合唱大会で金賞を目指そう!子どもの「自主性」と「考える力」を育む指導のポイント【若手先生の航海図】

秋から冬にかけて行われる合唱大会は、学級が一つの目標に向かって力を発揮する絶好の機会です。しかし、本番が近づくにつれて、教師が焦り、練習内容を細かく指示してしまうことはないでしょうか。
4月から半年以上が過ぎたこの時期、子どもたちには、自分たちで話し合い、協力して活動を進める力が育っています。そこで、優秀なクラスとして称されること(よく金賞などと言われます)を目標に掲げ、子どもたち自身が課題を見つけ、工夫を重ねていく合唱大会を考えてみましょう。
執筆/環太平洋大学准教授・内田仁志
協力/教師実践研究塾(実践塾)
目次
秋の学級経営は、子どもたちに活動を任せよう
4月からの成長を、合唱大会で発揮しよう
4月の学級づくりでは、教師が話合いや係活動の進め方を教え、子どもたちが協力して活動する経験を積み重ねてきました。特に大切にしたいのは、教師の指示に従うだけでなく、自分の考えを根拠とともに伝え、仲間の意見を聞きながら、よりよい方法を探る経験です。こうした積み重ねがあってこそ、2学期には子どもたち自身が話合いを進め、役割を分担して活動できるようになります。合唱大会は、その力を発揮する機会です。
リーダーを中心に、練習の課題や進め方を子どもたち自身で考えます。「音程がそろわない部分がある」「声が小さくなるところがある」「歌詞の意味をもっと考えたい」といった意見が出てくれば、改善方法を話し合います。パートごとに練習するのか、音程を一つずつ確かめるのか、歌詞を読み直すのか。課題に応じて練習方法を考えることができます。
休み時間にも、自主的に話し合う子どもたち
実際の学級でも、子どもたちが休み時間などを利用して自主的に集まり、話し合う姿が見られました。学級全体で相談することもあれば、係ごと、パートごとに集まることもあります。教師から指示されたからではなく、「もっとよい合唱にしたい」という思いから、自分たちで必要な活動を考えていたのです。
このような姿が見られるようになると、合唱大会の練習は、教師が決めたことをこなす時間から、子どもたち自身が合唱をつくり上げる時間へと変わっていきます。
任せるからこそ、教師が責任を持つ
ただし、「子どもたちに任せる」ことは、教師が判断や責任を手放すことではありません。子どもたちの意見を尊重しながらも、最終的な判断と責任は教師が担います。「最後は先生が責任を持つから、思い切ってやってみよう」と伝えられる関係があれば、子どもたちは失敗を恐れずに意見を出し、新しい方法にも挑戦できます。
子どもたちが考えた方法でうまくいかなかったとしても、それを子どもたちの責任にしてはいけません。教師が必要な支援を行い、次の挑戦につなげます。
自分たちで決めたことに安心して挑戦できる。その環境を保障することも、教師の重要な役割です。
金賞を目指すことで、学級の力を高める
高い目標が、考える力と工夫する力を育てる
「金賞を目指そう」という目標には、子どもたちの活動を具体的に変えていく力があります。ただ上手に歌うのではなく、「どうすれば、もっとよい合唱になるだろう」と考えるようになるからです。
例えば、練習を重ねても音程がそろわない部分があったとします。同じところを何度も歌うだけでは、なかなか改善しないことがあります。そこで、音を一つずつ確かめたり、パートごとに歌ったりする方法を考えます。歌詞の意味を調べたり、上手な合唱を聴いて表現の仕方を研究したりすることもできます。
こうした活動には、調べる、話し合う、計画する、試してみる、振り返る、改善するという過程があります。優勝という目標は、単に順位を競うためのものではありません。高い目標に挑戦するからこそ、子どもたちは考え、工夫し、仲間と力を合わせるようになるのです。
動画で確かめる、自分たちの合唱のよさと課題
自分たちの合唱をよりよくするためには、ICTを使った振り返りも役立ちます。
小グループや学級全体で歌う様子を動画撮影し、子どもたちと一緒に再生します。すると、歌っているときには気付かなかったことが見えてきます。
「ここは声がそろっていてきれい!」「この部分は、もう少しタイミングを合わせよう」自分たちの合唱を客観的に確かめることで、次の練習で取り組みたいことが具体的になります。
ここで注意したいのは、ICTを使う目的です。動画を撮ること自体が目的ではありません。今の合唱の課題を見つけたり、パートで息を合わせたりするために活用します。
また、友達の歌声を批判するのではなく、よいところを見つけ、改善点についても前向きで具体的な言葉で伝えることを、あらかじめ子どもたちと確認しておきます。
話合いが行き詰まったときこそ、教師の出番
子どもたちに任せていると、話合いが行き詰まったり、練習が思うように進まなかったりすることもあります。そんなとき、教師がすぐに答えを示してしまえば、子どもたちは自分たちで考える機会を失います。しかし、何もせずに見守るだけでは、話合いがまとまらなくなることもあります。
そこで教師に必要なのが、活動の着地点を見通した「腹案」です。
例えば、練習方法をめぐって意見が分かれたときには、「今、何に困っているのかな」「合唱をもっとよくするためには、どんな方法が考えられるかな」と問いかけます。
話合いが本来の目的から離れそうになったときには、「今の話合いは、みんなが目指している合唱につながっているかな」と、共通の目標を確かめます。
教師が結論を押し付けるのではなく、子どもたち自身が考え直すための視点を示すのです。そして、子どもたちが理由を考え、納得できる方法を選んだなら、「そこまで考えたのなら、先生も賛成だよ。うまくいかなかったときは先生も一緒に考えるから、やってみよう」と背中を押します。
教師は活動の見通しを持ちながら、必要な場面で問いかけ、方向を整える。子どもたちには「自分たちで考えて決めた」という実感が残ります。

