いつも同じ子が話していませんか?~みんなが安心して意見を言える話合いをつくろう~【若手先生の航海図】

2学期になると、子ども同士の関係が安定し、学級も落ち着いてきます。1学期には時間がかかっていた話合いも、ずいぶんスムーズに進むようになります。教師にとってはうれしい変化です。ところが、少し離れたところから話合いを見てみると、気になることがあります。「いつも同じ子が最初に発言している」「その子が『こうしよう』と言うと、みんなが賛成する」「話合いが早くまとまる」。そんなことはないでしょうか。話合いが短時間でまとまっていると、教師も「このクラスは話合いが上手になった」と感じます。しかし、その陰で、自分の考えを言わずに友達の意見に合わせている子がいるかもしれません。2学期だからこそ、話合いの「まとまり方」に目を向けてみましょう。
執筆/環太平洋大学准教授・内田仁志
協力/教師実践研究塾(実践塾)
目次
「話さない」のではなく、「話せない」のかもしれない
いつも同じ子の意見で決まっていませんか
学級には、話すことが得意な子がいます。考えをすぐにまとめ、みんなの前でも堂々と発言できます。こうした子の存在は、話合いを進めるうえでも大きな力になります。
一方で、その子の発言がいつも話合いの出発点になると、周囲の子が自分で考える前に「それでいい」となってしまうことがあります。
例えば、学級会でイベントの内容を話し合っているとします。教師が「何をやりたいですか」と聞くと、すぐにAさんが「ドッジボールがいいです」と発言しました。すると、「僕も」「私も」と続き、あっという間にドッジボールに決まりました。
一見、順調な話合いです。
そこで教師は少し考えてみます。
「本当に全員がドッジボールをやりたかったのかな」
早くまとまったときほど、まだ言葉になっていない考えがなかったかを見ることが大切です。
「あの子には反対しにくい」という空気
いつも同じ子の意見を中心に話合いが進んでいると、やがて子ども同士の間に見えない力関係が生まれることがあります。
「あの子が言ったから、それでいいよ」
「反対すると面倒だから、賛成しておこう」
子どもが実際にこう口にするとは限りません。周りを見て手を挙げる。何か言いかけてやめる。友達の意見にすぐ合わせる。そんな小さな姿に表れることがあります。
教師が見るべきなのは、発言している子だけではありません。誰がいつも発言しているのか。誰がいつも賛成しているのか。誰の意見には反対意見が出ないのか。 話合いの中の関係まで見ていきます。
教師が気づきたい「沈黙」
さらに気を付けたいのは、子どもが何も言わなくなることです。
「何でいつもあの子が決めるの?」と不満を口にしているうちは、その子の思いは教師にも見えます。しかし、「言っても仕方がない」「どうせ変わらない」と感じるようになると、自分の考えを出さず、誰かが決めたことに従うようになります。
教室でトラブルが起きていない。話合いも早くまとまる。それでも安心はできません。
発言している子を見るとともに、発言しなくなった子を見る。
その視点をもつことで、学級の話合いの見え方が変わってきます。
全員が話せる「入り口」をつくろう
いきなり全体で話し合わせない
いつも同じ子が最初に発言するのであれば、話合いの始め方を少し変えてみます。
教師が「どう思いますか」と問い、すぐに挙手を求めると、考えをまとめるのが速い子が有利になります。その子の発言を聞いてから考え始める子も出てきます。
そこで、自分で考える→ペアで話す→全体で話すという段階をつくります。
まず一人で考える時間を取る。次に隣の友達と話す。その後で全体の話合いに入ります。これだけでも、普段は全体の前で発言しない子が、自分の考えを言葉にする機会をもてます。「話してください」と求めるだけではなく、話しやすい入り口を教師がつくることが大切です。
「まず書く」時間をつくる
話す前に、自分の考えを短く書く方法も有効です。
「賛成・反対」だけでも構いません。「私は○○がいい。理由は……」と一文書かせてもよいでしょう。
先に自分の考えをもっていれば、最初に発言した子の意見を聞いて、そのまま「私も同じです」と流れることを防ぎやすくなります。
書いた後にペアで伝え合えば、「自分とは違う考えの人がいる」ことにも気づきます。その違いをもったまま全体の話合いに入ることで、話合いに複数の考えが出やすくなります。
教師は「誰が話したか」を見よう
話合いになると、教師はどうしても「どんな意見が出たか」に意識を向けます。そこで、もう一つ見るものを増やします。
「今日は誰が話したか」
いつも発言している子は誰か。今日はまだ話していない子は誰か。発言しようとしてやめた子はいなかったか。
毎回、全員に発言させる必要はありません。それでも、何回か話合いを振り返ったとき、いつも同じ子だけで進んでいることに教師が気づければ、次の話合いのつくり方を変えることができます。
少数意見が消えない話合いをつくる
違う意見が出たときこそ教師が拾う
「Aがいい人?」と聞くと、ほとんどの子が手を挙げた。ところが、一人だけBがいいという子がいる。
そんなときこそ、その意見を大切にします。
「○○さんは違う考えなんだね。聞いてみよう」
教師がこう返せば、その子の考えが学級全体の話合いの中に位置付きます。
ここで大切なのは、少数意見を特別扱いすることではありません。「みんなと違う考えも、話合いを進めるために必要な考え」として扱うことです。
「そんな考え方もあるんだ」と気づくことで、多数側の子どもも自分の考えを見直すことができます。
すぐに多数決にしない
意見が二つに分かれると、「では多数決で決めよう」としたくなります。もちろん、最後に多数決が必要な場面もあります。
その前に、互いの理由を聞く時間をつくります。
「Aがいいと思ったのはなぜ?」
「Bを選んだ人は、どんなことを考えたの?」
理由を聞いてみると、「それならBもいいね」と考えが変わることがあります。新しいC案が生まれることもあります。
人数だけを比べる前に、なぜそう考えたのかを聞き合う。 その経験が、少数の意見も安心して出せる話合いをつくります。
教師が「違う考え」を話合いに戻す
子どもの話合いでは、教師が早く結論を出そうとしないことも大切です。
一つの意見にまとまりそうなときに、「さっき、違う考えも出ていたね」と戻してみる。発言しにくそうな子がいれば、「ペアではどんな話をしていた?」とつないでみる。
教師が少し立ち止まることで、消えかけていた意見がもう一度話合いに戻ってきます。
いろいろな考えが出ても大丈夫。そのことを教師自身の進行の仕方で伝えていきましょう。
「みんなで決めた」の中身を確かめよう
「反対なし」で終わらせない
「この案でいいですか」「反対の人はいませんか」
誰も手を挙げない。そこで「では決まりです」と進めることがあります。
そんなとき、一度教室を見渡してみましょう。周りの様子を見てから手を挙げた子はいなかったでしょうか。何か言いたそうにしていた子はいなかったでしょうか。
「反対しなかった」という事実だけで話合いを終えず、一人一人が自分の考えをもって参加できたかまで見ていきます。
話合いそのものを振り返る
話合いの最後には、決まった内容とともに、話合いの仕方も振り返らせます。
「今日は自分の考えを言えたかな」
「友達の考えを聞いて、なるほどと思ったことはあったかな」
「いつもと違う人の意見も聞けたかな」
こうした振り返りを重ねると、子ども自身も「みんなで話し合う」とはどういうことなのかを考えるようになります。
