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【11月荒れ】どうしても無理なときの緊急避難法

2019/11/9

11月は1年で最も荒れやすいといわれています。その兆候はどんなものでしょうか? 荒れてしまってから立て直す方法はあるのでしょうか? ベテラン教師である多賀先生から、11月荒れの末期状態からの脱し方について解説していただきます。

執筆/大阪府追手門学院小学校講師・多賀一郎

がっくりする先生
写真AC/かっちゃん

最後まで続けるために

最近の学校状況を見ると、どんなに優れた教師でも、どんなにがんばってみても、学級がうまくいかないときがあるようです。僕は毎年のように各地の先生方の相談にのることがありますが、若手からベテランまでが苦しんでいます。

学級が荒れ始めたら、教師の心も荒んでいきます。ひどくなると、精神的に持ちこたえられなくなっていきます。

本当に心が危ないというときには、思い切って休職したほうがいいでしょう。40年以上も勤めるのだから、一回ぐらい途中で休むのはありです。でも、心がそこまで壊れそうになっていないならば(この判断は自分では難しいのですが)、なんとかその年度を乗り切ることを考えましょう。

学級を立て直そうと考えても、一度崩壊の連鎖に突入したら、簡単には再構築できません。そんなときには、「緊急避難」的な発想が必要です。「緊急避難」的な発想というのは、自己や第三者の安全を守るためにやむを得ず生じさせてしまうことならば、ある程度までは他者に不利益があっても許容されることがあるという考え方です。

救急車「ピーポーピーポー」

教育においても、本来はそういう方法を用いることは間違いだと分かっていることであっても、切羽詰まった状態では、やむを得ず使うときがあってもいいと僕は考えています。

例えば、全ての授業において、細かく問いかけと指示を書いたワークシートを使って行うようなやり方です。このようなやり方は異常です。ワークシートばかりの授業なんて、本当の授業だとは言えません。授業とは本来、子供とのコミュニケーションが基本だからです。

しかし、子供たちが全く先生の話を聞いてくれなくなったら、どんな発問を工夫しようとも意味がなくなってしまいます。学級の荒れというのは、子供たちが教師の話を聞かなくなった状態のことなのですから。

僕はそんなとき、若い先生と一緒に各教科の単元ごとに詳細なワークシートを作ります。下のワークシート例は、『大造じいさんとガン』(光村図書 東京書籍)の授業を想定したものです。発問や指示に当たることまで、細かく書いています。本来ならば教師が言葉で伝えることも、全て書きます。

『大造じいさんとガン』のワークシート
ワークシート
クリックすると別ウィンドウで開きます。

子供って、こういうもの(ドリル、プリント)が好きですから、ほとんどの子供たちが取り組むことでしょう。

時間がきたら、答えを板書して写させて終わりにすれば、教師はほとんど話さなくてもいいし、単元の内容はこなしたことになります。

話を聞いてくれない子供たちに向かって大声を張り上げて、「静かにしなさい!」などと言っても授業が進まないということを考えれば、このほうがよほどましなことだとは思いませんか?

もちろん、これは一時的な「緊急避難」ですから、こういう指導しかできなくなったら、教師としてはやっていけませんよ。しかし、こういう形にすると、授業での教師のストレスは間違いなく減ります。自分が崩れていかないための方策だと割り切って考えるのです。

子供たちがワークシートに一生懸命取り組む様子

自根清浄(じこんしょうじょう)

学級が荒れてくると、必ず教室が汚れてきます。掃除は真面目にしないし、荒れた行動が目立つようになって、ロッカーを蹴ったりする子供も出てきます。子供たちが帰った後の教室は、心の疲れた教師にはつらいものがあります。

これをそのまま放置して、翌朝子供たちが入室してくるとしたら、ますます汚したくなるでしょう。ですから、放課後に短い時間でいいから、教室を教師が掃除するのです。掃除をして教室がきれいになっていくと、心が少し落ち着いてきます。

教師が荒れた教室の掃除をしてあげる

僕はこれを「自根清浄」と呼んで、子供たちにも、「根とは、心のことです。清掃をすることで、自分の心がきれいになっていくのです。掃除したら、なんかすっきりした感じがしませんか?」というように話しています。

子供たちにとっても汚して帰った教室が次の日にきれいになっていたら、そのほうが気分がいいでしょう。本来は、クラス全員で教室をきれいにできるのがよいのに決まっています。でも、いったん荒れてしまうと、そこができなくなってしまうのです。

たとえ荒れた学級になっていても、全ての子供たちの心がみんな同じようになっているということは、決してありません。必ず、汚れた教室が嫌だったり、先生の話を聞かない子供たちのことを疎ましく思ったりしている子供たちはいるのです。そういう子供たちの心には、きっと届いていきます。教室の清掃は、心がそれ以上汚れてしまわないための方策なのです。

教材研究の時間をカット

どこかの本やネットで出ている方法をそのまま使って授業をしましょう。ネタ本に書いてある授業ネタを何も考えずにやってみましょう。心も体も疲れています。教材研究をじっくりする余裕などできません。しかも、指導書の通りにしたら、ますます子供は聞いてくれなくなることもあります。

本来はネタ等を何も考えずにそのまま使うなどということは、子供は盛り上がっても力にはならないし、教師の力量形成の上でも大きなマイナスです。でも、「緊急避難」なのですから、やむを得ないでしょう。子供がくいつくようなネタを仕込んできてウケねらいの授業をしましょう。(*1)

〈参考文献〉
*1『健一中村の絶対すべらない授業のネタ78』中村健一著(黎明書房)

絵本の読み聞かせを

絵本の読み聞かせをしましょう。子供が自分の声を聞いてくれる時間を、たとえ10分間であってもつくることができます。「絵本なんて」と思わずに、まずやってみてください。実際に崩壊学級で苦しむ先生たちに絵本の読み聞かせをしてもらって、成果をあげています。優れた絵本なら、高学年の子供たちもくいつきます。鉄板の絵本を紹介します。

・『パイルドライバー』長谷川集平著(復刊ドットコム)
・『あいしているから』マージョリー・ニューマン著(評論社)
・『おかあちゃんがつくったる』長谷川義史著(講談社)
・『てん』ピーター・レイノルズ著(あすなろ書房)
(*2)

〈参考文献〉
*2『一冊の本が学級を変える―クラス全員が成長する「本の教育」の進め方』多賀一郎著(黎明書房)

保護者とどうしていくか

保護者の中にはずけずけと批判してこられる方がいらっしゃいます。

「あなたは、教師不適格者です」
「早く他の先生と交代してください」
「先生のせいで子供が学校へ行きたくないと言っています」

こんな言葉を受けたら、まじめにがんばっている教師は傷つき苦しみます。「自分は教師に向いていないのだろうか」と悩みます。しかし、たとえそれが的を得たことであっても、よくあることだと認識しましょう。かく言う僕は、50歳を過ぎて保護者からこんな言葉を投げつけられたことがあります。

「それでも教育者か」
「子供の気持ちを考えたことあるんですか」

落ち込みますよ。若い先生方と違って、後のないベテランにはよけいにこたえる言葉です。それでも僕は教師を続けてきました。自分だけがそういうことを言われるのではないことを知ってください。僕の知っている優れた教師たちも大なり小なり、そういう経験があります。

学級が荒れる要因は、教師の力不足が80%だと思います。責任はあります。ですが、なってしまったら仕方ありません。それでも教壇に立ち続けるために、保護者のみなさんには、ご協力をお願いしましょう。

管理職に同席してもらって、保護者会で現状を素直に語りましょう。ごまかしようがありません。力不足を謝るのです。その上で、管理職からは、学校としてどういう体制で支えていくのかを話してもらいます。

決して孤軍奮闘してはいけません。仲間を頼り、管理職に頭を下げて乗り切ることを考えるのです。常に発信することも、一つの方法です。

保護者へ「申し訳ありません」と協力をお願いする

例えば、僕の友人は保護者会で毎週金曜日に学級通信を出して、そこにできるだけ子供たちの実態を書くことを宣言しました。なぜ毎週金曜日にしたかというと、子供たちは自分に都合の悪いことを書かれていると、隠そうとしてしまうからです。学級の荒れについても、本当のことを保護者に伝えている子供は少ないのです。しかし、このように伝えておけば、保護者は「金曜日だから出ているはずだ」と気づくことができます。

教師の側から事実をきちんと伝えることをしていきましょう。保護者にはその上で教師を批判するなり、わが子と話していくなりしてもらえばよいのです。

「捨てる神あれば、拾う神あり」と言いますが、全ての保護者からの支持を得ることも難しい代わりに、全ての保護者が敵に回ることも、実はないのです。一人でもフォローしてくだされば、教師は生きていけるものです。

僕の知っている新任の先生は、学校で苦しみもがいているときに子供からもらった手紙に、「先生、しんどそう。うちのお母さんも、先生はとてもがんばっているのにねえ、と言っているよ・・・」と書いてあったことで救われ、最後まで続けることができました。

結局は、自分のできることを誠実にしていくしかないのだと思います。そして、なんとか最後まで続けて指導要録を書き上げたら、最低限の仕事はできたと言えるのです。学校現場で一番困るのは、途中で先生がいなくなって後釜が見つからないことなのですから。

イラスト/奥まほみ

『小五教育技術』2018年11月号より

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