友達に「それ、おかしいよ」って言える?~誰もが自分の思いを伝えられるクラスをつくろう~【若手先生の航海図】

友達が間違ったことをしている。自分は「それは違う」と思っている。そんなとき、子どもたちは友達に自分の思いを伝えられるでしょうか。授業で「私は違う考えです」と言うことと、実際の生活の中で友達に「それ、おかしいよ」と言うことには違いがあります。相手との関係があります。「こんなことを言ったら嫌われるかもしれない」「後で気まずくなるかもしれない」と考えることもあるでしょう。10月。学級開きから半年がたち、子ども同士の関係も深まってきました。だからこそ、自分の思いを言えることと、友達の言葉を受け止められることの両方を育てていきたい時期です。
執筆/環太平洋大学准教授・内田仁志
協力/教師実践研究塾(実践塾)
目次
「それって、おかしいよ」と言えますか?
一年生が考えた「勇気を出して言うこと」
以前、一年生の道徳の研究授業で、こんなお話がありました。
休み時間、子どもたちが滑り台に並んでいます。そこへ、まさくんがやってきて、友達の前に横入りしました。並んでいた子どもたちは「いやだな」「ずるいよ」と思っています。でも、誰もまさくんには何も言いません。
つぎの順番で、まさくんは「ぼく」の前に入ろうとしてきました。しかも、「この前、消しゴムを貸してやったからいいだろう」と言います。
「ぼく」は困りました。でも勇気を出して言いました。
「やめてよ。みんなが並んでいるのに、それって、おかしいよ」
すると、まさくんは下を向き、やがて「ごめんね」と言って列の後ろへ並びました。
この授業で一年生たちは、「悪いことは自分で勇気をもって言うこと」「いじわるをされたら自分の言葉で言う」「自分ではっきり言うと、いい気持ちになる」と考えました。
一年生でも、ここまで考えるのです。子どもたちは、よいことと悪いことを判断する力をもっています。そして、それを友達に伝えるには勇気がいることもわかっています。
分かっていても言えないのはなぜでしょう
しかし、実際の学級では「いけない」とはわかっていても、言えないことが多いです。
仲のよい友達だから言いにくい。みんなから人気のある子だから言いにくい。いつも周囲をまとめている子だから言いにくい。そして、言った後に関係が悪くなるのが心配で、黙ってしまうこともあります。
この記事(いつも同じ子が話していませんか?~みんなが安心して意見を言える話合いをつくろう~)では、いつも同じ子が話し、周囲の子が合わせてしまう学級の空気について考えました。授業や話合いで安心して違う意見を言える経験は、ここにつながっています。
「友達と違うことを言っても大丈夫」という経験を積んできた子は、生活の中でも自分の思いを伝える一歩を踏み出しやすくなります。
目指したいのは「誰にでも言える」関係
「あの子には言えるけれど、この子には言えない」。
そんな関係が固定していないかを見ていきましょう。
相手によって自分の考えを変えるのではなく、必要なときには誰に対しても自分の思いを伝えられる。そのためには、言う側の勇気だけに任せるわけにはいきません。
どう伝えるか。そして、言われた側がどう受け止めるか。
この二つを、日常の中で育てていきます。
相手を傷つけずに、自分の思いを伝える
「人」ではなく「行動」について伝える
「それ、おかしいよ」と言うとき、大切にしたいのは、相手そのものを否定しないことです。
「○○君はずるい」
「あなたはいつも自分勝手だ」
この言い方では、相手そのものを責めることになります。
道徳の教材で「ぼく」が言ったのは、「みんなが並んでいるのに、それって、おかしいよ」でした。
問題にしているのは、まさくん自身ではなく、「みんなが並んでいるところへ横入りする」という行動です。
日常のトラブルでも、「あなたがおかしい」と相手を責めるのではなく、「今のやり方は違うと思う」「私はこうしてほしい」と、行動について自分の考えを伝えられるようにしていきます。
相手に届く言葉を考える
自分の思いを伝えるときには、何を言うかとともに、どのように言うかを考えることも大切です。強い口調で「やめろよ」と言えば、内容が正しくても相手は反発するかもしれません。みんなの前で言うより、二人で話した方が伝わることもあります。
教師がすべての言い方を教える必要はありません。
「今はどんな言い方がいいかな」「どう言えば相手に伝わるかな」
と問いかけ、子ども自身に考えさせます。
相手や場面に応じた言葉を選ぶ経験を重ねることが、自分の思いを適切に伝える力につながります。
「自分はどう思うか」を言葉にする
友達に何かを伝えるとき、「みんなが言っているから」「先生が言っていたから」と誰かの言葉を借りることがあります。
そこで大切にしたいのが、「私はこう思う」です。
「私は、それは違うと思う」「私は、順番を守ってほしい」「私は、最後まで話を聞いてほしい」
自分がどう感じ、どうしてほしいのかを自分の言葉で伝えます。
「自分の考えをもつ→話す」という経験を、今度は実際の友達との関係の中で使っていきます。
(具体的な内容については、こちらの記事を合わせてご覧ください)
