたのが楽しかったという感想が多く聞かれた。

ちょっとしたルールの工夫で多くの子どもたちの運動量と満足感を高めることができ、チーム編成などを均等にすることがすべてではないことを確かめられた。

次回へ続く


執筆/浅見哲也(文科省教科調査官)、画/小野理奈


浅見哲也先生

浅見哲也●あさみ・てつや 文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官。1967年埼玉県生まれ。1990年より教諭、指導主事、教頭、校長、園長を務め、2017年より現職。どの立場でも道徳の授業をやり続け、今なお子供との対話を楽しむ道徳授業を追求中。

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