絵本を授業で活用しよう|アヤ&メグの新任教師お悩み相談⑨

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板書や指導のコツを伝授!樋口綾香の「すてきやん通信」
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大阪府公立小学校教諭

樋口綾香

新任教師のお悩みに2人の先輩がお答えするシリーズ第9回! 今回は、絵本を教材として授業で活用する方法を紹介します。

教職15年目の通常学級担任・樋口綾香先生と、11年目の支援学級担任・竹澤萌(たけざわめぐみ)先生が、具体的な実践の紹介とともに、担任として意識したいポイントを教えてくれます。

Instagramでは2万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生による人気連載!
このシリーズのテーマは、「子どもの力を引き出す担任の在り方」。初任の先生の悩みや疑問をもとに、先輩教員2人が考え方や手法を提案します。答えるのは、教職15年目の通常学級担任・樋口綾香先生と、11年目の支援学級担任・竹澤萌先生。具体的な問題場面に対して、担任として意識したいポイントを提示し、2人の考えを共有します。
きっと、正解は一つではありません。状況によって、考えや行動は柔軟に変化させなければならないでしょう。目の前の子どもたちの力を最大限生かすための方法を、いっしょに考えていきましょう。

執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香

今回の相談「3学期の学級開き」

[今回の相談]
なんとか、2学期を終えることができました。3学期は、楽しく過ごして、もっと子どもたちの力を伸ばしたいと考えています。私も子どもたちも気持ちよく3学期をスタートしたいのですが、何かよい方法はありますか。

前回、3学期の学級開きに関する相談に対して、絵本の読み聞かせをおすすめしました。そこで今回は、絵本を教材として授業で活用することで、子どもたちのどんな力を引き出すことができるかを考えてみたいと思います。

絵本から学ぼう|アヤ&メグの新任教師お悩み相談⑧

竹澤先生の実践

教科:道徳 A 個性の伸長

絵本:『おくりもの』

対象:中学年

作:豊福まきこ
(BL出版)

授業の流れ

①タブレットでアンケートをとる

「あなたの長所はどんなところですか?」と問うことで、子どもたちが自分自身をどう捉えているかを確認します。中学年頃になると、周りと自分を比べるようになり、自分の短所に目を向ける児童も増えてくることでしょう。もし「長所がない」という捉えをしても、現段階の正直な気持ちです。子どもたち一人ひとりの想いを大切に受け止めて授業をスタートしましょう。

アンケート結果を共有する場合は丁寧に扱うようにします。

②絵本の中表紙に描かれた挿絵を見て、ハリネズミの気持ちを想像する

子どもたちは、ポジティブな気持ちとネガティブな気持ちをどちらも出してきます。自由に想像させ、絵本の世界に入り込めるようにします。教師は、この導入時に出た児童の発言を展開時の発問とつなげる意識をもっておきます。

③絵本の前半(「ハリネズミくんはじぶんのハリがきらいでした」まで)を読み聞かせする。

絵本はスクリーンに映すなどし、座席後方の児童まで見えるように配慮します。ハリネズミのネガティブな気持ちを丁寧に捉えるために、絵本の範読を途中で止めます。

④考えを深めていく(発問1・発問2)

発問1「キツネさんにハリがささってしまった時、ハリネズミくんはどんな気持ちだったでしょう」

出された意見に対して、問い返しや切り返しの発問を入れ、児童同士の発言や考え方をつないだり、広げたりしていきます。

発問2「あなたは、ハリネズミくんの『もっとふわふわだったらいいのに』という気持ちに共感できますか」

座標軸を扱い、自分の考えに合う立場をネームプレートで示して視覚化します。立場を明確にした上で、根拠となる考えを伝え合います。自分と異なる立場にある意見にもよく耳を傾けさせ、自分の考えが最初と変わった場合はネームプレートを貼り変えてもよいことにします。

⑤絵本の後半を読み聞かせする

絵本の後半を読み聞かせます。

⑥考えを深めていく(発問3)

発問3「マフラーづくりをしているときのハリネズミくんは、どんなことを考えているでしょう」

編み物をしている挿絵と導入時の挿絵を比較できるように提示し、自分のハリの存在がマイナスからプラスに変わった心情変化を捉えやすくします。ここまでに出てきた児童の意見やまとめてきたキーワードをつなげ、思考を深めていきます。

⑦本時の学びをまとめ、自分自身をみつめる(振り返り)

発問4「自分の長所はどんなところですか。長所を伸ばすためにどんなことができますか」

導入と同じことをもう一度問います。絵本を使った授業で考えてきたことを通して、自分のよさに気付いたり、考えが最初より深まったりしているといいですね。

私のクラスでは、本シリーズ4回目の「子ども同士をつなぐには?」で紹介した”スパイ報告書”の取り組みを利用しました。友達が見つけてくれた自分のよさに目を向け、自分の在り方を考える手立てになればと意図しています。

樋口先生の実践

教科:国語

絵本:『十二支のはじまり』

対象:低学年

文:岩崎京子 画:二俣英五郎(教育画劇)

授業の流れ

①これまでに学んだ学習用語を確認する

「場面」「中心人物」「対人物」「あらすじ」「人物がしたこと」「人物の気持ち」「事件」「事件の解決」「会話文」「地の文」などの用語を子どもたちから発表してもらいます。

出てきた言葉の定義や具体的な使い方など、学習したことを振り返る時間を設けることにより、知識を定着させるとともに、発言している子をほめながら、これまでの学習を肯定的に捉えられるようにします。

②学習用語を意識させながら、読み聞かせをする

思ったことや気づいたことはできるだけ自由に発言できる雰囲気があると、参加率が高まり、クラスみんなでお話を楽しむ環境をつくることができます。

③おもしろいと感じたところをペアやグループで交流する

お話のおもしろさは一人ひとりによって違います。「題名のおもしろさ」「登場人物のおもしろさ」「山場のおもしろさ」「結末のおもしろさ」など、どんなところをおもしろいと思ったのかを交流すると、友達との感じ方の違いを知りながら、お話の楽しみ方を豊かにすることができます。

④感想や気づいたことを全体で交流する

発表の際、聞き手には、おもしろいと感じたところの共通点や相違点を意識しながら聞くことを促すと、自分と友達との感じ方を比べながら、より主体的に対話を楽しめるようになります。

また、子どもたちの発言を板書に残すことで、意見を通してつながり合いながら学びを深めていく実感をもつことができるでしょう。


竹澤先生の絵本の授業は、作品のメッセージを生かして、自分自身の長所を見つめていくことを主な活動としています。一方で、私の授業は、学級全体で何をどのように学んできたかということを子どもたちに実感させることが主な目的になっており、どの絵本でも行うことのできる授業です。

絵本には、お話の世界に子どもたちを自然と浸らせる不思議な力があります。その力を生かせば、より子どもたちが伸び伸びと学ぶ場をつくることができるのではないでしょうか。

ぜひ、絵本を使って子どもたちが豊かに学び合う授業を考えてみてください。

樋口綾香教諭

樋口 綾香

ひぐち・あやか。Instagramでは、@ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、1/14発売の『「自ら学ぶ力」を育てる GIGAスクール時代の学びのデザイン』(東洋館出版)、『子どもの気づきを引き出す! 国語授業の構造的板書』(学陽書房)ほか。編著・共著多数。

竹澤萌
たけざわ・めぐみ。11年目、支援学級担任(2022年現在)。栃木県で学年学級担任を10年間経験した後、結婚を機に大阪に転居。現在は樋口綾香先生と同じ学校で勤務中。Instagramでは、@mohepipipiとして、様々な実践を発信している。 

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