国語の構造的板書① ~子どもの気づきを引き出す~

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板書や指導のコツを伝授!樋口綾香の「すてきやん通信」【毎週水曜20時更新】
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大阪府公立小学校教諭

樋口綾香

連載|ayaya先生のすてきやん通信

Instagramでは1万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生の好評連載! 今回は、「ちいちゃんとかげおくり」と「白いぼうし」を例に、国語科における「構造的板書」について解説していただきました。

執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香

国語の「構造的板書」
写真AC

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児童と教材をつなぐ「板書」

今回は、教材の特性を生かした板書の構造化についてお話しします。

板書そのものは、国語教室における重要な機能と役割をもつことから、これまでにも多くの研究が行われてきました。その研究の過程で、国語教育における学習・指導のあり方と板書は密接に関わり合っていることも明らかになり、板書の内容とその質は、学習・指導のありようや児童の姿を反映するものとして見られるようになりました。

板書は、ただの板書きではなく、授業者と児童をつなぐ場であるとともに、児童と教材をつなぐ場でもあります。そのつながりが、より豊かに、より深く思考を巡らす場所になることをめざして板書を研究していると、一冊の本に出会いました。

それは、「国語科板書事項の精選と構造化 双書板書研究1」(井上弘監修/明治図書)という本です。この本は1971年に出版され、学校という場所に黒板が導入されてから、どのように板書が発展してきたかという歴史だけでなく、板書の構造化についても詳しく書かれていました。

一番心に残ったのは、「授業者は、指導事項だけでなく教材そのものも構造化して捉え、それを板書に生かす」という方法です。そうすることで、板書は、学習指導上の一つの手段であり、技術となります。では、児童の学習において効果的な板書をつくるためには、どのような視点で教材を捉え、どのようなことに配慮する必要があるのでしょうか。

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板書を構造化するポイント「比較」

物語文でも説明文でも、低学年でも高学年でも、さまざまな場面で重要になる「比較する」という視点。

しかし、比較のみで終わってしまっては、ただの技能となってしまいます。大切なのは、比較という技能を使って、思考力・判断力・表現力を身につけることです。

比較したのちに気づくことを意図して、板書を構造化します。

実践例「ちいちゃんのかげおくり」

光村図書の3年下の教科書に、「ちいちゃんのかげおくり」という教材があります。課題は「1場面のちいちゃんの気持ちを考える」です。

ここで、出来事を追いながら、「このときはどんな気持ち?」と一問一答のように繰り返すのではなく、児童自身が主体的にちいちゃんの気持ちを考え、さらにその変化や、逆に変わらない気持ちに気づかせたいと思いました。

そこで、1場面の出来事を押さえたのち、「始めと終わりのちいちゃんの気持ちを想像しよう」と投げかけ、ベン図を書きました。

右側は1場面の初め、「かげおくりをしているときの気持ち」、左側は1場面の終わり、「戦争が激しくなってかげおくりができなくなってしまったときの気持ち」です。

比較すると、「ちいちゃんにとってかげおくりがとても楽しい家族の遊びになっていたこと」「戦争のせいで空が怖い場所になり、かげおくりができなくて悲しい気持ちであること」を児童が書き出していきました。

最後に、深める発問として、「こんなに空の様子は変わったけれど、変わらない気持ちってある?」と問い、円の重なっている部分を黄色チョークで示しました。児童は、「お父さんを心配していること」「お父さんに生きていてほしいこと」「家族みんなでかげおくりをしたいこと」などを発言しました。

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「ちいちゃんのかげおくり」児童のノート

「比較する」という視点で、ベン図を用いて1場面のちいちゃんの気持ちを構造化することで、相違点や共通点に児童が気づくしかけをつくることができます。

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例:ベン図を活用した「ごんぎつね」の板書
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「ごんぎつね」児童のノート

実践例「白いぼうし」

光村図書4年上に掲載されている「白いぼうし」の第6時間目の板書です。この授業は、あまんきみこさんが書いた『車のいろは空のいろ』に載っている、「白いぼうし」と「山ねこ、おことわり」を比較するという学習内容でした。

二つのお話を比較するために、4観点ずつで分析します。視覚的に分かりやすくなるようXチャートを書き、さらにカラーマグネットを貼ることで、板書を構造化しました。

1時間で、初読の「山ねこ、おことわり」を分析し、さらに「白いぼうし」と比較するというのは、時間が足りず難しいかもしれないという心配がありました。しかし児童は、使い慣れたXチャートに次々と言葉を埋めていきました。

そして、深める発問として「二つのお話の共通点は?」と問うつもりでしたが、分析をしている段階で、自然と色鉛筆を使って二つのお話の共通点を線で結んでいるグループが出てきたため、机間指導中に、「分析した事柄同士をつないでいるグループがあるよ。似ているところはあるかな。」と助言して、広げました。

児童が次々と思考を進めていくことで、もう一つ用意していた、「松井さんは変わっているかな。」という発問もすることができました。

しかし、この発問で深めるには、やはり1時間では足りず、次の時間にもっと考えてみよう、としてこの授業は終わりました。

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「白いぼうし」児童のワークシート

このように、「比較する」という視点による教材の構造化は、児童の思考を構造化することにもつながります。そして、思考力・判断力・表現力が身につくだけでなく、シンキングツールを活用しながら情報を整理したり関係づけたりする力も伸びていきます。

次回も、「比較する」視点を生かした、教材の構造化の例についてお伝えします。

樋口綾香教諭

樋口 綾香

ひぐち・あやか。Instagramでは、ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師 勝負の国語授業づくり』(明治図書出版)ほか。編著・共著多数。

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