小5 国語科「きいて、きいて、きいてみよう」全時間の板書&指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小5国語科「きいて、きいて、きいてみよう」(光村図書)の全時間の板書例、ワークシート例、活動例、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

小五 国語科 教材名:きいて、きいて、きいてみよう(光村図書・国語 五)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/神奈川県横浜市立東汲沢小学校校長・丹羽正昇
執筆/神奈川県横浜市立川上小学校・佐藤勇介

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、友達の魅力を引き出すという目的で「きき手」「話し手」「記録者」の三人一組でインタビューを行い、話の展開(それぞれの意図)に沿った質問や、応答の仕方を学びます。
自分が紹介した友達について下調べをし、集めた情報を関係付けたり、整理したりして質問の内容を決定していく力や、聞き取った情報を友達の人柄や考え方と関係付けて再構成する力を育てていきます。そのためにも「記録者」は、「きき手」と「話し手」のやりとりの中心となった事柄について正確に記録することが求められます。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

本教材は、「話し手」「きき手」「記録者」の役割に分かれてインタビューをすることで、目的意識をもって様々な「きく」を経験することに適した教材です。ここでは、年度のはじめ、「新しく進級したクラスの友達について詳しく知りたい。」「自分が知った友達の魅力を、他の友達にも伝えたい。」といった思いを生かしながら単元を進められるように、友達の魅力を引き出すためのインタビューをして、それをスリーヒントクイズのような形式にして伝えるという言語活動を設定しました。

今回のインタビューという言語活動では、単純に事実や知識を引き出すだけではなく、話し手(友達)の魅力として、その人の人となりや思いを引き出す力を付けることを目指しています。
中学年までは、予め質問を用意しておき、それについて正確に情報を得られればよかったのに対し、高学年では、その場で質問項目を加えるなど、より対話的なやりとりが求められます。インタビューを通して、友達について知った情報を関係付けたり整理したりして、その人の人柄や考え方などを「魅力」として明確にしていく必要があります。

単元のまとめでは、インタビューや報告を通して、「きくこと」について感じたことを役割の違いを意識して話し合います。インタビューをするときの尋ねる側での「訊く」と、されるときの質問に答えるときの「聞く」の違い。記録を取るときの「聴く」や報告を聞くときの「聞く」の違いなどを、実際の体験を振り返りながら自覚させることが大切になります。
「きくこと」でより理解し合うことができたという経験は、他教科や学校行事、特別活動とも関連付けて「話すこと・聞くこと」の力を伸ばすことにつなげていけるはずです。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉

〇 教師のモデルにより、明確なゴールを意識した上で学習をすすめる
本単元では、友達の魅力を引き出すインタビューをし、クラスのみんなに分かったことをスリーヒントクイズの形式で報告します。単元の導入において、教師が子供たちに関係の深い人物(昨年度の担任の先生や自分自身)について、スリーヒントクイズの形式で紹介をします。子供たちが三つのヒントを聞きながら答えを考えたり、最後の解説を聞いたりして、該当する人物について「知らなかった」「○○なんてすごい」などという感想をもてるようにします。

また、クイズをつくるために行ったインタビューの様子も同時に示し、だれかの魅力を引き出すためのインタビューやその報告としてのクイズづくりについては、意図的・計画的に行うことが必要であることを把握させるようにして、学習の見通しを立てられるようにします。

〇 模擬インタビューにより、現状把握と課題意識につなげる
単元の導入では、一度模擬インタビューをしてみます。
3人1組でグループになり、「きき手」「話し手」「記録者」の役割に分かれてインタビューをします。全員が役割を体験するようにし、それぞれの役割について課題意識をもてるようにします。

模擬インタビューは3~5分という時間を決めて一斉に行います。「まだ時間があるのに、インタビューが早く終わってしまった。」「質問にうまく答えることができなかった。」「記録の方法が分からず、間に合わなかった。」など、それぞれの立場で見えてきた難しさを共有し、意図をもったインタビューを行うことへの課題意識をもって学習をスタートすることで、学習への意欲を喚起し、主体的な学びにつながります。

〈対話的な学び〉

〇 イメージマップを使い、友達に聞きたいことと、予想される答えを明確にしておく。
インタビューでは、「きき手」が「話し手」の話す内容をその場で理解し、反応を見ながら質問を重ねていくことが重要になります。イメージマップを活用し、予め話し手の魅力を引き出すための質問例や予想される答えを具体的に想定しておくことが、状況に応じた対話をスムーズに行うことにつながります。
イメージマップは、話し手の人柄、魅力を引き出すための話題を決定する際と、絞った話題に応じて具体的な質問を考える際の2回活用することが考えられます。

下の図のように手書きしたり、タブレット端末に思考ツールを使いデータとして記録しておく機能があれば、そちらを利用したりするのも効果的です。

イメージマップ(バスケットのことを詳しく知りたい)

その後、イメージマップで具体的に考えた質問を付箋に書き、質問する順番を考えます。予想される答えも考えておき、相手の話を受け止める言葉や話を広げるための言葉も用意し、さらに話し手である友達の魅力を引き出すための質問を準備できるようにしておきます。( 3時目のワークシート例 参照

〈深い学び〉 単元の学びを振り返り、生きて働く日常場面を想起する

子供たちの深い学びが実現する姿の一つとして、単元においてその後の日常生活につながる知識や技能を習得したり、それを自覚して活用しようとしたりする姿があると考えます。そのためにも、授業では知識・技能の適用場面を意図的に設定することになります。

今回は、インタビュー場面を「友達のことをもっと知りたい」「紹介したい」という子供の前向きな思いのもと設定しています。インタビューという言語活動を通して、どんな知識や技能を得られたか、子供が自覚できることが大切です。

子供たちが、単元の導入時に行った模擬インタビューを動画として記録しておき、単元の学びを具体的に振り返るために使います。単元の中でインタビューのポイントはそれぞれの立場で押さえていますが、自分たちの実際のインタビューの様子を改めて見直す中で、自分の意図した質問が、相手のどのような答え(言葉)を引き出したのか、質問の順番が、導き出された結果(人物の魅力)を表す言葉に反映しているのかなど、最初との変化を客観的に捉えることで、単元における自分たちの学びを自覚させるようにします。

また、社会科見学や総合的な学習の時間など、今回獲得した知識や技能が生かされる場面を想定し、全体で共有することも大切です。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

(1)言語モデル「スリーヒントクイズ」の提示

今回は、タブレット(例えばロイロノート)の機能を使い、児童にスリーヒントクイズを提示します。タブレット端末のアプリ内のテキスト機能を使い、一つのテキストに一つのヒント(情報)を入力し、それを三枚つなぎます。
ヒントとなるテキストとは別に、最後に解答スライドも用意します。解答用のスライドには、答えとなる友達の写真を貼り付けたり、その子の魅力が伝わるようなものを撮影したりします。

また、そのテキストには、録音機能を使い、インタビュー全体の報告として、その友達について魅力が感じられるような説明を音声でいれておくことにします。タブレットを各自操作しながら、単元のゴールを具体的にイメージしたり、興味関心を高めたりすることに活用しましょう。

コミュニケーションアプリを活用したスリーヒントクイズのイメージ

タブレット端末内のコミュニケーションアプリや、プレゼンテーションソフトを活用し、それぞれのテキストには、インタビューをして感じたその友達の魅力につながるキーワードを記入します。

ここで注意したいのは、ヒント=魅力ではないという点です。ここでの場合、「辛いときもあったが、○年以上続けたという事実」をインタビューによって引き出し、努力を続けられる人柄や人間性がその人の魅力であることは、交流の中で確認していくことになります。

最後のスライドには、その子の魅力を伝える報告を、実際に話すイメージで録音しておきましょう。

単元で作ったものは、アプリ内の提出フォルダや共有フォルダに入れておき、日常の何気ない場面や時間にクイズとして楽しむこともできます。

(2)タブレットの録画機能を使う

教師が作成したインタビューのモデルや、自分たちのインタビューの様子をタブレットの録画機能を活用して、いつでも振り返れるようにします。

単元の導入において、教師がインタビューのポイントを意識したやりとりをモデル動画として提示します。「きき手」「話し手」のやりとりを、それぞれの立場で分析的に視聴することで、インタビューのポイントを共有します。

ポイントはワークシート等に記入して、いつでも文字言語として確認することができますが、それを動画のやりとりと重ねることで、よりイメージがしやすくなります。

モデル動画だけでなく、自分たちのインタビューの様子も撮影し、動画で保存します。録画した動画は、必要に応じて何度でも繰り返し再生して確認することができます。

6. 単元の展開(6時間扱い)

 単元名:目指せヒーローインタビュー 友達の魅力を引き出し、みんなに紹介しよう

【主な学習活動】
・第一次(1時
① クラスの友達のことをより詳しく知るための方法としてのインタビューや、スリーヒントクイズなどの紹介方法について知る。3人グループで模擬インタビューをし、振り返りをする中で、単元の学習の見通しをもつ。〈主体的な学び〉

・第二次(2時3時4時5時
② 友達の魅力(他の友達が知らないであろう事実、人柄、考え方など)を引き出し、紹介するための尋ね方(きき手)・答え方(話し手)・記録の仕方(記録者)について理解する。
③ 3人グループで、だれがだれのインタビューをするのか役割を決める。インタビューする相手のことを想像し、聞いてみたい話題を絞る。絞った話題から、魅力を引き出すような質問やその順番を考えるなど、インタビューの準備をする。〈対話的な学び〉
④ 順番にインタビューをする。記録者はインタビューの内容を簡単に報告する。
⑤ 自分たちのインタビューを振り返り、それぞれの立場で気付いたことを伝え合う。振り返りをする中で、その人の魅力と言えるものを整理し、ヒントとするものを考える。〈タブレット端末の活用

・第三次(6時
⑥ インタビューをするとき、されるとき、記録するとき、報告をきくときの四つの「きく」について考え、ポイントをまとめ、学習を振り返る。〈深い学び〉

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例
「主体的な学び」のために

単元の導入では、子供に関わりが深い人物について(担任自身やこれまで関わってきた先生方など)、スリーヒントクイズを出します。クイズは、子供全員に当てさせることを目的とはしていません。どちらかと言えば、「意外」「知らなかった」「すごい」などという感想を引き出すことを目指します。

身近にいるけど、意外と知らないその人のすごいところや、考え方、人柄などをこの単元では「魅力」として捉え、それらを引き出して紹介し合おうという単元のゴールを設定します。

魅力を引き出すための活動として、今回はインタビューをすることを紹介します。冒頭に提示したスリーヒントクイズを作るために行ったインタビューの様子を動画に撮影しておき、ゴールとそのためのプロセスの一部を知ることで、学習への見通しをもち、主体的に学ぶことにつなげます。

また、その後3人1組を作り、模擬インタビューを行います。話題はこちらで四つほどに絞った状態で提示します。その中から、友達に聞いてみたい話題を決め、インタビューを始めます。

全員が三つの役割それぞれを経験した上で、難しさを感じた部分を共有し、その後の学習計画を立てていきます。このときのインタビューの様子もタブレットで録画しておくと、後々自分たちの学びの振り返りに使用することができます。

クラスの人数によっては、ちょうど3人組が作れないことも考えられますので、そのときは「撮影者」という役割をつくってもよいかもしれません。

【1時間目のワークシート例 】

イラスト/大橋明子

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