これから先生になるあなたへ③子供と出会う日|樋口綾香のすてきやん通信

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板書や指導のコツを伝授!樋口綾香の「すてきやん通信」

大阪府公立小学校教諭

樋口綾香

Instagramでは2万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生による人気連載! 新シリーズ『これから先生になるあなたへ』第3回は、「子供と出会う日」についてのお話しです。

執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香

これから先生になるあなたへ③~子供と出会う日~
イラストAC

これから先生になるあなたへ①~自己紹介のポイント~
これから先生になるあなたへ②~情報を得る手段~

出会い

附属小学校に勤めていた6年間に、30人ほどの教育実習生を担当してきました。

担当した実習生は、教師になるつもりで来ている人もいれば、免許を取ることが目的の人、まだ進路に迷っている人もいました。でも、どの学生も意欲的で、一生懸命に子供たちに接してくれました。

今回は、そんな実習生の姿を思い出しながら、「子供と出会う日」について書きたいと思います。

教育実習生が子供たちと初めて出会う日、大抵は緊張して、表情も硬くなりがちです。そんな実習生に、よく私が言ったのは、

「積極的に子供に話しかけてね」
「クラスの全体をよく見てね」

ということです。

積極的に話しかける

実習生が緊張しているように、子供たちも初めて出会う先生を前に、緊張しています。

子供たちの緊張をほぐすのは、先生の役目です。

  • 明るく挨拶
  • にこやかに自己紹介

これは、先生としてのマナーでしょう。

それに加えて、「積極的に話しかける」ことは、「あなたのことが知りたい」「私のことも知ってね」というメッセージを伝えることにつながります。

子供たちの信頼を得るためには、一人ひとりの子に関心をもつこと、自分から心を開くことが肝要です。会話をする中で、少しずつ関係をつくっていくことができます。

クラス全体をよく見る

学級の中には、いろいろなタイプの子供がいます。

初日は、積極的に話をしに来る子供と接する時間が多くなってしまいがちなので、注意が必要です。自分の周りだけを見るのではなく、常に、教室全体を見るように心がけてください。

きっと、先生に話したくてもなかなか話せない子、表情が暗い子、落ち着かない子がいるはずです。全員と、ひとことは話ができるように、声をかけてみましょう。

また、新しく赴任した教員には分からない、子供同士の関係性や前年度から受け継がれていることもあります。

視野を広くもつことで、些細な子供の言動に気づくことができ、この積み重ねが安定した学級づくりへとつながります。

緊張と緩和

先ほど、緊張をほぐすのは先生の役目だと書きました。しかし、雰囲気が緩みきってしまうのは、よくありません。「緊張」と「緩和」のバランスが大事です。

例えば、始業式には、アイスブレイクとしてちょっとしたゲームをすることがよくあります。みんなで盛り上がったあと、学級が騒がしくなったとき、みなさんなら、どうしますか?

  • 静かになるまで黙って待つ。
  • 軽く注意する。
  • 叱る。
  • 怒鳴る。
  • 特に何もしない。

いちばん避けたいのは、「怒鳴る」ということですが、「何もしない」というのも問題です。「怒鳴られたから騒ぐのをやめる」、「騒いでも何も言われない」と子供たちが判断し、それがその後ずっと続くようになるのは、どちらも危険だからです。怒られないと問題行動をやめられない子供や、ルールや決まりを意識できない子供を育ててしまう可能性があります。

指導するのか、様子を見るのかといった判断を迫られる機会は、子供と出会ったその日から度々生じます。実習生として授業をしたときは、この判断を担当の先生がしてくれました。きっと、実習生が安心して授業に集中できるように、いつもより注意深く子供たちを見て、サポートしてくれていたと思います。

ちなみに、初日のアイスブレイクの後に教室が騒がしくなった場合、私は「軽く注意する」を選択します。

出会った初日は、軽く注意するようなことも、思いのほか子供の心に残ります。でも、初日だからといって、何でも許されるわけではありません。私は、「一人ひとりが居心地のよい教室にしたい」という目標をもっています。学級が秩序なく騒がしい状態は、居心地がよいとは言えません。

注意するとき、私は低めの声で「おーい」と言います。女性の場合、大きな声で注意を引こうとすると、声が高くなって聞き取りにくくなってしまいます。あえて低い声で呼びかけるほうが、よく声が届くのです。

子供たちが静かになったら、「なんで、声をかけたと思う?」と聞いてみます。きっと、騒がしくなっていると気づいている子がいるはずです。そんな子がいれば、気づいていたことを褒めます。そして、「大きな声で話すと自分の声しか聞こえなくなるよ。声の大きさを考えて、周りの声を聞いてね」と伝えます。居心地のよい教室にするには、自分たちを客観的に見る力もつけてほしいと願っているのです。

このように、「どのように育ってほしいか、どのような学級にしたいか」を考え、緊張感を与えたり、ときには冗談を言って、場を和ませたりしています。

みなさんも、目指す学級の姿、子供の姿をじっくりと考えてみてくださいね。

樋口綾香教諭

樋口 綾香

ひぐち・あやか。Instagramでは、ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師 勝負の国語授業づくり』(明治図書出版)ほか。編著・共著多数。

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