【小学校体育】「みんな同じ」から「自分に合った」へ!ボール運動(ソフトバレー)で実践する「個別最適な学び」

執筆/国立学園小学校教諭・河田侃也
体育の授業で「みんなが楽しめるように」と同じルールを設定することは、本当に「誰一人取り残さない」ことにつながるのでしょうか。本記事では、ソフトバレーボールの授業実践を通して、全員同じルールから脱却し、子供自身が学び方を調整する「ルールダイヤル」の仕組みをご紹介します。一人一人が運動の楽しさを味わえる、体育における「個別最適な学び」のヒントを探ります。
【「みんな同じ」から「自分に合った」ルールへ】
体育の授業において、「みんな同じルール」から脱却し、子供自身が学び方を調整する「自分に合ったルール」へと転換することが、体育における「個別最適な学び」であり、真の意味で「誰一人取り残さない」授業につながります。
例えば、ソフトバレーボールなら、ボールに触れる機会を増やすために人数を増やしたり、ラリーを続けやすくするために返球できる回数を増やしたりします。こうしたルールの工夫は、子供たちがゲームを楽しむために大切なものです。「3回以内に返球する」というルールがあったとします。「もっとテンポよく3回で返したい!」と思う子がいる一方で、「3回で返すのは難しいから、もう少し時間がほしい」と思う子もいるかもしれません。また、「サービスはコートの中央から」と決めても、その位置からではネットまで届かない子がいるかもしれません。一人一人の実態が違うのであれば、一つのルールだけで全員に合わせることにも限界があるからです。

「個別最適な学び」を体育で考える
令和3年答申を踏まえ、文部科学省は「個別最適な学び」を、「指導の個別化」と「学習の個性化」という二つの側面から整理しています。体育の授業に置き換えて考えてみると、私は、「一人一人が、自分に合った方法を選びながら、運動の楽しさや喜びに近づいていくこと」が、個別最適な学びの一つの姿ではないかと考えています。もちろん、教師が子供一人一人に合わせて支援することも大切です。しかし、それだけではありません。
● 自分に合ったルールを選ぶ
● 自分たちに合った作戦を選ぶ
● 自分たちに必要な課題を選ぶ
というように、子供自身が学び方を調整できる環境をつくることも重要です。
「全員同じルール」から「自分に合ったルール」へ
ソフトバレーボールを簡易化したゲームを考えてみます。
・ボールを相手コートに落としたら1点
・コートの中は4人
・ボールは3回以内に返球する
・サービスは自分のコートの中央から行う
このようなルールでゲームを始めることはできます。しかし、ここで終わりにはしません。ゲームをしてみると、
3回だと、ちょうどいい!
4回にした方がラリーが続きそう。
サービスが届かないから、もう少し前から打ちたい。
キャッチできたら、もっとラリーが続きそう。
など、一人一人、そしてチームごとに違った「困り感」や「もっとこうしたい」という思いが生まれてきます。そこで、私は「クラス全員に同じルールを適用する」のではなく、「コートごとにルールを選択できる」という方法を取り入れています。
「ルールダイヤル」で自分たちのゲームをつくる
私は、この仕組みを「ルールダイヤル」と呼んでいます。ゲームの特性を崩さない範囲で、子供たちが自分たちに合ったルールを選択します。
例えば、
① キャッチ なし ⇔ 1回まで ⇔ 2回まで
② 返球回数 3回 ⇔ 4回 ⇔ 5回
③ コート内の人数 3人 ⇔ 4人 ⇔ 5人
④ サービスの位置 後ろ ⇔ 中央 ⇔ 前
というように、ゲームの状況に応じて「ダイヤル」を回すようにルールを調整します。大切なのは、教師が一人一人に正解のルールを与えるのではなく、子供たち自身が「自分たちにとって、どのルールがちょうどよいのか」を考えることです。

また、授業の中では、3つのボールを子供たちに選択させていきます。
① レクリエーションボール
② ビニールバレーボール
③ 風船バレーボール



選択したボールをもとに、チームをつくっていきます。チーム編成も教師が一方的に決めるのではなく、子供たちからリーダーを募り、リーダーを中心に考えていきます。その際、「どこかのチームだけが強いと、みんなが楽しめるかな?」「みんなが楽しめるチームにするには、どうしたらよいかな?」と問いかけ、子供たち自身がチーム編成について考えられるようにします。最終的には教師も一緒に編成を確認し、単元後半は、そのチームでゲームに取り組みます。
運動の特性を見失わない工夫
ここで、重要なポイントがあります。「個別最適=何でも自由に変えていい」ではありません。ルールを工夫するときには、その運動がもつ特性を見失わないことが大切です。例えば、ソフトバレーボールはネット型の運動です。だからこそ、「ボールを落としてもいい」というルールにしてしまうのではなく、「キャッチを認める」「返球回数を増やす」「人数を調整する」など、ネット型のゲームとしての面白さを残しながら、子供たちが参加しやすいように調整することが重要になります。
つまり、「運動の特性を残しながら、自分たちに合ったルールを選ぶ」ということです。
「ゲーム→気付き→ルールの選択→ゲーム」の往還
【参考資料】
・小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 体育編
・個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に関する参考資料 文部科学省初等中等教育局教育課程課

執筆
河田侃也(かわた なおや)
・国立学園小学校教諭
・令和4年度東京教師道場部員
・令和6年度第14期NPO健康・体育活性化センター小学校体育研究員
・令和7年度東京都小学校生活科・総合的な学習の時間教育研究会研究員
