小3算数「式と計算(□を使って場面を式に表そう)」指導アイデア《□を用いて式を立てる》

執筆/神奈川県横浜市立庄戸小学校教諭・渡邊督之
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一、島根県立大学教授・齊藤一弥

目次
単元の展開
第1時(本時)式に表すすべての数が分かっている文章から未知数を設定し、□を用いて式を立てる。
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第2時 さまざまな場面を、□を用いた場合や用いない場合の減法や乗法の式に表す。
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第3時 前時に表した式を基に問題をつくり、□を用いると的確に具体的な場面を表現できることに気付く。
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第4時 まとめ
本時のねらい
□を用いて式を立て、その根拠を図を使って説明することができるとともに、問題場面通りに数量の関係を立式できるよさに気付くことができる。
評価規準
□を用いて式を立て、図を使って説明することができる。問題場面通りに数量の関係を立式できるよさに気付いている。
本時の展開
あめを18こもっています。20こもらいました。あめは全部で38こになりました。
さぁ、今日はみんなでこの問題を考えましょう。
え? 何を考えるのか分かりません。
いつもの問題と同じですよね。
いつもは分からないところがあるけど、今日はありません。
答えが分かっています。
どんな問題だったらよいのですか。
「全部で何個になりますか」だったらいいと思います。
「38個」が分からなかったら、考えられます。
では、「38」を隠しますね。そう言えば、二年生のときは分からないところをどう表していましたか。
□にしていました。
□にすると、「あめを18こ持っています。20こもらいました。あめは全部で□こになりました」になりますね。式はどうなりますか。
18+20です。
□もあるから、18+20=□でもいいよ。
どうしてたし算になるのか、説明できますか。
はじめに持っていた数と、もらった数が分かっているからです。
図にすると、分かります。
図にするといいんですか。では、先生が書いていきますね。はじめに持っていたのは18個だから……。
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇……
先生! 全部書かなくても、線にしようって前に話していました!

こうすると、「部分」と「部分」が分かってて、「全部」が分かってないから、たし算だって分かります。
この問題で□にできるのは、全部の「38」だけですか。
そうです!
え、そうかな。
はじめの「18」とか、もらった「20」もできるよ。
では、もらった「20」を□にしてみますね。あめを18こもっています。□こもらいました。あめは全部で38こになりました。これも式にできますか。
できます。
さっきのとほとんど変わらないね。
では、もらった数を分からない□にしたこの問題を、式に表してみましょう。なぜそうなるのか、図もかいて説明してくださいね。
□を用いて式を立て、その根拠を図を使って説明することができる。
見通し
「全部」が□のときのやり方で、式が立てられそう。(方法の見通し)
「全部」が□のときの図と同じようにかけば、説明ができそう。(方法の見通し)
「全部」が□のときと同じように、たし算の式で、□の場所が変わりそうね。(結果の見通し)
自力解決の様子
A つまずいている子
「全部」が□のときの式や図を活用して、18+□=38の式を立てたり、図をかいたりすることができていない。
B 素朴に解いている子
18+□=38という式を立てたり、もらった数が□になる図をかいたりしている。
C ねらい通り解いている子
「全部」が□のときの式や図と関連付けながら、18+□=38や38-18=□という式を立てたり、もらった数が□になる図をかいたりしている。
学び合いの計画
本単元では、式には事柄を表現する役割があることを実感できるようにします。それを実感するために、「部分」と「全部」という加減法に必要なすべての情報が分かっている問題を提示し、まずは答えを求めるための立式ではなく、事柄を表現するための立式につながるようにします。
そこから、「分からない」ところを□とすることで、□を用いて立式する必要性を、子供たちのやり取り(学び合い)から引き出すようにします。
また、本時の導入時のやり取りを通してみんなで考えた、「全部」が□のときの式や図を活用して、自力解決の困難な子もできる限り考えをかくことができるようにします。
そして、それぞれの考えをみんなで共有し、その後の自力解決につなげるようにしていきます。
ノート例
B 素朴に解いている子
C ねらい通りに解いている子
全体発表とそれぞれの考えの関連付け


みんな、自分の考えがよく書けていたけど、どうしてですか。
「全部」が分かってないときと、□の場所が違うだけだからです。
18+20=38の20を□にするとできたからです。
たし算の問題で、順番通りに書いていけばいいからです。
「順番通り」をもっとくわしく説明してくれますか。
「あめを18個持っています」が足される数になって、「20個もらいました」が足す数、「あめは全部で38個になりました」が答えのたし算になっています。
ほんとだ!
前に言っていた、はじめの18個が□になっても、問題の順番どおりになりますか。
なります。
18が□になるだけです。
では、はじめが□のときの式を書いてください。図での説明も忘れないでくださいね。


問題の順番通りになっていますか。
なっています。
□を使ったら、問題の順番通りに式にできるんだね。
□を使うと、問題の順番通りに式に表せるんですね。ところで、38-20=□と書いて説明してくれて、式が二つできたんだけれどよいですか。
いいです。
今まで□を使わなかったときは、38-20とひき算にして答えを求めていました。
□を使って問題の順番通りにたし算でも表せるし、今まで通りひき算でも表せるんですね。
感想例
- □を使って式や図はかけたけど、ひき算までは考えなかった。〇〇さんの考えから分かってよかった。
- □を使うと、問題の順番通りに式に表せることが分かったから、これからは問題を解くとき、二つの式を考えていきたい。
- これまで使っていた式と、□を使った式の二つあることが分かりました。式は二つとも図にしたらすぐに分かるなと思いました。
1人1台端末活用ポイント
本時では、式には事柄を表現できるよさがあることを実感できるように、加減法に必要なすべての情報が分かっている問題を提示し、答えを求めるための立式ではなく、事柄を表現するための立式につながるようにしました。
このことは、その後の学習に活用できる大切な数学的な見方・考え方です。例えば、「逆思考」の問題を考える際の、解決の手立ての一つとすることができます。
さらに、言葉で表現されたものをそのまま式に書くということが、中学校で方程式を立てて考えるときに役立ちます。
本単元で大切にしたいことは、それだけではありません。場面から式を立てるとき、図に表して根拠を明確にすることも重要です。
また、本時では、自力解決の難しい子への支援のために、解決のための手立てを、導入時の子供たちとのやり取りから見えるようにしました。さらに、1回目の自力解決した全員の考えを、1人1台端末で共有することで、2回目の自力解決の際のさらなる手立てとしました。
1単位時間を通して、少しでも多くの子供の自力解決できる能力を成長させ、主体的に学ぼうとする姿勢を育てていきましょう。
イラスト/横井智美
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