これから先生になるあなたへ⑦子供たちに話をするときの5つのポイント|樋口綾香のすてきやん通信

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板書や指導のコツを伝授!樋口綾香の「すてきやん通信」

大阪府公立小学校教諭

樋口綾香

Instagramでは2万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生による人気連載! シリーズ『これから先生になるあなたへ』第7回では、樋口先生が子供たちに話をするときに心がけていることについて教えてくださいました。

執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香

これから先生になるあなたへ⑦~子 供たちに話をするときに心がけたい5つのこと~
写真AC

話し方が相手に与える影響

みなさんは、自分が話しているところを観察したことはありますか。

私は、教師になるまで、自分が話しているのをじっくりと聞いたり、見たりしたことはありませんでした。

初めて話している自分の姿をじっくりと見たのは、研究授業の動画です。授業全体の流れを見るつもりが、自分の話し方が気になって、なかなか動画を進めることができませんでした。

話し方が聞き手に与える影響は数知れません。聞いていると、話の内容がすっと入ってくる話し方や、話している姿に引きつけられて、じっと見ていたくなる話し方があります。一方で、聞いているだけで不快になってしまったり、話の内容が伝わってこない話し方もあります。

今回は、子供たちに話をするときに心がけている5つのことについてお伝えします。

①立ち位置と姿勢

学級全体に話すときには、子供たちの後ろから指示を出したり、座ったまま話したりはしません。話し手の表情や体が全員から見えるように、見やすい位置に立って話します。

話しているとき、自分の姿が子供たちからどう映っているかを想像してみてください。体を全く動かさずに話すと、正対している子供だけに話しているように感じられます。一人ひとりに話していることが伝わるように、体や顔の向きは適度に変えて、全員と正対するように姿勢を意識します。

また、話しているときの癖がないかも意識しましょう。顔を触る、髪を触る、腕を組む、足を交差する、片足に体重をかける、下を向くなど、話しているときに癖が出てしまう人は少なくありません。腕を組む姿勢は子供に威圧感を与えたり、下ばかり向いていると子供の異変に気付かなかったりと、話すときの癖がよくないことを引き起こす可能性もあります。自分が話す姿を客観的に捉えることで、聞き手にとって親しみやすく、話が聞きやすい姿勢を意識することができるでしょう。

②目線

マスクをしながら話すのが当たり前になっている今は、目の動きは大変重要です。

教師が立って話すと、教室の後ろに座っている子供たちからは見えやすく、前にいる子供たちからは見えにくい傾向があります。また、授業を参観していると、教師の立ち位置や、姿勢の癖から、全体を満遍なく見ることは難しいということも感じています。

そこで、私は、子供たちに話すとき、四隅の子供と目を合わせることを意識しています。四隅へ目線を行ったり来たりさせると、全体の子供の様子を把握しやすいだけでなく、子供たちも、「自分に話をされている」ということを感じて、話に集中してくれます。

③声の高低

研究授業の動画を見たとき、いちばん驚いたことが、「自分の声の高さ」でした。私は、声が大きくはなく、通りにくい声であると感じています。しかし、動画から聞こえた自分の声は、「思ったより高いな」というのが第一印象でした。必要以上に大きい声や高い声は、子供たちにとって不快な音になる可能性があります。

私は、

  • 挨拶や指示は、はっきりと聞こえる高めの声
  • 注意や普段話すときの声は、低めで落ち着きのある声

で話すように意識しています。

女性の声は教室内では子供の声と音域が似ているため、かき消されることが多いです。注意を促したいときや、活動を止めるときなどは、あえて低めの声で指示を出すとよいでしょう。

④間

タブレットのルールを伝えるときを例として、考えてみましょう。

先生は、次のように話します。

タブレットを使うときのルールは3つあります。1つ目、大切に使うこと。2つ目、学習のために使うこと。3つ目、個人情報や著作権などに配慮し、安全に使うこと。みなさん、正しく使いましょう。

この説明をするとき、間をとるべきところは、句読点の箇所になります。発達段階に応じて、間をとる箇所を増やしたり減らしたりします。文章にすれば、句読点を意識することは簡単ですが、先生が話すことすべてに台本があるわけではないので、頭の中で文章を思い浮かべ、適切な箇所に句読点を入れて話さなければなりません。

ポイントは、

  • 一文を短く区切って間をとること
  • 文節に区切って間をとること
  • 大事なことを伝える前に間をとること

です。一瞬の間で、子供たちの視線を集め、集中力を高めましょう。

⑤司会者ではなくMC

先ほど、先生の話に台本があるわけではないと書きました。司会者は、台本通り話します。司会者の話し方では、先生の一方向的な話になってしまいます。

教室での話は、先生から子供という流れだけでなく、子供から先生、子供から子供というように、四方八方に広がります。この流れを話の中に組み込み、リアルタイムな反応を取り入れて話すMCの話し方が理想的です。

先ほどの例で考えると、3つ目までルールを伝えたあと、

〇〇さん、真剣に聞いていたね。1つ目のルール、何だったでしょう?

と声をかけてみたり、

あっ、忘れた? 覚えている人いる?

と全体に聞いて、もう一度みんなで復唱したりします。

話を聞いている子の反応や、表情から話題を広げると、子供たちは集中しながらもリラックスした雰囲気で話を聞くことができるでしょう。


子供に話すときに心がけたい5つのこと

  1. 立ち位置と姿勢
  2. 目線
  3. 声の高低
  4. 司会者ではなくMC

今回は、私が子供たちに話すときに心がけている5つのことについてお伝えしました。ぜひ、参考にしてみてくださいね。

これから先生になるあなたへ①~自己紹介のポイント~
これから先生になるあなたへ②~情報を得る手段~
これから先生になるあなたへ③~子供と出会う日~
これから先生になるあなたへ④~同僚とのつながり~
これから先生になるあなたへ⑤~授業が変われば、子供は変わる~
これから先生になるあなたへ⑥~心がけたい5つのこと~

樋口綾香教諭

樋口 綾香

ひぐち・あやか。Instagramでは、ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師 勝負の国語授業づくり』(明治図書出版)ほか。編著・共著多数。

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イラスト/横井智美

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