鉄棒運動で基礎感覚を高めるためには、何をしたらいいの? 【使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業 #51】

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平川 譲
使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業

鉄棒は、どの学校の校庭にも必ず設置されている遊具です。準備する必要がなくいつでも取り組める鉄棒運動は、「回転」腕支持」逆さ姿勢」体幹の締め」といった、様々な運動に必要な基礎感覚を高めることができ、これらを高めておくことで、中・高学年の学習にスムーズに入っていくことができるのです。今回は低学年から基礎感覚を高められる「鉄棒あそび」を紹介します。

執筆/東京都公立小学校教諭・今田菜美
監修/筑波大学附属小学校教諭
 体育授業研鑽会代表
 筑波学校体育研究会理事・平川 譲

1.鉄棒運動を始める前に

鉄棒運動は技の「できた」「できない」が周りの子にはっきりと見えるため、「できない」ことにより苦手意識をもちやすい運動です。多くの子が自分にもできるかもしれないという気持ちをもち、鉄棒って楽しいと感じながら学習できる工夫が必要です。

鉄棒運動も、体育班で行うとよいでしょう。その理由は、同じくらいの体格の子と運動することで、仲間同士のお手伝いがしやすくなるからです。また、メンバーを変えずに活動することで、仲間の技能の伸びに気付きやすくなるという利点があります。

2.まずは、この技に挑戦!

今から紹介するいくつかの技をたくさん経験させておくことで、今後の鉄棒の学習につながる基礎感覚を高めることができます。

① とび上がり → つばめ

図説 とび上がり → つばめ

鉄棒の上に跳び上がり、肘をまっすぐ伸ばし、姿勢を維持します。
鉄棒を上からしっかりと握って、肘や手首に力を入れて体を支えます。胸を張って前方を見るようにします。肘を曲げたり、体を前方に傾けすぎたりしないようにします。
体を支える際に鉄棒が正しい位置にないと、今後の技の習得につながりにくくなります。おへその下(骨盤)の位置に鉄棒が接しているかを確認させます。

② 前回り下り

図説 前回り下り1

つばめの姿勢から目線をおへそに向け、頭を下げながら、体を丸めるように前に回転して着地します。途中で鉄棒を順手から逆手に握り直さないように注意します。
恐怖心から前に倒れることができない子には、教師が鉄棒を挟んで前に立ち、脇あたりを支えながら、「大丈夫だよ、怖くないよ」といった声かけをして、ゆっくりと前に倒します。

図説 前回り下り2

また、回ることができない子には鉄棒を挟んだ横に立ち、胸を支持しながら回してやります。この時、鉄棒を握った手を離さないように声をかけます。

図説 前回り下り3

慣れてきたら、何回か続けて前回り下りをします。
10秒間に何回回れるかに挑戦させると、楽しみながら経験値を高めることができます。

③ 自転車こぎ

図説 自転車こぎ

つばめの姿勢から、自転車をこぐように足を動かします。
はじめは5回、そして10回と回数を増やしたり、10秒間で何回こげるかに挑戦させたりします。

④ なまけもの

図説 なまけもの

手は横向きにして鉄棒を持ち、足を片足ずつ鉄棒に絡めます。この時、膝の裏をかけて、交差させるようにして鉄棒に引っかけます。
5秒~10秒と秒数を増やしたり、友達と口じゃんけんをしたりしてもよいでしょう。片手を鉄棒から離せれば、手のじゃんけんも可能です。
ぶらさがる運動は、体が軽い低学年のうちに経験させておくと、楽しみながら経験値を高めやすいし、教師の補助も容易です。

⑤だんごむし

図説 だんごむし1

腕と腰・膝を曲げ、鉄棒にぶら下がります。持ち手は、順手でも逆手でもかまいません。この姿勢を、5~10秒間保持できるように挑戦させます。

図説 だんごむし2

力の入れ方が分からずに腕が伸びてしまう子がいます。

図説 だんごむし3

このようなときは、教師が膝を胸につけるように持ち上げてやり、力の入れ方を少しずつ理解させるとよいでしょう。

3、ちょっとのアレンジで、より楽しもう!

子どもはリレーが大好きです。鉄棒を使ったリレー遊びで、楽しく基礎感覚を高めていくことができます。
リレーは4~5人のグループ(体育班)を使って行います。

前回り下りリレー①
前回り下りを3回したら、次の人と交代します。チームの仲間が全員終わったら勝ちです。

前回り下りリレー②
1人3回ずつ前回り下りをし、1分間で何人できるのかを競います。

自転車こぎリレー
10回こげたら次の人に交代します。
1分間で何人できるかを数えたり、班全員が早く終わるかを競ったりします。

だんごむしリレー
リレー形式でだんごむしを行います。
地面に足が着くか、顔が鉄棒より下がったら次の人と交代です。
できるだけ長く続けられたチームが勝ちです。

リレーをする場合は、必ずルールを確認してから行いましょう。
例えば、
①次の人は、運動していた人とハイタッチをしてからスタートする
②チームのみんなで回数や人数を数えたり、応援したりする

といったルールを決めておくことで、事故や怪我を防ぎながらも楽しく鉄棒をすることができます。

次回は、「ふとんほし」を紹介します。様々な鉄棒あそびの教材で、子どもたちの「できそう」「できた」といった気持ちを高め、鉄棒が楽しい、授業が待ち遠しいと感じられるようにしていきましょう。

【参考文献】
木下光正(2008年)『小学校体育 写真でわかる運動と指導のポイント 鉄棒』大修館書店
筑波大学附属小学校体育研究部(2020)『できる子が圧倒的に増える!お手伝い・補助で一緒に伸びる筑波の体育授業』明治図書出版

イラスト/佐藤雅枝

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今田菜美教諭

執筆
今田 菜美
東京都公立小学校 教諭
1991年大阪府生まれ。学びの系統性を考えることで、子どもたちの「できそう・できた」を保障する授業を目指して、日々実践中。


平川譲教諭

監修
平川 譲
筑波大学附属小学校 教諭
体育授業研鑽会 代表
筑波学校体育研究会 理事
1966年千葉県南房総市生まれ。楽しく力がつく、簡単・手軽な体育授業を研究。日本中の教師が簡単・手軽で成果が上がる授業を実践して、日本中の子どもが基礎的な運動技能を獲得して運動好きになるように研究を継続中。『体育授業に大切な3つの力』(東洋館出版社)等、著書多数。


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