「よい授業」は誰のため? 自分のため?【「授業準備が間に合わない!」ピンチから学んだ授業づくり/先輩教師の体験談#12】

日々様々な業務に追われている先生の中には、「授業準備の時間を確保できない」という悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。しかし実際にそうした局面にどのように対峙し、ピンチを乗り越えればよいのでしょうか。本連載は、授業準備が困難なときに先生方がどのように対処したのか、成功例そして失敗例を赤裸々に語っていただくリアル体験談集です。ピンチに直面したからこそ得られた気付きや学びに加え、授業準備の効率化につながるアドバイスもご提案いただきました。 今回は、横浜市立小雀小学校 江原和宏先生の体験談(後編)です。
江原和宏先生の体験談(前編)「他教師との連携の難しさと重要性を認識した授業」はこちら
目次
体験談 ③ 教師も子供目線で一緒に考えることの大切さを学んだ【4年生・算数】
保護者対応&児童指導でつぶれてしまった授業準備の時間
4年生の担任だったとき。1~2時間目は専科担当の授業がありました。
担任の自分は空き時間ということもあり、そこで授業準備をすると決めていました。しかし、出勤すると保護者から連絡がほしいという電話が入り、連絡を済ませた後も、児童指導に時間を取られ、予定の授業準備をすることができませんでした。そしてそのまま3時間目以降の授業へ突入することになったのです。
授業は、算数「わり算の筆算」。
前時に指導した内容は覚えていたため、急いで本時の「めあて」と「ねらい」を教科書で確認。「ねらい」は「3けたのわり算であっても、2けたの場合と同じように考えることができる」となっていました。提示資料などは用意できず、必要な部分のみデジタル教科書を活用することにしました。
授業の導入では、いつものように前時の学習内容の確認をするところから始めました。すると、習熟度に差があったので、すぐに本時の学習に入らず、前回行った2けたのわり算の筆算のやり方を、近くの子供同士で確認する時間を取ることにしました。
その後、その日の学習問題を板書。
前回と違うところはどこか子供たちに問いかけると、「3けたになった!」との反応。そこで、今日の「めあて」を板書し、自力解決の後に、学級全体で解き方を考え、解説する旨を伝えました。とはいえ、私自身の教材研究も浅かったため、教師が解説するのではなく、子供が前に出て自分の考えを伝え合う時間を多く取るような授業展開にしようと考えました。

子供たちが考察・解説を行い、教師も一緒に考える授業でねらいを達成
そして全体で解き方を考える時間になると、多くの子が「みんなの前で説明したい!」「自分も前に出てやりたい!」と意欲的に手を挙げ出しました。いつもよりも積極的に自分の考えを伝えようとする場面が見受けられ、驚かされました。
さらに私自身も手探りのまま授業を進めている状態だったので、子供の解説を聞きながら「なるほどそういう考えもあるのか」「ああ、前回と今日はここが違うのね」「でもこの場合はどう考えるんだろう」と、子供目線で一緒に考え、授業を楽しんでいました。
気が付くと、前回の学習内容をベースに解決方法を子供自身が考察し、想像よりもはるかに多様な考えを引き出せているとわかりました。私が教えるのではなく、子供たちの考えに委ねることで、結果的に本時の「ねらい」を達成できていたのです。
授業の終末では、子供が自力で問題を解決できるようになったか確認するために再度問題を解かせ、私は机間指導し、本時の学習内容が定着したと思われる子には、周りの友達に教えるように伝えました。
「教師がつくる授業」から「子供たちがつくる授業」へ
自らの教材研究不足から、図らずも子供たちに委ねる時間が多くなってしまったわけですが、この授業を通じて「子供たちが授業をつくる」ことのすごさを体感しました。これまでは、「授業は教師がつくるもの」「教科学習は教師がしっかりと教えることが大事」と捉えていたのだと思います。もちろん教師が授業の「ねらい」を明確にすることは欠かせませんが、子供は自分なりの考えをもち、伝え合うことでよりその考えを深めていけるということを学ぶことができました。そして今では、教師は教えるだけでなく、子供と同じ視点に立ち、一緒に考えることも大切であると思っています。
また、授業は単に子供たちが積極的に発言しているから、よいというものではないことにも気付かされました。導入の段階で、前時の積み重ねができておらずつまずいている子供もいました。一方で、展開の部分で、自分の考えを学級全体の前で解説しようとする子供もいます。教室の中には、それぞれ習熟度が異なる子供がおり、一人ひとりがその時間の中で、「何がわかったのか」「何ができるようになったか」「何がわからなかったのか」を明確にすることが大切なのだと感じました。そのためにも、子供同士がどのように関わり合い、お互いの思考や学びを深められるのかを考え、適切にその場を設定することが必要であると気付き、現在の実践に活かしています。
構成/出浦文絵
イラスト/藤井昌子
企画/小学館インクリオ
