「板書」の基本③ ~児童の意見を広げるポイント 前編~

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板書や指導のコツを伝授!樋口綾香の「すてきやん通信」
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大阪府公立小学校教諭

樋口綾香

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Instagramでは1万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生の好評連載! 今回は、「児童の意見を広げたり、深めたりする板書のポイント」についてお伝えします。

執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香

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児童の意見を広げたり、深めたりする板書にするために

今回は、「児童の意見を広げたり、深めたりする板書のポイント」の前編です。

私は毎年公開授業を行い、多くの先生方に授業を参観していただいてきました。

授業後の討議会では、参観した先生方によって、児童の発言をどのようにつなぎ、深めていったかという視点で多くの意見交換が行われます。

それほど、児童の意見は授業の要であり、教師や児童がどのようにそれを受け止め、自分に返し、思考を深めていったかが重要であるということです。個の考えは、他者の多様な考えと混じり合うことで、より熟考されたものに変わっていくのです。

したがって、45分間の中でできるだけ児童の意見をたくさん聞きたいと思うのが教師の願いでしょう。

しかし、実際は、次のような心配事をよく耳にします。

「多くの意見を板書する時間がない」
「全てを書くと、分かりにくい板書になる」
「何を書いて、何を書かないでよいかが分からない」
「児童の考えをどのようにつなげばよいかが分からない」

私も以前はこのような不安を抱えていました。

しかし、少しずつこの不安は解消されていき、今では板書においてほとんど不安を感じていません。

その理由として、文字を書くスピードを上げる、まっすぐにきれいな文字が書けるという技術の他に、児童の指名の仕方、発言内容の書き方、色チョークの使い方、黒板そのものの使い方などを工夫したことが大きいと考えています。

児童の指名の仕方

最も一般的な指名の仕方は、手を挙げている児童を先生が指名し、その児童の意見を板書して、また次の児童を当てるというものです。しかし、この方法だと、先生が指名するまで児童は意見を言うことができません。もし、先生が板書するスピードが遅ければ、児童はそれを待つ時間が生まれます。すぐに意見をつなぎたくても、「ちょっとした間」が生まれることにより、活発な交流になりません。

この「ちょっとした間」は、授業がテンポよく進まない一番の理由です。テンポが上がらないと、児童の学習に対する熱量も上がりません。「指名の仕方」が、授業のテンポを悪くしているのです。

そこで、私が取り入れているのは、児童の相互指名です。

児童同士で指名するこの方法をとると、先生が板書するまで待つという時間が短縮されます。また、児童同士が意見をつなげていくため、「クラスのみんなに伝える」という意識が高くなります。発言のテンポが上がるため、板書のスピードも上げなくてはいけません。すると、発言内容の書き方を工夫する必然性が生まれます。

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発言内容の書き方

授業づくりにおいて、発問を練ることが大切なのはもちろんですが、その発問に対してどのような答えが返ってくるかを、どれほど想定しているでしょうか。その答えをどう書けば、分かりやすく整理したり、視覚化できるかを考えているでしょうか。

これが、児童の意見を素早く書くために、必要な準備であると考えています。この準備を綿密に行うことで、児童の意見の要点が何かを瞬時に判断し、どこにどのように書くと分かりやすいかを見極めます。

発言内容は、全てを書くと分かりにくくなる可能性があります。

たとえば、発問が「このときの、ちいちゃんの気持ちは?」のとき、「ちいちゃんは、さびしい気持ちです。理由は、家族と離れ離れだからです。」という意見が出たとします。

板書には、「・家族と離れ離れでさびしい」と箇条書きで書きます。「ちいちゃんは」は、発問と重複しているので書きません。

このあと、同じ気持ちに対して様々な理由や、同じ理由だけど気持ちが違うという意見が出てくると考えられます。

出てきた理由を箇条書きで書き、気持ちが同じ場合は、色チョークで重なった言葉を囲み、理由から矢印をするようにすると、児童の意見の重なりや深まりが視覚化できます。

「ちいちゃんのかげおくり」板書例(本文の内容に即したものではありません)
*クリックすると別ウィンドウで開きます

色チョークの使い方

色チョークとは、基本の白色チョーク以外のチョークのことを指します。白色チョークだけでも板書はできますが、色チョークを使うと2つの良さがあります。

一つ目は、大事なことが一目で分かることです。

黒板に文字や資料などの情報があふれていると、内容を理解しづらい子もいます。色チョークを使うことで、その都度大切なことを言葉だけでなく視覚的にも確認でき、さらに1時間の学習が終わったときに、重要なところが目に飛び込んでくる板書にできます。

二つ目は、子どもの発言による学習の深まりやみんなで押さえておきたい言葉に価値づけができることです。

「○色チョークは深まった意見だよ」と伝えておくと、子どもたちは学習の深まりを実感し、より主体的に学ぼうとします。(前回の記事を参照)。

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色チョークを効果的に使った板書例
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次回は、「児童の意見を広げたり、深めたりする板書のポイント」の後編(黒板そのものの使い方の工夫)についてお伝えします!

樋口綾香教諭

樋口 綾香

ひぐち・あやか。Instagramでは、ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師 勝負の国語授業づくり』(明治図書出版)ほか。編著・共著多数。

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